「艦これAC」vs「アビス・ホライズン」いまだ食い違う双方の主張 セガは「和解を提案した事実はなく、誠に遺憾」
「艦これAC」側の発表により一時は決着したかに見えましたが……。
セガ・インタラクティブら2社が、スマートフォン用ゲーム「アビス・ホライズン」の配信差し止めを求めて争っていた件で、両者が発表したコメントを巡り、ユーザー間に混乱が広がっています。セガら側は編集部の取材に対し、いまだ係争中のため詳細な回答は差し控えたいとしつつも、「アビス・ホライズン」側の一連の対応について「誠に遺憾に思います」とコメントしました。
昨年7月、MorningTec Japanが運営するゲーム「アビス・ホライズン」が、アーケードゲーム「艦これアーケード(艦これAC)」の権利を侵害しているとして、セガら2社が東京地方裁判所に対し「アビス・ホライズン」の配信差し止めを求める仮処分申立てを行ったのがそもそもの発端。その後、1月11日にセガら側は、「アビス・ホライズン」側から運営撤退の告知があったとして、「当初目的を達成した」と申立ての取り下げを表明。ところがその直後「アビス・ホライズン」側は、セガら側が申立てを取り下げるため引き続きサービスを継続すると発表しており、現状では双方の意見が大きく食い違った状態となっています。
これまでに双方から発表された内容をまとめると、以下のようになります。
「艦これAC」側(1月11日発表)
- 2018年12月19日に東京地方裁判所で行われた審尋期日において、MorningTec Japanから、2018年12月31日をもって「アビス・ホライズン」の配信/運営から撤退するとの告知があり、申立ての当初目的を達成したと判断。
- 実際に撤退したことが確認でき次第、申立てを取り下げる予定。
「アビス・ホライズン」側(1月11日発表、その後13日に詳細追加)
- セガら側が自ら申立てを取り下げる予定であると発表したため、今後もサービスは継続する。これまでの経緯は以下の通り。
- 2018年12月4日にセガらからMorningTec Japanに対し、「19日に和解協議を行いたい」との申し入れがあり、7日にこれを了承。
- また13日に「アビス・ホライズン」の開発会社である「重慶ユゥ顔文化傳播有限責任公司(以下、ユゥ顔(ユゥイェン))」から運営権限移譲の要請があった。
- 19日の審尋期日でセガらに対し、今後はユゥ顔が配信を継続すると説明 → 2019年1月11日にセガらが申立て取り下げを発表。
- 運営移譲についてユーザーに発表(1月13日)。2018年12月31日付で「アビス・ホライズン」はユゥ顔に譲渡済みで、今後もユゥ顔のもと配信は継続する。利用規約などは1月末の大型アップデートとともに更新を行う予定。
現状では「アビス・ホライズン」側の方が経緯について詳細に発表していますが、双方の発表が全て事実であるなら、「アビス・ホライズン」側はサービス継続についてセガら側に伝えており、セガら側はそれを了承したうえで申立ての取り下げ(予定)を発表したことになります。
ただ、セガら側は当初あくまで「配信停止」を求めていたはずで、運営元が変わっただけで「目的を達成」といえるのかはやや疑問も残ります。またセガら側は現状「実際に撤退したことが確認でき次第、申立てを取り下げる」としており、今後の状況次第では「申立てを取り下げない」、あるいは「ユゥ顔に対し同様の申立てを行う」といった可能性も考えられます。
双方の発表に間違いはないのか、MorningTecおよびセガ・インタラクティブにそれぞれコメントを求めたところ、次のような回答がありました。
MorningTecからの回答
―― 和解協議を持ちかけたのはセガら側からで間違いありませんか。
MorningTec:はい、間違いありません。12月19日の裁判期日に和解協議を行いたいと持ちかけてきたのは、当社ではなく、セガら側です。
―― 19日の審尋期日の中で、「アビス・ホライズン」の配信継続についてセガら側に間違いなく説明していましたか。
