「スーパーマリオワールド」にて新たな最速クリア記録が樹立された。タイムを叩き出したのはSethBling氏で、記録は1分を切る50秒53(Speedrun.com)。ルールは0 exit(exit=ゴールを一度もしていないことを意味する。クリア率を問わないany%形式に近い)。これまでの最速記録は1年前の2017年2月にfurious氏が残した1分13秒だった。1月末にSethBling氏が発見したとある発明により、20秒という大幅な時間短縮に成功。SethBling氏はその後最速記録をふたたび更新し、Dotsarecool氏がその後を追うという展開となった。この「とある発明」には「クレジットワープ」が大きく関係している。
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「クレジットワープ」とは、スプライトスロットの仕組みを利用して、コマンドを入力することでメモリの値を操作し特定のコードを呼び出すというもの。ヨッシーと赤甲羅、コインとそのほかのオブジェクトを利用して強引にエンディングを“引っ張り出す”というやり方だ。ヨッシーが実を食べ、実が再出現する時にアイテムがスワップすることを利用した手法。この方法を使った「ヨースター島のコース2からそのままエンディングに向かう」というルートが0 exitのクリアの定番になっていた。
プレイの手順としてはコース開始後に、上段の軍団の真ん中にいるノコノコから赤甲羅を奪取。ブロックを叩きヨッシーを出現させ、1UPキノコを取り、一度画面を左側へスクロール。赤甲羅を上空に打ち上げ、ヨッシーに乗り込む。右側にある赤甲羅を食べて炎を吐き、次に緑色の甲羅を口に含む。その緑甲羅を炎に当て、コインになったところをヨッシーでそのコインを食べつつスピンジャンプを繰り出しコインを取得するとエンディングが表示されクリア完了だ。
これらの一連の基本プロセスは一年前から変わらない。ただ、一年前はエンディングを引っ張り出すプロセスに多くの時間を要していた(参考動画)。左側のノコノコの大群の数を減らしたり、スクロールをするなど、細かい調整を重ねてゴール。それなりの時間を使った準備が必要だった。SethBling氏は、以前よりROM改造を使いこのクレジットワープによる時間の短縮を研究し続けてきた(関連記事)。そして、意外なところにその答えはあったようだ。
氏が使ったのはコントローラーだった。SNES(スーパーファミコン)のコントローラー接続端子は2つのみだが、周辺機器を使いコントローラーの4つ差しを敢行。これまでのクレジットワープにも特定の入力が必要であったが、これを4つに増やしたわけだ。1Pコントローラーはゲームプレイに使い、2Pコントローラーは特定のタイミングでL+Y+上を入力、3Pと4Pコントローラーも同様に適切なタイミングで入力をおこなうことでメモリの値が操作される。準備を要さずにスムーズにエンディングに突入できるようになった。最終的な目的はメモリの値の操作であるが、入力デバイスを増やすというハードウェア部分での工夫により新たなルートが生み出されたわけだ。SethBling氏は、まだまだ時間の短縮の余地はあるとも語っている。
「スーパーマリオワールド」が発売されたのは1990年2月。28年もの時を経ながら、コントローラー4本挿しというまさかの手法で最速クリアタイムは更新された。ちなみに昨年10月には「スーパーマリオブラザーズ」の最速クリアもまた記録されている(関連記事)。「マリオ」シリーズの人気と、SethBling氏を代表とした研究者たちの熱意は、時間が経っても色褪せることはないのだろう。
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奥が深すぎる。