クラウドファンディングサイト「Makuake」で、約6000万円(5841人)の支援を集めた“360度電動歯ブラシ&ホワイトニング”製品「V-WHITE+」について、支援者から「届いた製品が旧タイプではないか」「機能性に問題がある」などの声があがり、トラブルとなっています。支援者とクラウドファンディングのプラットフォーマーであるMakuakeを取材しました。
「口にいれて、10秒歯磨き」のキャッチコピーでクラウドファンディングを行っていた360度電動歯ブラシ&ホワイトニング製品「V-WHITE+」。くわえるだけで歯磨きができるという手軽さや「冷光ホワイトニング」と呼ばれるホワイトニングの手法を使うことにより、自宅でもホワイトニングができると話題を呼び、プロジェクト達成率1万9879%と驚異的な数字をたたき出しました。
しかし支援者らに製品が到着すると、「届いたのは旧製品」「10秒どころか5分でも効果なし」「誇大広告のため、返品をします」といった不満のコメントが噴出している様子。ねとらぼ編集部では支援者の一人に詳しい話を聞きました。
「奥歯まで届かない」 支援者の怒り
Aさんは、V-WHITE+のコアユニットが1つ、マウスピースが2つ、充電器というセットを定価の40%オフで手に入れられる、9900円のコースを支援した1人。到着した製品のパッケージを見て違和感を覚えたといいます。
――製品のパッケージを見てどう感じましたか。
Aさん:パッケージに書かれた中国語を見て「中国製品なの?」というのが第一印象でした。自分の読み込みが甘かったのですが、日本製品だと思っていたので驚きました。またパッケージには「V-WHITE+」ではなく、旧製品の「V-WHITE」の名前が書いてあったので、これはやられたなと思いました。
――中国製品でも性能の良いものはありますが、他にも気になる点はありましたか。
Aさん:そもそも製品の納品は2018年11月末までにお届けとアナウンスされていたんです。それなのに1カ月も早い10月に商品が届いたのが不思議でした。旧製品だから1カ月も早く準備できたのかなと思いました。
――商品の使用感についてはいかがですか。
Aさん:基本的にはブルブルと振動する本体にシリコン製のマウスピースのようなものがついているだけなので、一般的な歯磨きができているようには思いません。「口にいれて、10秒歯磨き」というキャッチコピーにひかれて購入しましたが、10秒ではとても磨けませんし、そもそも奥歯までマウスピースが届きません。誇大広告だなと思いました。
――ホワイトニングの部分についてはいかがですか。
Aさん:冷光ホワイトニングができるという青い光が本体から出ているとのことですが、見た目にはただまぶしい光がでているだけで、今のところは効果を確認できていません。
――今回のクラウドファンディングを経て、今はどのように感じておられますか。
Aさん:クラウドファンディングの特性というのは、私も理解しているつもりです。しかし今回のプロジェクトについて調べてみると、海外のクラウドファンディングサイトでトラブルを起こした製品をそのまま日本に持ってきているような感じで、Makuake側がきちんと審査を行ったのかは疑問です。またNHKの情報番組「おはBiz」で同製品が取り上げられた際には、Makuakeの女性社員が出演して同製品の性能をアピールしていました。プロジェクト実行者ではなく、Makuakeの社員が「しっかり磨けます」というような宣伝をしていたのは問題ではないでしょうか。今回のプロジェクトについては批判の声も多く、返金を求めている人も多いのですが、多くは放置されています。プロジェクト実行者やMakuakeにはきちんとした対応を取っていただきたいです。
Aさんの取材内容を踏まえ、Makuakeにもお話を聞いてみました。
「10秒歯磨き」「ホワイトニング」の根拠となる具体的なデータは……?
――今回のプロジェクトの展開について時系列で教えてください。
Makuake:本プロジェクトには、製品の製作会社、販売代理店、クラウドファンディング代行会社の3社が間に入っています。今回はビニール・クリエイティブ・メディアというクラウドファンディング代行会社から2018年6月ごろに相談を受けて6月28日からプロジェクトを開始し、8月10日までクラウドファンディングを行いました。
――製品の到着後は不満の声も上がっているようですが。
Makuake:Makuakeとしても把握しています。主には使用感などについてのお声を頂戴していますが、当初11月末までに到着予定とお伝えしていたリターンが10月にお届け可能となり、納期が1カ月早まったことも逆に不安をあおる要素となってしまったようです。
――中には「旧製品が届いた」という声もありますね。
Makuake:パッケージのデザインに不足があり、一見旧製品の「V-WHITE」かのような誤解を与えてしまっておりました。この点はプロジェクト実行者の落ち度であり弊社としても、実行者に指摘をしており、今後こういった事が起きぬような体制も社内で見直しています。しかし、今回パッケージに不足はあったものの、中に入っている製品は間違いなく「V-WHITE+」です。旧製品と新製品ではシリコンの形状が違うので、見比べていただくとよく分かると思います。
――プロジェクトの審査についてはどのように行いましたか。
Makuake:海外でのクラウドファンディング実績については把握していましたが、旧製品から新製品に変わるとどのように性能が向上するのか、製品の生産力はあるかなどを確認しました。またPSEの取得申請を行ってること等を総合的に判断してプロジェクトの実行を進めました。詳細の審査内容は非公開となっております。
――Makuakeとして製品の性能を第三者機関や歯科医等に調べてもらったということはありますか。
Makuake:あくまでもプロジェクト実行者の責任でプロジェクトを遂行していただくということになっています。そのため歯科医等の監修は入っておりません。
――NHKの番組では、Makuakeの女性社員が商品をPRしていました。こうした宣伝法について批判の声もあるようです。
Makuake:NHKから本製品について取り上げたいと取材依頼の連絡があり、Makuakeとしてプロジェクト実行者に出演していただくのが一番いいと考えていましたが、実行者は中国におり、来日は難しかったため弊社の社員が出演することとなりました。プロジェクトのキュレーターで歯科衛生に興味を持っている社員に出演してもらいました。放送はクラウドファンディング終了後でしたので、弊社としては製品紹介の意図でした。弊社としては、他プロジェクトに関しても同様にいろいろなメディア様にご紹介を差し上げており本製品だけを特別に紹介しているというわけではありません。
――番組内ではしっかり磨けているという旨のコメントも見受けられましたが、製品の使用感についてもチェックされましたか。
Makuake:もちろん使用感も確認しました。ただ使用感については本当に個人差が大きく、弊社では磨けていると判断したのですが、一部のお客さまからは予想していた使用感と異なるという意見をいただいています。しかし、同時にしっかり磨けているという発信をSNSでされている支援者もおりました。
――私も実際に製品を使用させていただきましたが、これは使用感に対する反応が分かれる製品だと感じました。先ほど「一部の顧客から」という言葉がありましたが、実際には何人ぐらいの方から連絡が来ているのでしょうか。
Makuake:5847人中約150人のお客さまからご意見を頂戴しております。
――返金対応を求めている人たちにはどういった対応がなされるのでしょうか。
Makuake:実行者からは「最悪の場合、全員から返金対応を求められたとしても返金に応じたい」との意見を聞いており、順次PayPalを利用して返金に対応しています。当初は実行者側の手違いで手数料を考慮できていませんでしたが、現在は手数料を含んだ金額での対応をしており、弊社も協力した上で手数料の支払いがなされていなかった方をリスト化して手数料を含めた返金対応にあたっています。
クラウドファンディングならではともいえる今回のトラブル。製品の性能やプロジェクト実行者の情報についてはよく調べた上で、参加することが重要です。
(Kikka)
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