あなたの利き手はどちらの手でしょうか?
おそらく、多くの方は「右手(右利き)」とお答えになるかと思います。なぜそう言い切れるかというと、全人類のおよそ9割は右利きであるといわれているからです。
では、なぜ人類には右利きが多いのでしょうか?
言葉を獲得したことで、右手を動かす左脳が発達
現在有力とされているのは「利き手が言語能力と関連している」とする説です。
多くの人の脳で、言語能力を扱う部分がより発達しているのは左半分(左脳)です。そして、左脳は体の右半分の運動を支配しています。これが、人類に右利きが多いことに関連している、というのです。
先ほど「人類の9割は右利き」と述べましたが、今から約6万年前には既にこの比率になっていたとされます。そして、人類が言語を獲得したのも、同じく約6万年前。
言語能力を獲得して脳の左右差が生まれたことで、右利きが多数派になった、というわけです。
左脳は言葉だけじゃなく、細かいこと全般に向いている
ところで、「左脳は理屈を、右脳は直感をつかさどる」というような話を耳にしたことがある方も多いかと思います。
その通り、人間の左脳は言語のみならず、計算や論理など細かいことを詳しく扱う部分が発達し、右脳は比較的大ざっぱにイメージをつかむ部分が発達しているといわれています。
人間の手というのは、非常に細かく精密な動作を行うことを求められる器官です。したがって、より細かい動作(文字を書く、ボールを投げるなど)に適するのは左脳、すなわち右手ということになります。
一方、左利きの人は生まれつきこの左右差が小さく、言語を使う部分が右脳でもある程度発達していることが多いとされています。
遺伝の影響も考えられる
こういった左右差の決定には、やはり遺伝子の影響が考えられます。具体的にはPCSK6やLRRTM1などの遺伝子が関係していると考えられていますが、まだ研究途中の段階で、明確な答えは出ていません。
レオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ、優れた能力を発揮した左利きの天才は歴史上に数多くいます。左利きの脳には、右利きの脳とは違った得意分野があります。このことが、少数派である「左利き」が進化の過程で消滅しなかった理由かもしれません。
参考文献
久保田競『手と脳 増補改訂版』紀伊國屋書店(2010年)
バイオメカニズム学会『手の百科事典』朝倉書店(2017年)
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