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現在の自動車安全装置は完全自動運転じゃない 国民生活センターが注意喚起

所有者の2割弱が理解していない。

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 最近の自動車には、衝突しそうなら勝手に止まる、車線からはみでないように勝手にハンドル操作してくれる、車間距離を勝手に調整してくれるなどの、新しい安全機能がついているイメージはないでしょうか。国民生活センターは、先進安全自動車のこのような機能を過信していると、事故につながる危険性があると注意を呼びかけています。

報道発表資料イメージ 先進安全自動車に関する報道発表資料(国民生活センターより)

所有者の2割が「想定外の出来事」を経験

 国民生活センターが行ったアンケート調査によれば、先進安全自動車を所有している人の24.5%が想定外の出来事を経験していました。

 特に多かったのは「急に加速した」「急に減速した」など速度制御系のトラブルでした。

経験の有無を示すグラフ 想定外の出来事を経験したことがあるか

内容をあらわすグラフ 想定外の出来事の内容

 また、アンケート回答者2000人のうち122人が想定外の出来事により「他社や構造物等に接触」「車体が傷ついた」など、損害を経験していました。

損害についてのグラフ 想定外の出来事による損害について

衝突被害軽減ブレーキとは

 安全機能の1つである衝突被害軽減ブレーキは、自動車周囲の障害物(先行車や歩行者等)を検知し、衝突のおそれがあれば警告音や警告灯でドライバーに注意を促し、それでもブレーキ操作がなく、システムが衝突は避けられないと判断すれば自動的にブレーキが作動する装置のことです。

実験時の写真 国民生活センターによる実験 障害物の手前で停止している

 そもそも、この機能の目的は「衝突事故を防ぐ」のではなく、「衝突したときの被害を軽減する」ための装置。あらゆる状況での事故を防ぐ装置ではありません。人や自転車の急な飛び出しでは作動しないなど、機能には限界があります。

注意表示の例 衝突被害軽減ブレーキの注意表示例

メーカーは啓発しているが、所有者の2割弱は理解していない

 国内自動車メーカーへのアンケートでは8社全てが、衝突被害軽減ブレーキへの注意事項として

  • 天候によっては作動しないことがある
  • 路面、道路状況によっては作動しないことがある
  • 速度によっては作動しないことがある
  • あらゆる状況での衝突を回避するものではない
  • ドライバーの操作状態によっては作動しないことがある
  • 障害物の形状、材質によっては作動しないことがある
  • 機能には限界があり、過信せず安全運転を行う必要がある

 を挙げました。このような注意事項は、販売カタログ・取扱説明書・広告に記載するなど周知のための努力はしているそうです。

 しかし一方で、所有者アンケートによれば、所有者のうち2割弱が「現在実用化されている先進安全装置は、完全な自動運転ではなく、ドライバーは機能を過信せずに安全運転をする必要があることを理解しているか?」という設問に「理解していない」と回答しています。

理解度を示すグラフ 「聞いたことはあるが理解していない」「理解していない」合計で17%

 機能の呼び方が、各社バラバラなため分かりにくいことも国民生活センターは指摘しています。

会社名 衝突被害軽減ブレーキの各社の名称
スズキ 衝突被害軽減システム
SUBARU プリクラッシュブレーキ(前進時)/後退時自動ブレーキシステム
ダイハツ工業 スマ−トアシストI、II、III
トヨタ自動車 Toyota Safety Sense P(プリクラッシュセーフティシステム)
日産自動車 インテリジェントエマージェンシーブレーキ
本田技研工業 CMBS(衝突被害軽減ブレーキ)、CTBA(低速域衝突被害軽減ブレーキ)
マツダ アドバンストSCBS(アドバンストスマートシティブレーキサポート)
三菱自動車工業 衝突被害軽減ブレーキシステム

 全国の消費生活センターにも「衝突被害軽減ブレーキ付き新車を購入したが、追突事故を起こした。機能が作動しないことがあると知らなかった(30代 男性)」という相談が寄せられています。

 国民生活センターは「衝突被害軽減ブレーキはあらゆる状況での衝突を防ぐ装置ではありません。先進安全自動車を運転する際は、機能を過信せず、安全運転を心掛けましょう」と呼びかけています。

高橋ホイコ

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