お盆休みのこの時期、帰省してお墓参りをする人も多いはず。1年の中でも数少ない先祖に思いをはせる機会である。
一方でこんなことも考える。人はいずれ死ぬ。日本には1億3000万の人がいて、どこかで新たな命が生まれては別のどこかで誰かが亡くなっている。それならば、いずれは墓場が足りなくなるのでは? むしろ今までの間に足りなくなっていてもおかしくないのでは?
土地が足りなくなり、お墓を持つのがぜいたくになる……そんな時代が近づいているのだろうか。今回は日本のお墓の現状と、広まりつつある「お墓に入らない新しい葬り方の形」について調べてみた。
葬り方の基礎知識
まずは基礎知識から。日本では原則として火葬(遺体を燃やし、遺骨の状態にして葬る)することになっており、土葬(遺体をそのまま埋める)は基本的に認められない。
さらに遺骨の納め方は、「墓地に墓を建ててその中に入れる」という一般的な方法の他に、墓を建てずに「納骨堂に置く」方法もある。大きく分けるとこの2種類ということになるだろう。
「墓地」と「納骨堂」の件数については、厚生労働省の「衛生行政報告例」という統計にまとめられている。2016年度末のデータによれば、日本全国に墓地は87万412件、納骨堂は1万2400件ある。
このデータを各年でまとめたものを文化庁が公表しているが、意外にもここ数十年で墓地も納骨堂もほとんど件数が変化していない。日本は土地が限られているので、近隣住民の「遺骨が近所に集まるのは……」という感情的な側面も相まって、そういった施設は現実的に増やせないのかもしれない。
最近の墓事情は
墓地は増えないのに遺骨は増え続ける。多くの場合は家系の墓を代々受け継いで使うため、全員が墓を建てるわけではない。しかし、核家族化が叫ばれ始めて久しい現代において、新たな墓が増えるのは避けられないだろう。そういった状況で墓は足りているのか。
結論から言えば、好きなところに墓を建てられるという状況ではない。特に管理しやすい都会付近の霊園は人気があり、抽選による争奪戦となることも珍しくない。土地の費用も決して安くはなく、「墓を建てて残す」という営み自体がもはやぜいたくといえるのかもしれない。
一方で、墓を建てる必要がない納骨堂の方は、墓地ほどの不足感はないように思われる。使い勝手の面でも、料金が比較的安い、管理が楽などのメリットがある。ただし、納骨堂によっては一定の期間が経つと合祀(他の遺骨と合わせて祀ること)されてしまうこともあり、注意が必要だ。
これからは「自然に還す」?
墓が足りない状況の中、自然を利用した新しい葬儀の形も広まり始めている。
例えば「樹木葬」は、遺骨を埋めた箇所に樹木を植えて墓石の代わりとするもの。必要なスペースが小さく費用も安い。また、季節によって変化する見た目も樹木ならではの趣きがある。
さらには、遺骨を海にまいて自然に還す「散骨」という選択肢もある。ただし日本では法整備が追い付いておらず(「死体遺棄罪」との関連については、法務省の非公式な見解で「違法性はない」とされてはいる)、当面は業者などを通じて適切に行うべきだろう。
「どんどん墓が建つので、どんどん墓地が広がっている」というよりは「墓地が足りないので、墓を建てる以外の選択肢が増えている」というところだろうか。
「墓」は将来なくなるのか、全く別の形になるのか……。冒頭に「お盆にお墓参りする人も多い」なんて書いたが、もしかしたらそれも既に古い常識となりつつあるのかもしれない。
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