受験の数学では、角度の問題はつきものですね。高校入試でも大学入試でも、必ずと言っていいほど、図形の角度を利用した出題があります。
ところで、「直角は90度である」ことはみなさんご存じですが、ではなぜ90度なのでしょうか。せっかくなら「100度」を直角にしてしまったほうがキリが良いし、計算もしやすくなったのに……。
直角=90度の由来は?
なぜ直角は90度なのか。まず、「度」という角度の単位の定義を辞書でみると、以下のように出てきます。
度 ど degree
(1) 六十分法の角度の単位 記号は゜である。1゜は円周を 360 等分した弧に対する中心角。
出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
円1周が360度なので、それを4等分した直角は90度になる、という理屈のようです。
これですんなり納得した人もいるかもしれませんが、多くの人は「説明になってないじゃん!」と思うかもしれません。
すなわち、「なぜ1周は360度なのか」という疑問がまだ残ってしまうのです。この「度」という単位自体は、一体何が由来なのでしょうか。
なぜ1周は360度なのか
上に引用した「度」の説明にあった「六十分法」のリンクをたどると、以下のように出てきます。
六十分法 ろくじゅうぶんほう sexagenary system
平面角の大きさを表す方法。円周を 360等分した弧に対する中心角を1度 (記号度) とし,1度の 1/60 を1分,1分の 1/60 を1秒とする。(中略)
この角度分割法は極めて古く,バビロニアやエジプトの古代天文学において1年 (約 360日) に1回転する恒星天が1日に動く角度として決めたのがその起源である。
出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
諸説ありますが、この「天文学に由来する」という説が最も有力なようです。もっと近年になっての発明かと思いきや、古代文明までさかのぼるとはすごいですね。
バビロニアってどこ……?
上で登場した「バビロニア」という名前になじみの薄い方もいるかもしれません。
バビロニアとは、現在でいうイラク南部にあたる地域です。
メソポタミア文明が栄えたのもこの周辺ですが、「バビロニア」と呼ぶときには、紀元前2500年ごろから紀元前500年ごろまで多くの王朝が入れ替わった時期を主に指します。
「目には目を、歯には歯を」で有名な「ハンムラビ法典」がつくられたのも、この時期に含まれる紀元前1700年ごろです。
紀元前2000年といえば日本はまだ縄文時代でしたが、バビロニアでは既に、天文学をはじめとして高度な学問が発達していました。1年がおよそ360日であることは明らかになっていたほか、60進法を用いた時刻の計算や数学も行われていたとされています。
まとめ
このように、1年の日数が「1周が360度」の由来とされていますが、最初にこう決めたのが誰なのかははっきりしていません。「ペルシャ(イラン)で使われた天文学の道具が最初」「ギリシャの学者が初めて決めた」など諸説あります。
いずれにせよ、現代の私たちの文明や学問が、数千年も前に編み出された方法によっていることは間違いありません。
ほかにも「身近な物事の背景がとても昔までさかのぼる」という例を探してみると、日々の勉強に少しロマンが生まれるかもしれませんね。
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