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「北九州市は修羅の国」ってうわさ、ぶっちゃけどこまで本当ですか? 市の担当者に直接聞いてみた(1/2 ページ)

「路上に手りゅう弾」「ド派手な衣装で荒れる成人式」など、真偽不明のヒャッハーな情報について取材しました。

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 九州最北端に位置し、ネット上で「修羅の国」の異名を持つ福岡県北九州市。「手りゅう弾が路上に転がっているのが日常」「成人式では、ド派手な衣装で武装する」などヒャッハーなうわさが、まことしやかにささやかれています。

 しかし、これらは本当に正しいのでしょうか。ネット上に広まる「北九州市=修羅の国」説について、同市の広報担当者に取材しました。



北九州市は修羅の国って本当? → 担当者「違います(即答)」

―― 単刀直入に伺いますが、北九州市は「修羅の国」って本当ですか?

 違います(即答)。

 市としてこのネットスラングと向き合ったことはたぶんないと思うので、個人的な感覚に基づく話になりますが。以前は福岡県全体を指す表現だったと思うんですよ。でも、後から「北九州市=修羅の国」と捉えるケースが出てきて、現在は両方が使われています。

 前提としてお話しておきたいんですが、「北九州市」という地名には、少しややこしいところがあると思うんです。というのも、「北九州」という言葉が指す地域は

  • 北部九州(九州北部に位置する福岡県、佐賀県、長崎県などを指す)
  • 北九州地区(北九州市、その周辺を指す)
  • 北九州市

 といくつもあって。ニュース番組を見ると「福岡市で豪雨」を「北九州で豪雨」と言ってたりしますしね。間違いではないんでしょうけど、「北九州“市”」と誤認する人もいるんじゃないの、と。


北九州」は、Wikipediaにも曖昧な表現として記載

 こういう分かりにくさがあるなかで、例えば、福岡県内で何か物騒なことが起こり、ネット上で情報が拡散したとしますよね。

―― 「さすが修羅の国」とコメントする人が出てきますよね、きっと。

 ええ。さらに「やっぱり北九州は違うわ」みたいなことを言う人が現れると、ネット上のお祭り騒ぎの中で、地名の勘違いが起こって「北九州“市”は〜」という話になってしまう可能性があるのではないか、と。

 実際、ネット上の記事を見ると県内にある別の市で発生した事件が、北九州市で起こったかのように書かれていることがあります。ただでさえ、ネット上のうわさのせいで怖がられている節があるのに、よその怖い話を吸収して修羅の国イメージが濃縮されているというか……。

―― インターネットには、修羅の国を強化してしまう力があったのか……。


「修羅の国濃縮」の一例と思われるまとめ記事。タイトルに「北九州」と書かれており、北九州市を連想する人もいるはず。ですが、最初に掲載されている事件は、福岡県南部に位置する久留米市のもの

「路上に手りゅう弾が転がっている」って本当? → 担当者「見たことないです」

―― そもそも「修羅の国」というネットスラングは、いつからあるのでしょうか。

 正確なことは把握していませんが、私が「修羅の国」という表現をよく目にするようになったのは2000年ごろ。ちょうどインターネットが普及していった時期なのですが、このころに福岡県では物騒な事件が重なってしまいました。それで「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」あたりを起点に、修羅の国という呼び方ができていったのではないか、と。

 さらにさかのぼると、炭鉱で栄えていたこと、福岡県を舞台にした任侠映画が多数作られていたことなどから、もともと「気性の荒い人が多そう」というイメージが広まっていた可能性も考えられます。このことも間接的に影響しているのかもしれません。

 「北九州市=修羅の国」という図式が現れたのは最近のことで、市内でロケットランチャーなどが発見される事件が数年前に起こってからだと思います。

―― 「その手の物騒なものが路上に転がっているのが、北九州市の日常」なんて真偽不明の情報もありますが。

 もしもイメージ通りの修羅の国が存在したら、そんな感じなんでしょうけどねえ……。調べれば分かることですが、確かに北九州市には指定暴力団が1団体あります。でも、市民が安全に暮らせるように対策していますし、日常生活の中でトラブルに巻き込まれることなんて、まずありえないですよ。私自身、本物の手りゅう弾なんて見たことないですから。

 ネット上では「2013年にJR小倉駅で手りゅう弾が見つかった」という情報が出回っていて、記憶に残っている人もいると思います。でも、あれって結局、おもちゃだったんですよね。発見当初はそれが分からなくて、騒ぎになってしまっただけなんです。


2017年度の市政モニターアンケート結果。これによれば、過去2年間に暴力団から「ゆすり」「たかり」を受けた人は1%以下


同アンケートの自由回答を見ると、「暴力団等を見かけることもなく、平和な日々」など治安の良さに満足する声が目立つ一方、「北九州市は、暴力団のイメージが強い」「イメージを少しずつでも良くしてほしい」など、印象改善を求めるコメントが


「小倉駅 手りゅう弾」Google検索結果。「交通規制などが行われる騒ぎになった」というまとめ記事はいくつもありますが、「実はよくできたおもちゃだった」ことはあまり取り上げられなかったようです

 確かに北九州市は、刑法犯認知件数が多かった時期があります。2002年は政令指定都市全20カ所のうち、ワースト3位。でも、2016年には件数が5分の1に減り、10位になっています。ちょうど真ん中くらいですね。

―― 5分の1とは、ずいぶん減りましたね。

 件数に関しては、全国的に減少傾向にあるというのもあるんですけどね。その中でも特に改善されているから、順位が良くなっているわけです。



 でも、県外の人は「国内ぶっちぎりの1位で、治安が悪い地域」と思い込んでいることが多いらしくて。北九州市への出張が決まって「げぇっ北九州!?」と思った、職場の人から「防弾チョッキ着ていけよ」と言われたみたいな話を時折耳にします。

―― ネット上だけではなく、現実世界でも修羅の国のイメージが強いですね。

 反対に、私が県外に出張に行ったときも「銃弾なら3発まで避けられます」と言うとウケますね。

―― あなたもノリノリじゃないですか!

 修羅の国という扱いに納得しているわけではありません。しかし、残念なことに、自虐ネタっぽく使うとめちゃくちゃ強いので……。

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