6年ぶりに再会したかつての恋人同士を描いた短編作品「鯖とコーヒー」を、漫画家の奥香織(@okukaori1124)さんがTwitterで公開しました。2人の距離感を、絶妙な“間”で描いています。
「長い間待たせてごめん」と健治が訪れたのは、昔ながらの静かな喫茶店。奈央子は長らくの疎遠をとがめずに、会えて良かったと再会を喜んでいます。そんななか、健治が言いよどみながら口にした言葉は、「婚約おめでとう」。奈央子は一瞬、複雑な思いを表情に見せながら、元恋人からの祝福を受け入れました。
少々気まずい空気が流れたとき、奈央子が注文していた、サバの塩焼きとブレンドコーヒーを店員が持ってきました。不思議な組み合わせながら、彼女にとっては昔からのお気に入りの様子。これをサカナに、2人は交際していた6年前の思い出を語り合います。
すると突然、健治は「おれたちが付き合っていたことを、ヒロムは知っているのか」と問います。奈央子と婚約者のヒロムは、健治も一緒のサークル仲間だったのです。しかし奈央子は「もう昔のことだから」と話題を打ち切り、2人の別れを振り返ります。
実は6年前、健治はエベレストの単独登頂に挑戦していました。そしてそのころ、奈央子は彼の子どもを身ごもり、流産していたのです。重大な事実を初めて知らされ、健治はうろたえることに。
「私だって健治を待てなかった。結局、合わなかったのね」と別れた要因を語る奈央子に、健治は反論。自分は登頂を成功させて日本に帰ったらプロポーズするつもりだったと告白します。ただし、「滑落するその瞬間まで」は……!? では、ここに無事でいる健治は何者なのか。
健治はあらためて、「おれと一緒に来てくれよ」と告白しますが、奈央子の返事は「無理よ」。現実を受け入れた健治は、「一度くらいサバとコーヒーを一緒に食っとけばよかった」と語りながら、奈央子の幸せを願うのでした。
「ありがとう。健治もゆっくり眠ってねー……」と、奈央子が言った先には誰もおらず、コーヒーが湯気を立てるのみ。彼女はヒロムからの着信を受けると、「健治の遺体が“昨日”発見された」ことを伝えるのでした。つまり、奈央子は喫茶店に、ずっと1人でいたのです。きっと、健治への思いを整理するために、脳内に彼を描きながら。
微細なタッチで男女の機微を描き、意外なラストで重い読後感をもたらしたこの漫画。作者は「やわらかスピリッツ」にて、「ゼロから始める事故物件生活」を連載中です。
(沓澤真二)
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