少しのホラーと哀情(あいじょう)が胸を突く“黒猫”が登場する創作ショート漫画『化物の愛は届かない』が、「涙が出てきた」「エモすぎる」とさまざまな反響を呼んでいます。まずは一度読んでみてほしい。
登場人物は、恋人の桜を亡くした一人暮らしの青年、高山聖(ひじり)と、その彼女が生前飼っていた黒い猫、ホムラ。お葬式から1カ月経っても聖の心の傷は癒えず、喉に違和感があると言ってご飯も食べずにゲッソリとしていました。そんな日々のある夜、変わり果てた彼女がやってきます……。
彼女の置き土産であるホムラと、写真立てに飾られた笑顔の桜に顔を寄せ「おやすみ」のあいさつをして眠りにつく聖。すると、彼の名前を呼びながら女性の霊がやってきて、長い髪で彼の首を絞めます。それは妄執にとらわれ化物となった桜の姿。そして同時に黒猫が「――人間ってやつは全く、死んでもなお執着するとは醜いものね」とスラスラとしゃべり出します。
「化物の愛なんて誰にも届かない」。恐ろしい姿となった桜に対してホムラは戒めの言葉を掛けますが、返ってきたのは「うるさい バケモノ」の言葉。それに寂しそうな相づちを打ったホムラは「お仲間ね」と言い、猫ではない“恐ろしく巨大な口”を開け、彼女に向かって跳ぶのでした。
化物の愛は届かない――元飼い主に拒絶され、さらに自らの手で彼女を終わらせたホムラ。「さよなら」を言う“バケモノ”の目からは涙がこぼれていました。
朝起きると体が軽くなっていた聖は、悪い夢を見たとホムラに話しかけます。髪の長い化物にどこかへ連れて行かれそうになったこと、そこに来た猫の身体が裂けてその化物を食べ出したこと。「超怖かったぁ…」と振り返る聖にホムラは目を伏せますが、「そのあとの猫苦しそうだったんだよね。腹壊したのか知らないけど、なんか可哀想になっちゃって…」と話す彼に、ホムラは聞こえないくらいの声で“言葉”を返し、「……なぁご」と鳴いて、影で寄り添い涙を流すのでした。
作者は、ガンガンpixivで学園コメディー漫画『おとぎの孫』を連載中の漫画家・澄谷ゼニコ(@bloooom25)さん。全11ページの『化物の愛は届かない』は澄谷さんのpixivでも公開され、読み終わった後に意味が分かってじんとくる「少し胸が痛かっただけ」というセリフがキャプションとして添えられています。これは何度も読み返したくなる。
Twitterのコメントでは「切ない」「静かに泣けた……」と心を揺り動かされた人の声が多く寄せられ、他にもタイトルやセリフを考察する声、そして「読んで欲しい」という声ともに拡散され話題になっています。
画像提供:澄谷ゼニコ(@bloooom25)さん
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