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なぜコインハイブ「だけ」が標的に 警察の強引な捜査、受験前に検挙された少年が語る法の未整備への不満(3/3 ページ)

検挙された少年が当時の状況や「Coinhive事件」の問題点について語ってくれました。

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――Coinhive事件では、情報提供者さんを含め複数人が一挙に検挙されました。中でもフリーランスWebデザイナーのモロさんは、罰金10万円の略式命令を受けましたが、これに異議を申し立てて刑事裁判が進行中です。これについてはどう見ていますか。

少年高木先生が証人尋問に立たれた際には、私も実際に横浜地方裁判所に足を運んだり、別の期日では知人に頼んで裁判の傍聴記録を作ってもらったりと注目しています。今回は当事者側に立っていますが、もし私が当事者ではなかったとしても本件については注目していたと思います。

――当事者として、Coinhive事件に対する疑問点はありますか。

少年法解釈や検挙理由については大いに疑問です。そもそも「利用者の意図」というプログラムの開発・公開側では制御も把握もできないような曖昧なものが要件になっているような国は日本以外にないと思います。許可・明示があれば良かったのでしょうが、当時も今もJavaScriptの動作に許可や明示をしている・求めている様なサイト・サービスはGoogle Analytics以外ほとんど見かけず、そのGoogle Analyticsですら明示する事を忘れているサイトを多々見かけます。もっとも今回の捜査に関わった各県警のウェブサイトにすら明示がされていないという話もあります。

 そんな中で、一般のJavaScriptで作成されたサービスと同様であるはずのCoinhiveについて「導入には許可・明示を求めなければいけない、さもなくばそれは不正指令であり違法だ」という事をどうやって判断できたのかは疑問に思っています。

 また「不正」という要件は、そのプログラムが社会的に許容しえるものであるか否かが問われますが、Coinhiveが誕生した直後であった当時の私たちが、「好意的な評価も少なからずあったCoinhiveが、将来どの様な社会的評価を受ける事になるか」の未来予知を行う事は、不可能であったと思っています。大げさに言えば、新しい概念が含まれるサービスが登場した時は、他国の人やリスクを冒してまで使い始める人を待ち、社会的な評価が安定してから使うという風にすれば良いのでしょうか。この点もどの様にすればよかったのか疑問に思っている点の一つです。

 究極的には、どの様なプログラムが不正指令に該当するのか、明示しなければいけない基準は何かというのがわかるように該当法令の解釈を細かく明示して欲しいです。モロさんの裁判も処分の結果はどうであれ、今後JavaScriptを動かすには明示や許可が必要である、という可能性が明確に否定またはその基準がはっきりと提示される様な物となること、くれぐれも明示すべき基準等で曖昧な要件が更に増えるようなことが無いように願っています。

――最後に本件を経て感じたこと、伝えたいことを教えてください。

少年私たちは「Coinhiveを試した」というだけで前科・前歴がついてしまいました。略式の罰金でも審判不開始決定でも済んだものはもう元に戻せません。それにモロさんのケースでは警察がHTMLの「head」と「header」を混同していたり、私のケースでも警察官が当時のCoinhiveの機能について明らかに間違った知識で調べに臨んでいたりしました。特に前者はオーストリアとオーストラリア、インドとインドネシアを勘違いしているようなものです。そうした誤った知識を共有した状態で被疑者の話や知識を否定する姿勢のサイバー課には驚きを禁じえませんでした。私のケースではあまり本筋とは関係ない部分での間違いであり、また証拠を持参して指摘したら納得してもらえましたが、もしこれが重要な点での間違いであったとしたらと思うと少し恐ろしいです。

 今回、自分でもどうやればこの事件を回避できたのかの判断がはっきりとはついておらず、そもそもCoinhiveが意図に反しているのか、不正指令であるのかという点に関しても判決が待たれる所ですが、ひとまず私の件は終結しました。私に関する処分が決定した際には、半年ぶりに息継ぎをしたような気分でした。しかしながらモロさんは家宅捜索の翌週に結婚式、私は受験直前という人生においてとても重要なタイミングでの検挙でしたので、今回の事件によって人生に大きな傷跡が残ったということは本当に残念です。

 一時期は気が落ち込んで、情報関係の活動をやる気力も失せてしまっていたのですが、やっと気持ちが元に戻ってきたので、今後も気を付けながら引き続き情報の分野を学んでいきたいと思います。また私自身、趣味ではありますが興味のある法律、政治、歴史分野の調べもので、さまざまな記録が残っている事でとても勉強になったことがありました。この事から裁判の記録など、Coinhiveに関する記録を公開する活動をしているのですが、今後ともそれらの記録をネット上にアーカイブとして残せたらと考えています。


コインハイブ Coinhive コインハイブ事件の年表2017年版(coinhiveuser.github.ioより引用)

コインハイブ Coinhive コインハイブ事件の年表2018年版(coinhiveuser.github.ioより引用)


 モロさんの裁判は2月18日に最終弁論、3月ごろに判決が予定されており、こちらの展開にも注目が集まっています。Webには広告トラッキング機能のように、Coinhiveと同様、ユーザーから一見して設置されているかどうか見極めにくい収益目的の技術もありますが、そういったものは違法とされていません。時代に沿った法整備と明確な解釈の明示が急がれます。

(Kikka)

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