MorningTec:はい、MorningTec Japanは12月末まで運営を行う。1月以後は開発会社が直接運営を継続する予定である、と説明しました。
―― 今回の運営移譲はあくまで開発会社側からの提案であり、係争とは無関係という認識で間違いないでしょうか。
MorningTec:その通りです。当社は、開発会社(ユゥ顔)から、仮処分とは無関係にアビス・ホライズンの運営権限を移譲するように求められたので、弊社の上層部がその提案に同意しました。
―― 12月31日運営を移譲したとありましたが、すぐにユーザーに告知しなかったのはなぜですか。
MorningTec:契約上では12月31日付での移譲ですが、サーバー変更、アカウントシステムの変更、ゲーム内の社名変更、カスタマーサポートを始めとする運営業務の引き継ぎなど、全ての移譲作業が完了するのは1月末の予定です。そのため、当社としては、その移譲作業スケジュールも踏まえて、適切なタイミングで告知を行う予定でした。
しかし、セガが仮処分取下げ予定の発表を行ったので、ユーザーの皆様にできるだけ早く詳しい情報をお伝えする必要が生じて、急遽、今回のタイミングで発表することになりました。
―― 運営会社が変わることで、今後ユーザーにとって何か影響はありますか。
MorningTec:当社としては、ユーザーの皆様に混乱が生じないようにしたいと考えており、開発会社に対してスムーズに運営を移行するため、できるだけ協力するつもりです。
セガ・インタラクティブからの回答
セガ:本件は、仮処分命令申立ての取下げ前でありいまだ係争中であることから案件の内容についての詳細な回答は差し控えたいと思います。
ただし、MorningTec Japan株式会社が2019年1月13日の「裁判のご報告とアビス・ホライズン配信継続のお知らせ」において、弊社から「12月19日に和解協議を行いたいとの申し入れ」があったと指摘していますが、もともと和解の意向自体はMorningTec側から伝えられたもので、弊社らから和解を提案した事実はありません。代理人同士の和解協議を進める意向を示しておきながら、突如一方的な撤退を告知するという相手方の対応は誠に遺憾に思います。
MorningTecによれば、和解協議を持ちかけたのはセガら側であり、また配信継続についても間違いなく説明していたとのこと。さらに、運営移譲は開発会社側からの要求であり、今回の係争とは無関係とも説明しました。
しかし、セガ・インタラクティブに同様の質問を送ったところ、大部分の質問についてはいまだ係争中であることから回答は差し控えたいとしつつも、少なくともMorningTecの発表にあった「セガ側から和解協議の申し入れがあった」という点については、和解の意向はもともとMorningTec側から伝えられたもので、セガ側から和解を提案した事実はなかったと反論。また、和解協議の意向を示しておきながら、一方的に撤退を告知したMorningTecの対応については「誠に遺憾に思います」ともコメントしました。
「艦これAC」側の発表により一時は決着したかに見えた今回の係争ですが、その後の「アビス・ホライズン」側の発表を受け、ネット上では「これは『艦これAC』の勝利なの?」「実質セガらの負けだよね」とむしろますます混乱が広がっているのが現状。一部では「艦これAC」側の対応について「裁判で勝てないと思ったからこれで妥協したのでは」と推測する声や、「アビス・ホライズン」に対し「配信会社を変えてごまかそうとしている」と批判する声なども飛び交っており、それぞれのユーザーの間にも対立の空気が広がっています。
結局、両者の主張の食い違いについては解決しないまま、セガら側は「セガから和解を提案した事実はない」と主張、MorningTec側は「和解協議を持ちかけたのはセガ側」と主張するなど、新たな食い違いが増えてしまった今回の係争。まだまだ事実関係が不明な点も多く、今後の両者の動きに注目が集まります。
【1月22日12時追記】一部、誤解を招く表現がありましたので本文を訂正しました
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