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かつてない揺れと40時間を超える停電 「平成30年北海道胆振東部地震」を体験して感じたこと

停電時に白ご飯をあたためる裏技も。

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 9月6日に発生した「平成30年北海道胆振東部地震」と、それに伴う長時間の停電を体験したので、気付いたこと・役に立った物などをまとめてみます。


地震・停電体験記 停電時に役立った物

地震発生〜6日午前中

 筆者の自宅は札幌市内の高層マンション上層階。スマホの緊急地震速報が鳴り響くのと同時に大きな揺れが発生、ガラスがぶつかる音が続きました。

 揺れが収まってみると閉まっていたはずの内窓(防寒用・カギは無い)が20〜30センチ移動しており、床の上に物が散らばっています。

 その時点で停電していたのでスマホの明かりを頼りに懐中電灯を取り出し、スリッパをはいて家の中を見て回ります。

 大きく壊れたものはないようなので、ヤカン・バケツ・バスタブなどに水をため(水量は落ちましたが、断水することはなかったです)、情報収集しながら家の中の備えを思い起こします。

主な備え

懐中電灯、キャンプ用ランタン、ヘッドランプ、ロウソク、乾電池、ソーラーキャンドル

カセットコンロ カセットボンベ数本

小型のラジオ

水(2リットルペットボトル数本)、生鮮食料品(台風が来ていたのでいつもより多め)

米、乾麺、カップ麺、モチ、乾パンなど(普段から買い置きをするタイプ)

スマホの充電:モバイルバッテリー、車の充電器


 明るくなってくると家の中の被害が徐々に判明。本棚が倒れたり、引き出しが飛び出したりしています。驚いたのは本やCDを入れてあった大型の棚が30センチくらい前に移動していたこと。ドアストッパーのネジが床から抜けてしまったところもありました。

 6時を過ぎるとニュースを見た知人や実家(関東地方です)から連絡が。特にケガなどはないことを伝えます。


地震・停電体験記 tenki.jpで発表された震度 札幌市は震度3〜5強だったようです(画像はtenki.jpのサイトから

 IHクッキングヒーターが使えないのでカセットコンロを準備。冷蔵庫にあるもので朝食をとります。

 公共交通機関はマヒし、信号も消えてしまっているので多くの会社や学校が臨時休業・休校に。スーパーやガソリンスタンドの状況はTwitterが、友人・知人の情報はFacebookが便利でした。

 エレベーターが使えないので外出がままならず、午前中は家の中の片付け。被害があった家具は向きを変え、散らばったものを安全なところに避難します。

 割れたものはありませんでしたが、停電の中でガラスなどを片付けることになったら大変。「おしゃれなビンなんて並べてる場合じゃない」と反省します。

 停電が長期戦になることを考え、お昼は冷凍庫のものを消費することに。カセットコンロと普段から使っているIH土鍋でご飯を炊き、お刺身をいただきます(後で聞いたら、牛肉やアイスクリームなど家庭によって優先順位があったようです)。

 このころからスマホの電波が怪しくなり、メールやLINEのメッセージがほとんど送れない状態に。小型のラジオが唯一の情報源となります。


6日午後〜夜

 スマホを充電したいので非常階段を使って地上へ。車で充電をしつつカーナビのテレビを見ます(駐車場には同じように充電をしている人が何人かいました)。

 外に出たついでに徒歩圏内のスーパーやコンビニをのぞきますが、開いているところは半分くらい。コンビニは長蛇の列でお弁当やパンの棚はガラガラ。大型スーパーは真っ暗な店内に列ができていました(反対側の明るいところで水や食料を売っていたとのこと。ダメになってしまうからと冷蔵・冷凍の食品を配ったスーパーもあったそうです)。

 急いで必要なものはないので何も買わずに帰宅。新聞を回収して(夕刊は紙1枚、4ページでした)非常階段を昇り、自宅に帰りつきます。


地震・停電体験記 外出時はリュックと軍手が役立ちました

 暗くなってみると、少し離れた地域は停電が解消している様子。幹線道路の信号機も復活していました。

 夕食もお刺身。ワンセグで少しだけテレビを見て、やることもないので早めに就寝します。

 あって良かったなと思ったのがフェリシモのソーラーキャンドル。やさしい明るさが常夜灯にぴったりでした(キャンプ用ランタンや懐中電灯は寝るときには明るすぎるし乾電池の減りも心配。ソーラーなら翌日また充電できるので)。


地震・停電体験記 ソーラーキャンドル 常夜灯として使いました

7日(札幌市営地下鉄・市電が運転再開

 朝起きても停電は解消せず。大きな鍋でお湯を沸かして髪と体を洗います(Facebookを見ると水風呂を浴びた人もいました)。


地震・停電体験記 浴室に設置したランタン この下にバケツや洗面器を並べると怪しい儀式のような光景になりました

 朝食を終えて外出。停電が解消した地域に向かいます。前夜見えた信号機は発電機を使ってつけていました。

 多くの人がスーパーに入っていくと思ったら、開店したばかりだったもよう。懐中電灯・乾電池のあたりが大混雑でした。

 筆者は地元の農家さんが作ったというトマト・キュウリなどを購入して帰宅しました。

 夜、出掛けていた家族がセイコーマートのおにぎりを買って帰宅(丼に入ったご飯も売っていたそうです)。イクラのしょうゆ漬けが作ってあったことを思い出し、おにぎりに乗せていただきました(道民あるあるかもしれません)。その後、停電が解消したので洗濯をしました。


