第159回芥川龍之介賞の候補となっている「美しい顔」(北条裕子氏著)に、他作品と類似した点があると報道されていることをめぐり、講談社は7月3日、「盗用や剽窃(ひょうせつ)などには一切あたりません」とするコメントを発表しました。あわせて同作品の全文を無料でWebサイトに公開することも明らかにしています。
同作品は東日本大震災の被災地を被災した女子高生の視点で描いた短編で、講談社『群像』6月号に掲載。第61回群像新人文学賞の当選作に選ばれています。同作に新潮社の石井光太氏著『遺体 震災、津波の果てに』との類似点があることが講談社の調査で判明し、石井氏および新潮社と協議を行ってきたと説明しています。
講談社は、「美しい顔」で描かれた震災直後の被災地の様子は、『遺体 震災、津波の果てに』に大きな示唆を受けたものとし、編集部の過失により同作を参考文献として『群像』6月号に掲載していなかったとして謝罪。同誌8月号において、謝罪文とともに主要参考文献を記載するとしています。
その一方で、今回の問題は「参考文献の未表示、および本作中の被災地の描写における一部の記述の類似に限定されると考えております。その類似は作品の根幹にかかわるものではなく、著作権法にかかわる盗用や剽窃などには一切あたりません」との見解も示しています。
一部報道により「美しい顔」と著者に対する中傷がインターネットなどで散見されるとし、「不当な扱いによって、本作と著者およびそのご家族、新人文学賞選考にあたった多くの関係者の名誉が著しく傷つけられた」と憤りを表し、厳重に抗議すると述べています。
また「甚大なダメージを受けた著者の尊厳を守るため、また小説『美しい顔』の評価を広く読者と社会に問うため」として、近日中に同作を講談社Webサイトで全文無料公開するとしています。
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