テレビのニュースや新聞などで、よく見かける「書類送検」の文字。「△△署、○○氏を書類送検」などのように使われていますね。
「『逮捕』は警察に捕まること」というのはおおよそイメージがついていると思いますが、「書類送検」についてはどうでしょうか。ちゃんと説明できますか?
犯罪捜査の流れ
犯罪事件の捜査は、主に警察と検察が段階的に担います。
大体は警察が先に捜査するのですが、警察は犯罪の捜査をしたら、その事件を必ず検察に引き渡さなければなりません。この手続きを「送致」といいます。
ずばり書類送検とは、「検察官に送致」=「送検」するときのやり方の1つです。
送検が行われるまでの流れを、順に見ていきましょう。
警察による捜査
事件が起きると、警察の捜査が始まります(実は、警察だけでなく検察官も逮捕したりできるのですが、今回は割愛)。当事者への聞き込み等が主ですね。
しかし、犯人を見つけても、警察だから誰でも逮捕できるというわけではありません。現行犯逮捕などの例外でなければ、先に裁判所に理由を説明し、「逮捕状」が出されなければなりません。
逮捕とは、個人の身柄を拘束し、自由を奪う処置です。しかし、裁判が終わるまでは「推定無罪」が適用されるという原則があり、むやみに逮捕すると被疑者の人権を侵害することになってしまいます。
そのため、罪が軽い場合や、被疑者が逃げたり証拠を隠滅したりするおそれのない場合には、いわゆる「任意同行」や「在宅捜査」のような方法となります。捜査に必要な場合にのみ逮捕することが認められているのです。
検察への送致
先ほど述べたように、警察は検察へ事件を引き渡す(送致する)ことが決められています。送致するという原則は逮捕の有無にかかわらず変わりませんが、送致の形式が変わってきます。
逮捕してから48時間以内に行われる送致は「身柄付送致」です。つまり、事件に関する証拠や書類とともに、容疑者の身柄もまとめて検察に引き渡されるのです。
それに対し、逮捕していなかったり、逮捕して一度釈放したりした場合には、被疑者の身柄を押さえられていません。行われる送致の形式は「書類送検」となります。証拠や書類のみを引き渡すもので、「在宅送致」ともよばれます。
※本当に小さな犯罪(微罪)と認められた場合は、送検が行われない場合もあります。
書類送検がどんなものかは、理解できたでしょうか。
送検の後は
事件が送致されると、次は検察が捜査を引き継ぎ、必要な場合には被疑者の身柄をさらに長い時間確保する「勾留」などの処置がとられます。
最終的に検察は、「起訴」して裁判に持ち込むか、「不起訴」として釈放するかを選択します。
たまに「書類送検の場合は不起訴になることが多い」といわれますが、これは一概に言えません。「罪が軽いと考えられる」「証拠が不十分」といった理由で逮捕されなかったなら不起訴となることもあるでしょうし、「既に動かぬ証拠がそろっている」という理由で逮捕されなかったのであればおおよそ起訴されるでしょう。つまり、どんな理由があって逮捕されず書類送検となったか、にもよるのです。
参考文献
三井誠、曽根威彦、瀬川晃編『入門刑事法〔第5版〕』、有斐閣、2013
千葉博『入門の法律 図解で分かる刑事訴訟法』日本実業出版社、2008
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