8日(道内の多くの地域で停電が解消

 エレベーターが使えるようになったので、行きつけのスーパーへ。豆腐・納豆・牛乳・パン・冷凍食品の棚はスカスカでしたが、肉・魚・野菜・果物はそこそこの量と種類がありました。

 この日の夕食は冷凍してあったジンギスカン。Twitterなどで「北海道の人は停電の中でもジンギスカンをしている」と話題になっていましたが、我が家も同じようなものでした。

 筆者は札幌に住むまでバーベキューは一部の人の趣味、炭起こしは特殊技能だと思っていたのですが、道民にとってバーベキューやジンギスカンは日常の延長。海に行っても花見に行っても、炭火で肉を焼いている光景を見かけます。


9日

 ショッピングセンターの専門店街が営業を再開するというので出向きます。通路の照明は控えめで案内用の液晶画面は消されていました。アウトドア用品店はバーナーなどを買い求める人で混雑。ガスは数量制限がありました。

 飲食店は大半が準備中。ステーキ店・そば店・回転すしは営業していました。混雑していたのはドーナツ店。パン類が品薄だったので「パンがなければドーナツを食べればいいじゃない」ということになったようです。


10日(札幌市立の学校・幼稚園、一部を除き再開

 朝イチでスーパーに行き、牛乳を購入。この時間にはパン類もたくさんありましたが、夕方のぞいたら牛乳・パン・ヨーグルト・納豆は品薄に。仕事帰りに買い物をする人は困ったのではないかなと思います。


11日

 用事があったので地下鉄に乗り外出。訪ねた先(店舗兼オフィス)は電気の復旧が早く、地震の後しばらくトイレが使える充電場所として開放していたそうです。

 帰りにのぞいたパン屋さんは長蛇の列。食パン(北海道では「角食」と呼びます)を買い求める人が多かったようです。


12日

 半分しかなかったガソリンを入れにスタンドへ。週末は何時間も待ったそうですが、この時はスムーズに入れられました。

 車を出したついでに少し離れたスーパーへ。大きなスーパーにはない納豆や牛乳の在庫がありました。


15日

 延期されていた「さっぽろオータムフェスト2018」へ。時間短縮・自家発電での開催でしたが、そこそこの人出でした。


あって良かったもの

 懐中電灯・カセットコンロなどはフル活用しました。北海道はキャンプをする人が多いのか、ランタンがある家庭も多かったようです。

 食料は買い置きのものから使って、乾パンやペットボトルの水は使わずに済みました。ただ、「あれがあるから」という安心感のためにも用意しておいてよかったと思いました。


地震・停電体験記 使わなくて済んだもの(左側の乾パン・水などは非常用、右側のカップ麺やモチは日常の買い置き)

続けていてよかったこと

 東日本大震災の後から習慣になっていたのが冷水筒に水をくみ置きすること。ペットボトルの水は買い置きしてあるものの、洗顔などに使うのはもったいない、ということで週に1回ペースで中身を入れ替えていました。

 今回、筆者の自宅は断水にならずに済んだのですが、この習慣は続けていてよかったと思いました。


停電時に白ご飯をあたためたい 〜昭和生まれの知恵袋〜

 我が家はストックの都合で刺身が続いたのですが、その時に欲しくなるのが白いご飯。でも、停電時に電子レンジは使えません。そんな時に試したいのが、冷やご飯を蒸してあたためる方法です。

 鍋に水を2〜3センチ入れ、蒸し皿(100円ショップにも売っています)の上にザルなどに入れたご飯を乗せて火にかけると数分でアツアツになります(蒸し皿がない場合は、深さのある器の上にお皿を乗せても簡易蒸し器になるそうです)。

 残ったお湯はインスタントみそ汁やスープに使えば無駄もありません(熱いので取り出すときは気を付けて)。


地震・停電体験記 ザルの下に蒸し皿が隠れています

今回の地震・停電でわかったこと

 今回の地震は9月初旬だったので自宅にいる限り寒さの心配はなかったのですが、これがもし1〜2月の厳寒期だったら大変なことになっていたと思います。

 我が家の場合、キッチンはIH。暖房・給湯は灯油式ですが、こちらも電気がなければ動かず(北海道の家庭は灯油・ガスなどの熱源にかかわらず電気を併用するタイプの暖房が多いと思います)。

 水道管が凍らないようにヒーターを付けている家庭もあるので、停電になるとライフラインがマヒしてしまいます。

 備えとしてポータブルの灯油ストーブはあるのですが、ガソリンスタンドの行列を考えると地震の直後に灯油を手に入れるのは大変そうですし、非常階段を使って自宅のある階まで運ぶ自信がありません。寒くなるまでに対策を考えねばと思っています。


まとめ

 大きな地震と1日半に及ぶ停電を体験して思ったことは、それぞれの家庭に合わせた備えが必要だということ。備えがあれば非常時に買いに走ることも減りますし、被害が大きい地域に物資を回してもらうことができます。

 我が家の場合、停電中のネックになったのはエレベーターが使えないこと(この部屋を選んだ時から分かっていたリスクなのですが)。

 次に大きな停電があった時は、なるべく自宅から出ずに過ごせるような工夫をしなければと思い、通信販売でソーラーパネルのスマホ充電器を購入しました(注文後数日で届いたので物流も回復しつつあると思います)。

 まだ避難生活を送っている方もいますが、観光に支障がない地域も多くあります。すぐに元のようになるのは難しいと思いますが、道内に住む人などが積極的に動くことも支援の1つだと考えています。


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