シャープが開発した、解ける温度を-24〜28℃まで自由に変えられる「不思議な氷」。同社公式Twitterアカウントが「すごいんだけど、何に使うかがネック」とツイートしています。いったいどうして悩んでいるんです?
「不思議な氷」と呼ばれているのは、シャープの社内ベンチャー「TEKION LAB」が手掛ける「蓄冷材料」。ベースの原料に水を使用しており、解ける際に周囲の熱を吸収するという点は、普通の氷と同様です。しかし、材料の配合を変えることで、解ける温度を-24〜28℃まで調整することができます。
この特性により、同製品は単にものを冷やすのではなく、特定の温度を維持するために利用することが可能。2014年には、停電が多い地域のあるインドネシア向け冷蔵庫に実用化されました。電気の供給が止まり庫内の温度が上昇すると、10℃で融解して電力が回復するまで温度をキープしてくれる仕組みです。
シャープ公式Twitterアカウントは先日、この「不思議な氷」について「すごいんだけど、何に使うかがネック」とツイートしました。すると、用途を提案するリプライが殺到。熱中症予防やスマホのクーリング、水槽の温度管理、さらにはバイオ実験、医薬品の保存など、さまざまな方面で役立ちそうだという声が現れました。広く実用化されたら、めっちゃ便利そうじゃないですかこれ!
こんなに使えそうなのに、どうしてシャープは用途に困っているかのような投稿をしたのでしょうか。同社に話を伺ったところ、「不思議な氷」のメリットは、これまで冷やすか、温めるかしかできなかった状況に、「適温にする」という選択肢が作れる点。2017年3月には、同製品を保冷バックに利用した「-2℃で味わえる日本酒」がクラウドファンディングに登場し、目標金額の約18倍もの出資を獲得しています(関連記事)。
現在は、飲食業界を中心に問い合わせが多数寄せられており、「不思議な氷」には「潜在ニーズと可能性がたくさんあると思います」とのこと。せっかく開発したのに用途が思いつかないのではなく、実用化の道が多すぎるといううれしい悩みを抱えていたようです。
今後は、さまざまな業界での市場拡大を目指し、より身近な製品にしていきたいとのこと。実験室から晩酌まで、幅広く活躍しそうな「蓄冷材料」。今はまだ「不思議な氷」という呼び名ですが、そのうち、あちらこちらで使われ、われわれの生活に浸透した「よくある氷」になるかもしれません。
(マッハ・キショ松)
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