カナダ育ちの脳筋女子ゲーマー、Ritsuko Kawai(@alice2501)さんによる「週末珍ゲー紀行」。今回はふんどし一丁の男が空を飛びながら江戸の火を消すゲーム「Otokomizu〜漢水〜」を紹介します。江戸時代を何だと思ってるんだ。
ライター:Ritsuko Kawai
カナダ育ちの脳筋女子ゲーマー。塾講師、ホステス、ニュースサイト編集者を経て、現在はフリーライター。下ネタと社会問題に光を当てるのが仕事です。洋ゲーならジャンルを問わず何でもプレイしますが、ヒゲとマッチョが出てくる作品にくびったけ。Steamでカワイイ絵文字を集めるのにハマっています。趣味は葉巻とウォッカと映画鑑賞。ネコ好き。
その姿、ふんどしを着けたリヴァイアサンのごとし
世の中にあふれる“変なゲーム(珍ゲー)”を紹介する「週末珍ゲー紀行」。第21回は、江戸の大火を食い止めるためにふんどし男が全身から水を噴射しながら空を飛び回るゲーム「Otokomizu〜漢水〜」を紹介します。ジョークゲームのようなコンセプトとは裏腹に、その実は物理演算と真摯に向き合う慣性との格闘劇。チャレンジャー精神をくすぐられる超高難易度の作品です。
かつて江戸(現在の東京)の町では火災が頻発しており、数年に一度は大火事があったと伝えられています。しかも木造家屋が連なる住宅事情から、一旦火がつくと容易には消火できませんでした。また、現代のような科学的な消防技術はないため、火元から風下の家屋を取り壊すことで延焼による被害拡大を食い止める破壊消防が主流だったといわれています。命知らずで粋な火消たちは町民が憧れる職業。まさにスーパーヒーローでした。
そんな江戸のスーパーヒーローを、21世紀の科学力と物理演算を駆使して現代風に表現したのが、本作の主人公です。しかも全身に竜吐水を埋め込まれた裸のアイアンマンに、纏やハシゴ、刺又といった火消の七つ道具など不要。体内から無限に湧き出る水流の推進力で大空を舞い、スタイリッシュな構えの数々で不審火から江戸の町を守ります。消火を邪魔する謎の忍者も何のその。やつらの落とすスシを食らって元気100倍です。
しかし、とにかく操作が難しいのが本作の特徴。ゲームプレイはコントローラーのみ対応で、左スティックで体の傾き、右スティックでカメラを操作します。そう、ふんどしアイアンマンは粋な江戸っ子を極めるあまり自分の足で歩きません。手足から噴射する水の勢いと体の傾き、物理エンジンの慣性のみがプレイヤーの移動手段です。
最初は消火どころか水流コントロールすらままならず、トリッキーなカメラワークに惑わされ、ろくに宙を舞うことすらできずに町は炎上。爆散していくさまをぼうぜんと眺めることになるでしょう。
両手両足の噴射は、それぞれLB、RB、LT、RTの4ボタンに対応しています。また、A、B、X、Yボタンで構えを変更することで、水の噴射位置を変えられます。はじめから使えるのは直立不動の「龍の構え」と、両手を前に突き出して両膝を地に着けた「鶴の構え」のみですが、町中に落ちている「水魂」という通貨を集めることで、ユーモアやエレガンスに富んだ数多くの構えをアンロックできます。
中には苦労してアンロックしたのにギャグとしか思えないようなポーズもありますが、構えの組み合わせは自由なので無限のスタイリッシュさを追求できるでしょう。また、「水魂」は能力のパワーアップにも使用できます。
消火中は漢気ゲージがたまってていき、最大までチャージした状態で左スティックを押し込むことでハイパーモードが発動します。この明鏡止水の境地に到達すると、水を噴射することなく一定時間空中に静止できます。さらにLT、RTボタンで荒ぶりながら前進。A、B、Xボタンで種類の異なるド派手な攻撃が繰り出せるのです。
江戸の上空からかめはめ波やイデオンソードによく似たハイドロポンプを打ち出す神々しい姿は、もはやふんどしを着けたリヴァイアサン。江戸に恵みの雨をもたらす龍神です。
城下町の方方で次々と引火していく家屋を消火し続け、制限時間が経過するまでに指定された被害軒数を超えなければ勝利。わらわらと迫りくる忍者に斬られて体力がなくなるか、一定軒数以上の家屋が爆散した時点で、ふんどしは活動を停止。ゲームオーバーです。
江戸の町民が憧れる一人前の火消しになるには、物理法則を理解することはもちろん、指がつりそうになるまで特訓できる忍耐力、何度でもリトライボタンを押す精神力が必要です。どんどん難しくなるステージを乗り越え、その先に待ち構える大ボスに到達するころには、アイアンマン顔負けのジェットパックマスターになっているでしょう。
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