「熱中症で頭が痛いときに、頭痛薬を使うのは危険」と注意喚起する、漫画「薬剤師さんの注意録 夏の頭痛は要注意!」がTwitterで反響を呼んでいます。原案は薬剤師の高橋秀和(@chihayaflu)さん、漫画は油沼(@minddive_9)さんが手掛けています。
作中で描かれているのは、サッカーの練習中に頭が痛くなり、薬局を訪ねた人の相談事例。薬剤師は熱中症の可能性を鑑み、頭痛薬の使用は危険と告げます。
その理由は、頭痛薬(解熱鎮痛薬)に腎臓の血管を収縮させ、血流量を減らす性質があるため。脱水を伴う熱中症の際は、急性の腎障害が出やすくなります。そんなときに頭痛薬を服用し血流量が減ると、腎臓に大きなダメージを与えかねません。過去の事例では、回復せず慢性腎臓病になった人もいるのだそうです。
そこで薬剤師は病院の受診を提案。熱中症は症状によって軽重が3段階に区分でき、相談主のような頭痛を伴う熱中症は2段階目に該当していたからです。第3段階まで悪化になると意識障害やけいれんなど、さらに危険性が増します。
患者は友人の協力で搬送され、薬剤師が紹介した病院で点滴を受けて無事回復したとのこと。漫画はあらためて「暑い時期の頭痛には注意」と述べ、最後に「水分の摂取」「朝食を抜かない」「十分に眠る」など、熱中症の予防法を示して終わります。熱中症を何度もくり返すと、腎機能が落ちて戻らないケースがあるので、くれぐれも注意してほしいとのことです。
「知らなかった」「以後気をつけなければ」と、漫画には感謝の声が多数集まっています。ただ、原案の高橋さんは今回の反響に懸念するところもあり、下記のように今回の反響にまつわるコメントを編集部に寄せています。
ご紹介したエピソードについて、多くのかたが関心を持ってくださったことをうれしく思っています。薬剤師との相談について、身近に感じていただければと思います。
こうした企画に参加させて頂く際、いつも私が心配するのは、「ストーリーが豆知識として消費されることで、かえって危険なことにならないか」という点です。こうした医薬品利用の落とし穴は、いくらでも挙げることができますし、薬を利用する様々な局面で、常に適切に薬を選び、危険を回避し続けるには、残念ながら「豆知識の蓄積」では難しいものがあります。気軽に薬剤師にご相談いただければと願っています。
日本では、薬剤師の仕事はAIで代替できるのではと言われていますが、その話題の元となったオックスフォード大学のレポートの見解は逆で、薬剤師をAIで代替しづらい職業としてランキングしています。
日本は、医薬品を利用する際の知識・判断を軽視しがちな国であり、それがかえって危険を招いています。
つまり、頭痛薬のエピソードは薬の選択に関する一例に過ぎず、こうした豆知識を蓄積しただけでは、あらゆる場面で適切な判断をするのは難しいということです。自己判断で市販薬を使う前に、まず薬剤師に相談することが、漫画の最重要な部分といえるでしょう。本件について、高橋さんはより詳しい論を、自らBuzzFeedに寄稿しています。
油沼さんは薬にまつわる漫画「薬剤師さんの備忘録」を、漫画サイト「マンガハック」で連載中。内容は「豆知識」の部分が目立つかもしれませんが、全編一貫して「薬剤師との相談」の重要性が描かれています。
(沓澤真二)
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注射か、死か。