趣味人には好きなものがたくさんある。それが足を引っ張ることもあれば、趣味人だから人とつながるものもある。
「ヲタクに恋は難しい」は、好きなものがある人間たちの、恋なのかなんなのかわからないモヤっとした感情を描いたラブコメディー。ヲタクのみならず、いろんな若い人の背中を押してくれます。
趣味の共有はヲタクだからこそ難しい
今回はメインの2人、二藤宏嵩と桃瀬成海の先輩である小柳花子と樺倉太郎のカップルの話。
小柳はかっこいい系男装を得意とする、カリスマコスプレイヤー。一方、樺倉はヒーローや美少女ものを好むライトヲタク。お互いヲタクであることを隠さないですむ気楽な関係。なのですが、何かと言うとケンカをしています。
今回のケンカの原因は、小柳の「樺倉と同じ趣味を共有したいだけなの!」という主張。ようは小柳は樺倉にコスプレをさせたい。樺倉は勘弁して欲しい。樺倉「小柳の趣味を否定はしねぇ…だが共有が可能かどうかは別問題だろ!」
ヲタク同士だったら友人・恋人関係は潤滑だよねーみたいに考えたくなるところですが、いやいや、逆に趣味が似たベクトル同士のほうがトラブルは起きやすい。「趣味を大事にして生きている」という理解は得やすくても、お互いにこだわりがあるからこそ共有できない部分が増えてしまう。あと地雷も多い。
樺倉は隠れヲタクです。あまり趣味を前面に出さず、作られたものを享受して満足している。片や小柳は表現者側です。コスプレという方法で自分の趣味を外に発信できる人間。仲間と共有しようとするタイプ。
この点、BL同人作家の成海とゲーマーの宏嵩も同じ、表現者と受け取り手のカップルだったりします。
「私で妥協してるんじゃないかな…」
4人で飲みに行ったとき、事件は起きました。酔いが早かった小柳が早速恋バナを切り出したところ、樺倉はいい加減な発言。小柳、キレる。
デリカシーのない樺倉。小柳への雑な態度を「付き合い長いからいーんだよ」で片付けた。小柳、プツン。憤って煽る小柳に対して、樺倉はうまいことを言えず目をそらしてしまう。酔った小柳は殴りかかろうとしたとき、涙が止まらなくなって逃げ出してしまう。
4人の中では恐らく一番気が強くて頑丈なメンタル……に見える小柳。実際はとても自信のない人間です。
小柳は、ヲタクであることは足かせであり、「一般人(ヲタクではない人のこと)」より下だと感じているようです。そもそも自分は、相手に対して価値があるんだろうか、求められているのだろうか。
小柳「ヲタク同士で楽だから付き合ってるのかな」
妥協した趣味仲間なのか、オンリーワンだと思ってくれているのか。手応えがないと不安になるのは、当然です。
正直、樺倉は褒めなさすぎる。言葉足らずすぎる。一方で小柳は酔うとすぐ不安になりがち、絡みがち。
第三者から見たら「樺倉お前もっと優しくしろ」感強いのですが、きっとこの2人にとっては、ケンカして、その後きちんと抱きしめる、感情を隠さずぶつけあえる今の距離がベストなんでしょう。そこには他の誰も入れません。ヲタクかどうかなんて関係ありません。
ちなみに、樺倉が小柳の趣味に歩み寄れるかどうかは、後に描かれています。
宏嵩の笑顔
樺倉と小柳のケンカのあと、自分たちはこれでいいのかと話し合った成海と宏嵩。
成海「でもやっぱり、理想の異性とは違うんだよねー。お互いヲタクってことで少なからず妥協してるとこあると思うし…」「…だからぁ宏嵩も、本当は普通の女の子のがよかったのかなって…」
割とゴリゴリ前に進める成海でも、やはり勢いで付き合っちゃったため、宏嵩の気持ちは気になります。
これに対して宏嵩は、樺倉のように感情的にスキンシップを取ることはできないけれども、言葉できちんと伝えます。
宏嵩「好きなことしてるときの成海が、大好きなので。まぁ俺はそんなカンジだから、難しく考えなくていいよ」
なんてぐっとくる告白。これに対して成海が「お前私のこと好きだったのか」と空気台無しにするセリフを返したのはアレですが。ああ、宏嵩お前本当にかわいいな!!! 成海お前、これ最優良物件やぞ。
宏嵩は以前の回であったように、成海のことが幼少期から気になっていました。この言葉の通りで、好きなことを力いっぱいに楽しんでいる成海が、昔から大好きなんでしょう。だからそばにいたいし、かといって干渉するわけでもない。
多分、ヲタク趣味を持っていなくても、好きなことに夢中な成海がいれば、宏嵩は幸せなんでしょう。感情表現の苦手な彼も、成海と付き合いだしてからちょっとずつ変わりはじめます。
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