42歳無職の弟が、両親の財布からお金を抜いてパチンコと酒に使っています。突きつけられた「家族の病理」 ニッポン放送「テレフォン人生相談」先週のハイライト
マドモアゼル・愛の巧みな人生相談芸が炸裂。
平日の午前中、ニッポン放送を聴いていると突然はじまる異様な雰囲気の番組「テレフォン人生相談」(ニッポン放送・月〜金曜11時〜)。その名の通り、電話をかけてきた相談者の悩みに、曜日担当のパーソナリティー、各種専門家たちによるアドバイザーが答えていくという内容。
平日の午前に突然始まるテレフォン人生相談。アドバイザーは大原敬子(幼児教育研究)、マドモアゼル・愛(エッセイスト)、高橋龍太郎(精神科医)、三石由起子(作家・翻訳家)、田中ウルヴェ京(メンタルトレーナー)、中川潤(弁護士)、大迫恵美子(弁護士)、坂井眞(弁護士)、塩谷崇之(弁護士)、野島梨恵(弁護士) イラスト/北村ヂン
リスナーの人生にも影響を与えるような名アドバイス。百戦錬磨のアドバイザーたちにも手に負えない厄介な相談。泣き出す、逆ギレする、勝手に電話を切っちゃう……などなど、素人参加番組ならではのヒリヒリするようなハプニングもしばしば飛び出し、目(耳)が離せない長寿番組だ。この連載では毎週、良くも悪くも心をグッとつかまれた相談をピックアップして紹介していきたいと思う。(今回は4月1日〜5日放送分からピックアップ)
身内の金に手をつける弟。悪いのは本当に彼だけなのか?
今回ピックアップしたのは4月2日(火)放送回。
この日のパーソナリティーは医師&登山家の今井通子。アドバイザーはエッセイストのマドモアゼル・愛。相談者は45歳の女性。実家で長年引きこもっている弟に関して悩んでいることがあるという。
42歳に至る現在まで、ほとんど働いたことのない弟。20代の頃、実家を出てひとり暮らしをはじめたものの、パチンコにハマッて家賃は滞納するわ、カードローンに手を出すわ。結局、自己破産してしまい、その後、まったく仕事をしていないのだ。
相談者自身は1年ほど前に結婚して実家を出ていおり、現在は父(72)、母(72)、姉(46)、弟が実家で同居中。そして問題の弟は、両親、姉の預金通帳や財布からちょくちょく金を抜いて、パチンコや酒に使ってしまっているという。
絵に描いたようなダメ息子だが、ここまで行かないまでも、ロクに親孝行できていないリスナーたちには耳が痛い話だったんじゃないだろうか(ボクも)。
「弟をもう一度、立ち直らせたいんですけども、どうしたらいいでしょうか?」
聞いているといろいろな感情がモヤモヤとわき上がってくる弟のダメっぷりを、気持ちよくぶった切ってくれることを期待したが、アドバイザーのマドモアゼル・愛(こんな名前だけどおじさん)は意外な方向に斬り込んできた。
「『こういう風に大変な状態なので、何か良い方法ありますか?』っていう。もちろんね、お気持ちは分かるけれども、無理だって分かるよね?」
無理って……それ言っちゃったら身も蓋もないじゃん!? 相談者も「うん……まあ……」と涙声になってしまう。しかし、マドモアゼルは決して、突き放したわけではなかった。
「全ての問題が、ひとりの問題行動を起こす人に原因があると思っちゃうけれども、果たして本当でしょうか?」「家族の病理があると思いませんか?」
この家族は弟とも、各自の持つ問題とも向き合うことをせず「自分たちはいいけど、アイツがダメだ」と、問題を全て弟に押しつけて消極的にまとまってしまっているのだと指摘する。
「アナタだけがこの家族から離れられたから、余裕を持ってこういうことをしゃべっているんです」「余裕を持って泣けるんですよ、当事者ではないから」
「……そうなんです」思いっきり腑に落ちた様子で、ボリュームの調整が追いつかないくらい大きな声で応える相談者。
「お姉さん(相談者)しか動く人、いないんです」病理に取りつかれた家族から離れ、唯一、辛うじて幸せになれた人だからこそ、「家族自体に問題がある」ということを理解できるはずだと迫る。
「あの先生、私……この電話切り終わりましたら、家族に問いかけてみたいと思います」
この回を聞きかえしてみると、前半と後半で相談者の声のトーンが明らかに変化している。前半はある意味、傍観者の立場で「実家が大変なんですよねぇ〜」的なしゃべり方をだったのが、後半では一歩踏み出し、当事者となる決心をしているのが声からも伝わってくる。
問題の本質をズバーンと言い当てる人生相談芸にシビれた!
人生相談の方法論として、とにかく相手に共感して、愚痴を聞いてやって、ガス抜きしてやるというパターンがあり、「テレフォン人生相談」でもしばしば使われている。しかし、やはりシビれるのは、相談者本人ですら気付いていなかった問題の本質をズバーンと言い当てるキレキレのアドバイス。この回では、マドモアゼル・愛の巧みな人生相談芸を堪能させてもらった。
ただ、肝心の「弟は財布からいくら抜いていたのか」について、具体的な言及がなかったのが残念。
1000円、2000円というレベルなのか? 数万、数十万円、もしくはそれ以上の単位なのか……? その程度によって「ひょえーっ! ○○万円もー!?」などと、感情の入れ具合が変わってくるので、ディテールはしつこく聞き出してほしかった!
北村ヂン
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