日本のアイドルであるAKB48グループメンバーが韓国のオーディション番組に出演する――そんな前代未聞の企画「PRODUCE48(プロデュースフォーティエイト、通称プデュ48)」が佳境を迎えています。もともとの韓流好きも、日本のアイドル好きも、クライマックスを迎えようとするプデュのシーズンを固唾を飲んで見守っています。
プデュ48は韓国のケーブルテレビ局「Mnet」が制作するテレビ番組。2016年にシーズン1、2017年にシーズン2が放送され、国内で大人気となった「PRODUCE101(プロデュースワンオーワン)」の後続番組です。番組の目的は、韓国の練習生(アイドルの卵)と日本のAKBメンバー合わせて96人から12人を選び出し、新たなアイドルグループとしてデビューさせること――。
結果を決めるのは視聴者投票! この番組には“審査員”が存在しないので、視聴者投票・ステージ収録時の客席投票が全ての結果を左右します。投票数で上位12位に残ればいいのです。韓国の視聴者が1日1回12人を選ぶ(ピックする)もので、1週間に1回番組放送終了後に結果が発表されています。
そもそも「プデュ」とは?
「PRODUCE101」では、101人の練習生(デビューを目指して歌・ダンス・ラップなどの練習に励むアイドルの卵。事務所に所属していることが多い)から、視聴者投票で上位11人がデビューしました。いわば「視聴者がプロデューサーとなって理想のアイドルグループを作る」というテーマを実現させた番組なのです。
投票権を持つ視聴者のことを、プデュのシリーズでは「国民プロデューサー」と呼び、メンバーが「国民プロデューサーさま、よろしくお願いいたします」とあいさつする姿が撮影されます。
シーズン1は1位の獲得票数が85万8333票で、上位11人が「I.O.I(アイオーアイ)」として2016年5月にデビューしました(2017年2月に解散)。現在は、メンバーそれぞれの事務所に戻って別のグループやソロデビュー、女優やタレントとして活躍しています。シーズン2の1位は157万8837票を集め、上位11人が「WANNA ONE(ワナワン)」として2017年7月から活動を開始しています(2018年12月に解散予定)。
I.O.IもWANNA ONEもデビュー直後から人気で、各社のCMにひっぱりだこ、日本をはじめ世界各国でのコンサートに飛び回っています。国民的人気番組によって、勢いのあるアイドルグループが生まれる。それがプデュシリーズです。
それが今度はAKBグループのアイドルを加え、日韓同時放送で、2018年6月8日からスタートを切ったのです。これまでのシリーズに負けないくらい、たくさんの“名場面”が生まれました。アイドルの卵たちが歩んできた道のり、そして最終回に向けての予想をまとめました!
宮脇咲良さんのセンター抜てき
本番組で真っ先に話題になったのが、HKT48宮脇咲良さんのセンター抜てき。番組開始1カ月前にYouTubeで配信された「ネッコヤ PICK ME」は、視聴者に「さくらたんがセンター!」と衝撃を走らせました。
放送開始前で前情報の少ない中、約100人の頂点に立つセンターとして映し出された宮脇さんは、日韓のファンに強烈な印象を与えました。1番は韓国語、2番は日本語で展開される歌詞。「ネッコヤ〜ネッコヤ〜」と連呼するサビ。宮脇さんの最高のキメ顔。
何よりインパクトがあったのが、ランク分けを強調するステージセットでした。この時のポジションは、トレーナーの先生たちによるクラス分け(レベル評価)を元に決められ(1〜3話でクラス分けの様子が明らかになりました)、カメラに映りやすい前方にAクラスの評価を受けたメンバーたちが立ちました。センターはそのAクラスのなかから、メンバー内投票によって選ばれています。
そんな“選ばれた”Aクラスのメンバーの後ろには、Bクラス、Cクラス、Dクラスと続いて、Fクラスの参加者はなんとステージの下。後半も後半の4分27秒にならないと現れません。
……そんな残酷にも思える装置の上で、「pick me up(私を選んで)」「ネッコヤ(私のもの)」と視聴者に歌いかける参加者たち。興奮してアドレナリンが噴出したのを覚えています。
