オタクの思いを童話風に描く、「#コミケ童話」シリーズの最新作がTwitterで公開されました。今回は「アラジンと魔法のランプ」の「ランプの精」を、「絵に関する願いだけを取り扱う魔神」に翻案。呼び出した漫画家は、何を願うでしょうか。
「絵の魔神」パート1
主人公の漫画家が使い古したペンタブをふいていると、ケーブル端子から大きな魔神が登場。実は主人公が買ったときからペンタブに潜んでいたのですが、6年経って初めて掃除されたことで、ようやく外に出られたのです。ズボラすぎるわあ。
1つだけ願いをかなえてくれると言われ、主人公はすぐさま「5億円ください」「部屋を永久にきれいな状態に」などと頼みますが、いずれも却下。なにぶん「絵の魔神」なので、絵に関連する願いしか受け付けないというのです。
魔神は「画力を上げたい」や「面白い漫画のストーリーが欲しい」といった願いはどうかと、過去に受けた願いを例に提案。しかし主人公は、「自分の実力でないことをほめられても欲求が満たされないから」と断ります。魔神は「難儀な人だ」と困り気味ですが、主人公の気持ちも分かる。
話が行き詰まったところで、ふと主人公が「願いをかなえたあと魔神はどうなるのか」と聞くと、また別の画材に移るとの返答。かつては遺跡の中で、300年以上も出土を待ったこともあるといいます。
それを聞いてかわいそうに思ったのか、主人公は「魔神を自由にする」と願うことに決定。意外な言葉にとまどう魔神へ、「代わりに自分のアシスタントになってほしい」と頼みます。そういう手もあるか。
主人公の意図をようやく理解した魔神は大喜び。「主人公が念じればいつでも駆けつけて、部屋掃除でも買い出しでも何でも手伝う」と約束し、「ルーブル! オルセー!」と叫びながらノリノリで飛び去っていきました。絵の魔神なのに美術館にも行けないのが、相当苦しかったんでしょうね……。読者からは「魔神さんが幸せそうでこっちまで笑顔に」「たった1つの願いを相手の自由のために使う主人公がステキ」といった感想が寄せられていました。
「絵の魔神」パート2
続けて公開されたパート2では、その後の2人の暮らしが描かれました。魔神のおかげで主人公は毎週優良入稿。魔神も「何年も身動きできない状態から脱却できただけで、一生尽くしても足りない」と、互いに感謝し合う日々を送っています。
入稿後の雑談中、話題は過去に魔神が願いをかなえた人物に。主人公は「偉人やプロの先生になっているのか」と想像していますが、魔神はもともとプロだった人の願いをかなえたことはあるものの、「私の力で素人からプロになった人はほぼいない」としています。画力だけが上がっても、想像力や見せ方が向上するわけではないですし、面白い漫画の原案をもらっても、形にできるかは本人の実力次第ですからね……。絵の世界は厳しい。
そこから、魔神は「もしあのとき私のためでなく、自身のために願うとしたら何を望んだか」と質問。主人公は「想像したポーズへ自動的に変わるデッサン人形」などと、作画の助けになる物を想像します。すると魔神は、「それくらいなら私がやりますよ」と進言。作画参考用のポーズをとるのもアシスタントの仕事とは聞きますが、魔神の大柄な体格では参考にしにくいような……?
ところが、さすがは魔神。老若男女を選ばず、自由に体型を変える能力があり、試しに美女へ変身してみせます。女性に不慣れな主人公は、それを見て「戻って! 戻って!」と大慌て。「ほれたらどうするんだバカ!」「こんなっ狭い部屋に! 急にそんな現れたら駄目! おおっおかしくなる!(原文ママ)」と、大いにうろたえてしまいます。
その後もあらためて女性化した魔神を見て、「だめだーーっ! いや! だめじゃなさすぎてだめだぁ〜〜!」と動揺しっぱなし。主人公はやっとのことで落ち着くと、魔神に冬コミでの売り子をお願いするのでした。関係性に波乱が起きたような気もしますが、仲が良さそうでなによりです。
おのでらさん(@onoderasan001)が手がけるコミケ童話シリーズは、『コミケ童話全集』として書籍化されています。第2巻が11月8日に発売予定で、「絵の魔神」も収録されます。
(沓澤真二)
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