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VTuberはまだまだやれることがある──けもフレ・福原Pがジャストプロで仕掛ける理想のVTuberとは?(後編)(1/2 ページ)

受けるバーチャルYouTuberとは。

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PANORA/株式会社パノラプロ


パノラ 福原 前編に続き、福原慶匡氏と見野歩さんのインタビューをお届けする

「背景の分厚さ」で差別化したい

──ジャストプロという芸能プロダクションから見て、タレントとしてのVTuberの魅力や可能性は感じたりしますか?

福原 そうですね。芸能事務所として……。

見野 考えたことはあまりないですね。

──そうなんですね。バーチャルタレントは、割と昔からいるじゃないですか。

福原 そうですね。ホリプロの「伊達杏子 DK-96」とか20年前くらいかな。早すぎましたよね、あれは。

──テクノロジーが安価になって、ようやくバーチャルタレントができる時代が追い付いたのかなとも思います。

福原 そうですね。バーチャルキャラをタレントとしてみると、年を取らないので息が長いっていうのが1つあります。ただ、タレントを長く続けていく際、バブルが終わったときにどう生き残るのかを考えなくてはいけないところはあります。例えばアイマスは、IPとしてもう20年近く続いていますよね。それは声優の魅力のみに頼らず、世界観をきちんとつくりこむのが長続きのコツになります。

──生身のタレントをプロデュースする経験は、VTuberにも生かせるものなのでしょうか?

福原 もちろんその経験もちゃんと生かします。アイドルでいえば、20代まではアイドルとしてやっているけど、途中からタレントにシフトしつつ30代で結婚して……みたいな展開がありますよね。中には急にマラソンに目覚めたりとか、何らかの展開を生み出してくれる方もいて、そういう人は「いいタレント」なんです。VTuberでも、「中の人」が勝手に展開していってくれるようなケースがあれば長く続くと思います。

 でもそうじゃなければ、大人の力でテコ入れしなければいけない。「中の人」に頼り切ってしまうと、途中から息切れしがちですし、途中で大人の力を入れると違和感が出てきてしまう。いきなり「実は宇宙からきましたー」みたいな設定が出てきてもおかしいじゃないですか。「そんな話なかったでしょ」って。

──「俺の◯◯ちゃんを勝手に変えるな!」のような、ファンの反発もありそうですよね。

福原 だからこそ、最初から見越していろいろな設定が必要になるんだと思います。僕たちにはこれまでアニメ作品を作ってきたノウハウがありますので、そういう「背景の分厚さ」で少しでも差別化できたらいいなと思います。とはいえ、ビジネス的な観点では素早く結果を出すのも大事なので、そこまで続けられない可能性もあって、あまり大きなことは言えないんですけどね(笑)。「てさぐれ!部活もの」も3期くらいになると、どんどん中の人頼みになっていって、最終的には実写もやりましたし。

──設定の重要さはわかったのですが、ストーリーのようなものはVTuberで必要だったりするのでしょうか?

福原 僕の言うストーリーは、「ここでライバルの◯◯が登場して……」というアニメみたいなものではなく、ドキュメンタリーにおけるストーリーに近いです。

 野球でも、最終回までずっとエースが打ち取られていて、「もうだめだ」みたいなギリギリの状況で逆転サヨナラホームランが出て勝つと、みんな感動するじゃないですか。あれは別に脚本に沿ってやっているわけじゃないですよね。

 AKBでいえば、最初はファンが7人くらいしかいなかったのに、頑張って東京ドーム埋めるくらいにまで大きくなって、そうしたら乃木坂がどんどん勢いつけてきて……といった具合に展開して、ずっと見ていられるじゃないですか。VTuberでも、これを「編集をしてないドキュメンタリー」みたいな感じでやっていくのが重要だと考えています。

──今の話はちょっと核心だなと思いました。

福原 コンテンツを企画する上で、何個か踏まなきゃいけないことがあります。それをやりつつ、ファンとの交流で動いていく現場をいい感じに軌道修正していくことになるので、結構やることは多いです。でも仕掛けを用意しておかないと、お客さんは興奮しないからヒットにつながりにくい。

──コンテンツは、結局多くのファンの心を揺さぶることができたものがヒットにつながりますよね。

福原 配信中のトラブルだったり、「富士葵」ちゃんのクラウドファンディング成功だったりは、もちろん盛り上がるんですが偶然生まれたストーリーですが、そうした仕掛けをある程度わざとやらなければいけない。ファンにとって「俺たちが応援して今があるんだ」って思ってもらえるようにですね。それが「観客をコンテンツの一部にする」ということです。

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