3月27日にNIKKEI STYLEが報じた記事「GAFAに人材流出防げ NTTコムの新キャリアパス」が、波紋を呼んでいます。記事最後に書かれた「押しかけラグビー」の部分で、NTTコミュニケーションズでは「職場に突然、ラグビー部員がわーっと入っていって、社員にボールをパスしたり、体を動かしてもらったりする」という部分が「仕事中にラグビーボール投げてくるな」「地獄か」という批判的な声や「そんなことは行われていない」「デマである」という意見までさまざま。
NTTコミュニケーションズでは本当に仕事中にラグビーボールが飛んでくるのか、そもそもデマなのか。話を聞いてみました。
人材流出対策にタッチダウン
NIKKEI STYLEの記事は、近年日本のIT企業では若手の人材がGAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple)に流れてしまうことが多いなか、NTTコムではいかにして自社にとどまってもらうための施策をしているか取材したもの。山本恭子ヒューマンリソース部長が、「キャリアパスの多様性」や「社内FA」について語っています。
「押しかけラグビー」は、この話の最後に出てきたもの。会社のラグビー部「シャイニングアークス」の部長も兼ねているということで、人事の仕事とつながるかという質問への回答として語られました。
記事によると、「押しかけラグビー」は2018年から始まったもの。反響があり、NTTファシリティーズやNTT西日本営業部などにも呼ばれて行ったそうです。目的としては、体を動かすことが健康経営につながるほか、会話が生まれるなどの効果が考えられるとしています。企画を考えたのは、ラグビー部のメンバーとのこと。
しかし、「仕事中にラグビーボールが飛んでくる」という部分が、批判的な声を集めてしまったようです。エンジニアに体育会系のノリを押し付けているようなイメージが付いてしまったのかもしれません。
仕事中に飛んでくるラグビーボールはなかった?
さらに、この記事に対して物言いが入ります。「社内に乱入するようなトンデモ企画ならラグビークラスタで話題になっているはず」「インタビューに答えた人が何か間違えたのではないか」と、そもそも「押しかけラグビー」自体がNTTコムでは行われていない可能性を指摘しています。
さらに、NTTコムに勤めるエンジニアが「周囲でそんな体験をした人は誰もいなかった」とするブログ記事を公開。記事を読んで不安になった内定者や就活中の学生は安心してほしい、と呼びかけているのです。
なお、ケーブルテレビ局ジェイコムの「こちら浦安情報局」が2019年1月3日に公開した動画内でNTTコムに取材し、「押しかけラグビー」を実施している様子が放送されているのですが、これは社内ではなく浦安市で行われているもの。事前に話を通していると思われ、「いきなり社内でラグビーボールが飛んでくる」という感じではありません。
NTTコムに聞く
実際のところ、NTTコム社内で「押しかけラグビー」は行われているのでしょうか。話を聞いてみました。
―― NTTコム本社で「押しかけラグビー」は行われているのでしょうか。
NTTコム:行われています。年に数回、ラグビーのオフシーズンに合わせて実施しています。全ての部署で行っているわけではないため、体験していない社員も多くいます。これまでは営業部を中心に実施してきました。
―― 批判的というか、ネタ的な感じで広まってしまっていますが……。
NTTコム:把握しております。誤解されたまま広まってしまっているところがありまして、アポなしで強制的に訪問するのではなく、事前に相談して問題ないことが確認された部署でのみ実施しています。強制的に業務を妨害するものではございません。
「押しかけラグビー」は人材流出対策で実施しているものではなく、元の記事でも別の話として書かれているものです。弊社はトップリーグのラグビーチーム「シャイニングアークス」を有しており、選手のデュアルキャリア形成(競技でも、職場でも活躍してもらう)を推進しています。「押しかけラグビー」も、ラグビー部の選手たちが自ら発案いたしました。
また弊社では「健全な経営は社員の健康があってこそ」という考えに基づいて「健康経営」を推進しており、「押しかけラグビー」は健康経営施策の1つでもあります。
NIKKEI STYLEの記事にもあるように、NTTファシリティーズやNTT西日本営業部、また浦安市内の企業などからも、同様の取り組みのため、選手派遣のご要望をいただいております。
―― NTTコムの社員が否定する記事を公開しています。
NTTコム:実施しているのは日比谷の本社ビルのみです。エンジニアは別のビルに勤めているため、目にする機会がなかったのだと思います。
―― 「押しかけラグビー」ではボールが飛んでくるのでしょうか。
NTTコム:パス回し、といっても、やさしくボールを渡していく程度で、主な目的は「健康に関する宣言をしてもらうことで、健康への関心を高めてもらうこと」にあります。
「こちら浦安情報局」の動画ではタックルしている様子も映っていますが、これは浦安市のご要望によるもので、通常は行っておりません。
というわけで、デマではないものの、いろいろと誤解を含んだまま広まってしまったようです。業務中にいきなりボールが飛んできたりタックルされたりするようなものではありませんでした。
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