この動画配信後、韓国の主流ポータルサイトNAVER検索ランキング上位に"宮脇咲良"の名が踊り出たりと、韓国の視聴者から一気に注目を浴びたことがうかがえました。ただし、テーマ曲のセンターはあくまでこの時だけのもの。上位12人に残れるかどうかは、国民プロデューサーが命運を握ることになりました。
Fクラス評価が相次ぐAKB48メンバーたち
日本と韓国の違いが浮き彫りになり、日本のアイドルファンを大きく揺るがしたのが放送第1回。参加者全員がトレーナーの先生たちにパフォーマンスを披露する「クラス分け」です。韓国の練習生たちの場合、事務所ごとにグループをつくってパフォーマンスを披露するため「事務所評価」とも呼ばれています。
日本からやって来たAKBグループメンバーたちも、それぞれ小グループをつくりパフォーマンスを披露したのですが……のきなみ最低ランクの「F」判定という厳しい評価を受けました。
韓国の先生が「日本ではダンスを合わせることを重視しないの?」と訊ね、日本のアイドルが「ダンスを合わせるというよりは、愛嬌のほうが日本のアイドル」と答える場面も。この答えに先生たちは「文化の差だね」と語ります。パフォーマンスに対しても「私たちのやろうとしていることはもっと難しいことです」と“レベルの差”を感じるようなフィードバックが向けられます。
ただし、レッスンを受けた後の「テーマ曲評価」で、日本勢も評価を伸ばしました。3日間で曲を覚えて披露しなくてはいけない状況で、プレッシャーと疲れからかパフォーマンスの途中で心が折れてしまったり、歌詞や振付が抜け落ちてしまったりするメンバーが多発したのですが、そんな中、本番慣れをしているAKBメンバーの強さも見られました。
「日本メンバーは表情に余裕がある」と韓国メンバーに評され、先生たちからも「踊りながら笑顔を保てている」「舞台経験が多いからか失敗しても諦めない」と評されました。「今はヘタだけどレッスンしてみたい」「日本メンバーは経験してなくてできないこと以外は文句なしでした。怖いです」という言葉が先生たちから出たのもこの時です。
矢吹奈子、ぶっちぎりの1位
最初はFクラスの評価を受けたものの、Aクラスに大躍進したメンバーもいます。HKT48の矢吹奈子さんです。さらに、彼女はその後の3~4話で大きな注目を集めることになります。観客を入れての初ステージとなった「グループ評価」でのことです。
2つのグループが同じ曲を披露し、観客投票で得票数を競う場面。勝ったグループのメンバーには1000票ずつベネフィット(ボーナスポイント)が与えられます。そこで――矢吹さんがぶっちぎり1位の得票数をたたき出したのです。
評価をのばした最大のポイントは1分43秒~の高音部。ステージ収録が終わった直後から、観覧した人がSNSで矢吹さんの歌を絶賛する声が多く見られました。矢吹さんの1人勝ちによって、他のメンバーにも1000票がプラスされることとなりました。「グループ評価」においてここまでの一人勝ちは、過去シリーズでもなかなかないもの。番組ファンの間でも大きな話題となりました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「アイドルマスター」シリーズ初の「ガチすぎる演歌」はいかにして生まれたか
日本コロムビアの柏谷智浩音楽プロデューサーに聞きました。 - 「アイマス」シリーズのプロデューサーが“本業”。担当アイドルモチーフとともに現場に生きるかわさきさんの推しアクセ
「アイマス」シリーズのアイドルを応援し、プロデューサー(P)としてアイドルたちを愛するかわさきさんの推しアクセは……? - 「このまんがに、無関心な女子はいても、無関係な女子はいない」りぼん編集部異例の絶賛「さよならミニスカート」はどんな物語なのか
「この連載は、何があろうと、続けていきます」。 - 君は”ヒプマイ”を知っているか!? 女子歓喜の声優ラップバトル「ヒプノシスマイク」の魅力を徹底解説
ヒプマイとは一体なんなのか?――“ヒプマイの沼”の住人に聞きました。 - 「鳥肌たった」「久々の良MV」 休養中の松井珠理奈を絵コンテ&CGで再現 AKB新曲の“未完成”MVに波紋
宮脇咲良さんのせりふもアドリブ。