恋愛は告白した方が負け! 「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」(原作/アニメ)は、相手から自分に告白させるためにあらゆる知力体力を用いて戦うエリートたちを描いたラブコメディー。とっても愛しくてとっても面倒くさい少年少女の、青春の無駄遣い物語。
「好き」ってどんな感覚なんだろう
財閥の令嬢にして生徒会副会長、四宮(しのみや)かぐや。努力家の生徒会会長、白銀御行(しろがね・みゆき)。2人は自らの意地とプライドにかけて、自らは告白しない、相手に告白させる、と心に決めて戦い続けている間柄。
全く恋愛経験のない2人。でも整った容姿と才能ゆえに、経験豊富だと思われがち。2話では御行が男子生徒に告白の相談を持ちかけられ、よくわからないまま勢いで壁ドンもどきを伝授。なぜか成功、カップルが誕生しました。
今回はそこで付き合い始めた彼女側から、かぐやへの相談。内容は「円満に彼氏と別れる方法が知りたいんです」。重いよ。
かぐやが考えたのは、相手の良い所を認識することで、自分が本当に相手を好きなのか確認するというもの。意外とまっとうでした。
かぐやが「好き」を考えたときの解答でもあります。彼女は好きな人のことを考えると、良い所がどんどんわいて出てきてしまうから。
かぐやはどうにも、恋愛関係の話をしていると自分の「会長が好き」の思いにシンクロしてしまって、気持ちがダダ漏れになりがち。
目付きの話題になった時も「違うのっ! 目付き悪いのを気にしてる所がかわいいの!!」と反論するかぐや。会長の話をしていない、という意識がスポーンと抜けてしまう。なお目付きについては、彼女の「フェチズム」の部分として原作でさらに語られています。
かぐやは恋愛の話を、自分に仕えている早坂以外に話したことがありません。学校での恋バナ体験は皆無です。そこに引け目を感じていることはないですが、「話したい」思いはどこかしらある。だからなのか、恋愛の話になると、隠しているつもりの自分語りが混じってしまう。
感受性自体は豊かな彼女、今はそれをあらわにするのを抑え込まれている部分があるけれども、御行のことを話す時に押さえきれず、彼女の顔は赤らみ、ほころんでいきます。
これが、恋なんだなあ。
それに対して、恋バナさせろと言わんばかりに踏み込んでくるのが、藤原書記。自称ラブ探偵チカ。
大変ふざけた格好なんだけれども、恐ろしいことに彼女の言うこと、割と的を射ていました。
相手がほかの女とイチャコラしている所を想像してみる。その時わいた感情が相手への好意の指標になる。
これがかぐやにクリティカルヒット。会長と藤原書記がいちゃついている様子を想像して、マジギレ。あなた一応、藤原書記の友人でしょう。
藤原書記がこの回で起こしたまともな助言と、ミラクルな解決策。結果、別れ際だったカップルは修復されました。
もっとも藤原書記も、恋愛経験豊富だとは描かれていません。結構モテるらしいけど断っているらしい。ただ、彼女は最強レベルのコミュニケーションモンスター。人と人との関係を、自分のフィールドに巻き込んで解決していく。この術は、テクニックではなく経験として身体が覚えているようです。
それに対して、かぐやは現時点では、会長を中心とした生徒会メンツ(というか御行)しか見えていません。生徒に対して公平に手助けしようとはしているようですが、御行へのひいきはちらほら見える。
でもその特別扱いですら不器用。経験不足で視野が狭く、家庭環境のせいで動きが取れない。モヤモヤを抱える彼女が御行から、ポジティブに物事を考えることを学んで、成長していくのも、この作品の魅力。
「好き」とはどういう気持ちなのかを描いたこの回。御行の努力を見たときの、理屈を超えたかぐやの表情に、その答えは出ています。
相合い傘攻防戦
ラブコメの王道イベントといえば、相合い傘。かぐやも憧れを持ってはいるようですが、まずは分析から入ります。
かぐやとしては、相合い傘はマーキング行為という認識のようです。相合い傘をすることで、つばつけてますよ、とアピール。ほかの人の恋愛品定めから除外されるように牽制(けんせい)する、ということらしい。いきなり恋の駆け引きに飛んでっちゃったか……わからんでもないけど。
この話は、「かぐや様は告らせたい」という作品の心理戦、ミステリー要素を含む詰将棋感覚が、存分に味わえる展開になっています。かぐやVS御行の「どっちが嘘つきだと暴露されるか」「どっちから相合い傘に誘うか」バトルが勃発。
かぐやが、御行のアリバイを順序立てて考察し、御行の嘘をもりもり暴露していく様子は、かなりスピーディーでスリリング。まるで検事。
今回のかぐやの下準備は、狂気的な領域に達しています。天気図はまだしも、自宅の車のタイヤを千枚通しでパンクさせるのは実力行使が過ぎる。
でもそんな努力は、バランスブレイカー藤原書記の前では何の意味も持たない。作戦を立てる時、先に「藤原書記が出てくる」というのは計算に入れないと、永遠に計算は成立しない……けどそれを考えたからといってどうすればいいのか。なお御行の藤原書記対策は、今連載されているマンガで実行されていますので、気になる方はチェックしてみてください。
相合い傘、というか男女の付き合いの行動は、「したいから、する」という単純なもの。どうにも頭でっかちになりがちな2人からは、恋愛イベント性の理屈が重視されて、抜けてしまう部分です。理由がないと動きづらいんでしょう。
とはいえ、今回のラストを見ると「一緒にいたい」というシンプルな気持ちを、ちゃんと感じはじめています。
5話では超絶運動音痴なところを見せた御行(藤原書記おつかれ様)。その反動のごとく、決めるところで決める様子が見られます。
相合い傘で「半分 借りる」というセリフ、どっちが上とか有利とかという、普段のやりとりを飛び越えている。はんぶんこにして一緒に歩むという、一歩進んだ恋愛観がちらっと見えるシーン。
恥じらいがキュートな2人の相合い傘。案外、明確な線引きって付けなくてもいいのかもしれない。
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