1. もともと「郵便=赤」のイメージがあった
そもそもポストや「〒」マークができる以前から、人々の間で「郵便といえば赤」という認識が広がっていたのではないか、という説です。例えば、日本で郵便事業が創業された当時の配達員の制服には、赤いししゅうがつけられていました。
明治時代に最初に作られた郵便のマークは赤色だったのです。このマークがなぜ赤色だったのかも、やはりよく分かっていません。「江戸時代の飛脚が赤いふんどしをつけていた」などの事実はありますが、郵便のマークとの関連は示されていません。
ともあれ、逓信省の職員が「逓信省のマークは赤」ということから、ポストの設計を依頼する際に「赤くしよう」と伝えたということが、まず1つ考えられます。
2. イギリスの赤いポストをまねた
日本の郵便制度は、イギリスに留学した前島密が中心となって整えました。前島がイギリスで見た赤色のポストを模倣して、逓信省が赤を指定した、とも考えられます。
ちなみに、フランスやドイツなど、ヨーロッパの大陸側の国々の多くは黄色いポストを設置しています。これは、「16〜18世紀ごろに郵便を独占した豪族・タキシス家が使った、プロイセン王家の紋章にあった黄色」に由来するとか、「郵便の使者が通ることを知らせたホルンの色」に由来するといった説があります。その他にも、世界各国でさまざまな色のポストが使われています。
おわりに
というわけで、逓信省の職員は、何らかの理由で赤色で設計するように依頼。試験設置の結果がよかったので、「見やすい」という理由をつけて正式採用した、というのが推測される流れです。もちろん、初めから「赤色にすれば見やすいんじゃないか?」という発想があったのかもしれません。
東京スカイツリーと直結している「東京ソラマチ」には、「郵政博物館」という郵便の歴史をたどる施設があります。この記事内で紹介している写真は、そこで撮影したものです。歴代のポストや世界各国の切手など、貴重な資料がたくさん展示されているので、興味のある方はぜひ訪問してみてください。
参考文献
井上卓朗(2016)「最初の公式鋳鉄製赤色円筒形郵便柱箱ー回転式ポストとその改良についてー」通信文化協会博物館部『郵政博物館 研究紀要 第7号』76-88頁
郵政博物館『郵便ポストの移り変わり 〜日本最初のポストから現在のポストまで〜』
井上恵子(2003)「学芸員雑記帳 「〒」マークについて」総務省郵政研究所『郵政研究所月報 第16巻第2号 通巻173号』
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