マレーシアでフェイクニュースを取り締まる法案が審議されました。言論の自由が失われるという懸念から、人権団体などが反発する事態となっています。
マレーシアのナジブ・ラザク政権はフェイクニュースの発信者を罰する法案について審議しました。報道によると、フェイクニュースを発信した人に最大で約1300万円(50万リンギット)の罰金、10年の禁固刑を課すことを提案しているとのこと。法案ではフェイクニュースは「一部または全部に誤りがある情報やデータ、ニュース」とあり、「この法は電子出版物やソーシャルメディアも対象に含まれる。マレーシア人またはマレーシア市民に影響を与えた、国外の外国人も対象となる」とされています。
「言論と表現の自由の権利が尊重されることを保証し、フェイクニュースの拡散から国民を守ることを目指す」と法案には記されているものの、定義があいまいという理由から、いくつかの団体が反対意見を強く表明しました。
国際人権団体アムネスティのジェームス・ゴメス氏は以下のように述べています。
「この法案は言論の自由への攻撃です。あいまいで範囲が広い“フェイクニュース”という定義が、厳しい刑罰と警察の恣意的な逮捕に結びつく。政府を批判から守ろうとする図々しい試みでしかありません。今すぐに、破棄されるべきです」
「マレーシア政府が“フェイクニュース”という言葉を使って、批判する人々を取り締まる言い訳をするというのは、不穏な事態です」(ゴメス氏)
アジアインターネット連盟(AIC)は「情報の交換をコントロールするように設計された法律でフェイクニュースの問題に効果的に対処することは難しいでしょう。情報が正しいか間違っているか区別することはとても主観的で、情報のアクセスやアイデアの交換を損なう危険性もあります」と主張し、政府と報道機関の協力体制が必要であると唱えています。同連盟には、Googleやアップル、Yahoo!などがメンバーとして所属しています。
マレーシアを含む東南アジアでは、フェイクニュースを取り締まる法律が提案されており、シンガポールやフィリピンなどでも審議されたことがあります。マレーシアでは数週間後に総選挙を控えていることを海外メディアは指摘。ナジブ首相も関与していたとされる大規模スキャンダル、政府系投資会社ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)に関連した広範囲にわたる批判が高まっていることから、今回の法案が話題に上がったのではないかとされています。
4月4日追記
法案が議会で可決されました。Amnesty Internationalは「マレーシアの議員は長く待たずに、平和的な政府の批判にも適用されうる曖昧な法案を通した」と批判しています。
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また改良されました。