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働き方改革の急先鋒? 「株式会社週休3日」がSNSで話題に

どんな会社なのか?

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 街角で発見された、ちょっとゆるい会社の看板がSNSで話題になっています。看板に書かれた企業名は「株式会社週休3日」。これだけだと何の会社だか分かりませんが、とにかく働き方改革にコミットしてくれそうなことは伝わってきます。


 Twitterでは「脱力感が素晴らしい」「3連休ほしい」「就職してぇ」「一人が得られる給料が低くなる」「完全がついてない これは罠だ」などいろいろな想像を巡らせる反応が見られました。中には「地元企業なので知っている」という声も。どんな会社なのか、静岡県浜松市の「週休3日」代表・永井宏明さんに聞いてみました。

離職率減に労働意欲向上? 謎の会社「株式会社週休3日」がSNSで話題 どんな会社かな?(週休3日公式サイトより

■年間50日、400時間を提供するサービス

――変わった企業名だとSNSで話題です。一体どんな会社なんですか?

永井:正社員の働き方を広げたいという思いで、人材紹介をメインにやっています。

――週休3日の仕事を紹介してくれるなんて素晴らしい……! このコンセプトはどうやって思い付いたのですか?

永井:過去に老人ホームの施設長を8年ほど務めたのですが、人不足のときに思い切って正社員を週休3日で募集したんです。介護の現場はどうしても大変なので、週休2日だと心身が疲弊してきますし、職員の「もう1日休みたい」という声をよく耳にしていました。ところが週休3日だと「もう1日働いても良いかも」に変わったんです。

 医療や介護を受ける立場で考えてみるとよく分かると思うのですが、「もう休みたい」という職員と「もう1日働ける」という職員では、後者の方が絶対にサービスの質が上がります。実際に介護施設でこの制度を6年運用した結果、離職率もぐんと下がりました。

離職率減に労働意欲向上? 謎の会社「株式会社週休3日」がSNSで話題 介護施設での導入例(週休3日公式サイトより

――人材紹介ではどういった職種を扱っていますか。

永井:当初は医療現場や介護士の紹介がメインでしたが、今は薬剤師向けの紹介が増えています。

 事前に事業者側と相談してから人材をご紹介するのですが、医療や介護の現場では週休3日という働き方に職場で理解が得られなかったり、人事が首を縦に振らないといった事例が多かったです。提携を次々に打ち切られて、一時は弊社が週休7日になりかけました(笑)。

――なんと……。

永井:その後、薬剤師の皆さんが疲弊されていて、週休3日のニーズがあることが分かってきました。薬剤師の仕事って、隣接するクリニックの診療時間に左右されることが多いんです。例えば水・土曜日が午前中だけの診療だと、クリニックもその時間に合わせる。採用募集では週休2日なのに、水・土曜日の半休を合算して1日分の休みにカウントするので、実際は週6日働いているという方が多かった。


――週休3日を希望するのはどんな人が多いですか?

永井:本当にいろいろな方がいらっしゃいます。子育や介護と両立したい人や、休日の趣味を大切にしたい人。パートナーがバリバリ働いているので、自分は家庭のサポートをしたいけど、仕事もがっつりやりたいという人。薬剤師や理学療法士などは、仕事が終わったあとに勉強をしたり、大学に行ったりという方もいらっしゃいます。週休2日だとこれはなかなか厳しい。それはそうだろうと思います。

 「全員週休3日で働くべき」なんて言うつもりは毛頭ありません。一般的に週休3日にすると、給与は8割になります。でもその代わりに年間50日、400時間が手に入ります。そういう意味では、弊社は単なるマッチングサービスではなく、「時間」を提供するサービスだと考えています。

――ちなみに御社も週休3日ですか……?

永井:週休3日です。我が家は子ども4人で、家族共働きです。するとやはり週3日は休みがないと、家庭が回らないんですよね。あと、実は私、趣味で演劇もやってるんです。こないだは脚本・演出を担当した劇が演劇フェスティバルで受賞しました。浜松のローカルなフェスティバルですけど(笑)。

 これまでは育児や介護などで週休3日以上必要な場合、正社員を諦め、パートやアルバイト以外の選択肢がなかった人も大勢いたはずです。でも、「正社員」の条件は国ではなく、各事業者が自由に決めて良い部分もあります。週休3日正社員なら精神的な安定が望めますし、事業者との信頼関係を築きやすい上に、何より納得感を持って働けるのが大きいと思います。

――今後紹介する職種を増やしていくご予定は?

永井:各職種にぴったりな週休3日のあり方が見えてきた手応えがあります。現在主な活動範囲は静岡ですが、既に関東や関西での紹介実績もあり、企業側のニーズもつかめてきました。今後は医療・介護と同じく、ホスピタリティを必要とする観光や飲食などでも、その後の基準になるような週休3日の導入事例を生み出していきたいです。


 企業看板のふわっとした印象が目を引きましたが、事業の内容は至って真面目。高齢化社会で育児や介護の人手不足が叫ばれる中、柔軟な働き方による周辺環境のサポートは不可欠になってきています。メリットとデメリットはあるものの、週休3日正社員という雇用形態には大きな可能性を感じました。

追記:一部表現を修正しました(6月13日9時39分)




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