4月18日放送の「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」(TBS系列)にて、オードリー春日がかねて「狙っている女」だった“クミさん”にサプライズプロボーズを決行した。
番組は春日に120日間密着。クミさんをモニタリングして理想の結婚式を探り、若林と婚約指輪を買い、ピアノを猛特訓してゆずの2人と「栄光の架け橋」をコラボ。春日の手紙によるプロポーズには、ドッキリのために隠れていた若林が号泣してしまった。
一連のプロボーズ大作戦が行われた舞台は、東京・青山にある結婚式場「カサデアンジェラ青山」。この場所、実は今年2月に春日が「結婚式」を挙げた式場なのだ。
春日の結婚でオードリーが解散の危機に
春日が「結婚式」を挙げたのは、ドラマ「祝!春日、結婚します! 〜おまえ!オードリー解散って本気で言ってんのか?〜」(テレビ東京系)内でのこと。花嫁役はクミさん……ではなく、SKE48の大場美奈だった。
「祝! 春日、結婚します!」は、2019年1月14日から1月31日まで、月曜〜木曜の深夜1:30に5分のミニ番組として放送されていた。映画「カメラを止めるな!」のヒロイン・秋山ゆずきがオードリーのマネージャーを演じており、その内容は「春日の筋トレを動画で記録する」だけのもの。春日が結婚式を控えているらしい、若林とうまくいっていないらしい、というのがなんとなく伝わる程度で、ネットでは「謎番組」ととらえられていた。
物語が動いたのは2月2日。土曜夕方に20分番組で放送された最終回だ。ついに迎えた春日の結婚式。新郎友人席はハマカーン、どきどきキャンプ、トム・ブラウンら、オードリーの所属事務所・ケイダッシュステージの芸人たちで埋められているが、そこに若林の姿はない。
ドラマはさらに3カ月前にさかのぼる。春日は披露宴の準備に浮かれていた。同時にオードリー単独ライブの準備も進められていたが、春日は全く取り組まない。若林は稽古場に現れず、ひとり喫茶店でノートに向き合っていた。そこには「単独ライブ」「解散」と書かれ、「お前とはもうやってらんねぇよ……」というつぶやきも聞こえる。
披露宴1カ月前。スポーツ新聞や週刊誌に「オードリー解散か」の文字が躍る。結婚を機に、若林は春日に見切りを付け、新しい相方にはなわを迎えるというのだ。報道を神妙な顔で見つめる春日。マネージャーも「1人だとネタも企画も考えられない、筋肉だけがとりえの脳みそ空っぽ芸人が、これからどうしていくつもりなんですか?」と、ちょっと言い過ぎではというくらい詰め寄る。若林の相方は春日しかいないと証明したい。でもどうすれば。そこで春日が思いついたのが相撲だった。
「お前それ本気で言ってんのか」
披露宴当日。喫茶店でPCに向かう若林に、マネージャーがひとつのVTRを持ち寄る。タイトルは「若林の相方は俺だ選手権」。若林に捨てられた春日が一念発起し、体を鍛え直すところから始まる。あの謎の5分番組は、このVTRの素材だったのだ。
春日ははなわを土俵に呼び出し、「はなわさんが本当に若林の相方にふさわしいのか、ここで決着をつけさせてもらう」と相撲で勝負を挑む。若林が「いや、この大会俺認定してねぇし」と軽くツッコむなか、VTRのなかの春日ははなわを投げ飛ばし、「トゥース!」とおたけびをあげた。
カメラは再び結婚披露宴に。式はクライマックス。春日が新郎あいさつに立ったところで、式場後方の扉が開く。スポットライトに照らされる若林。春日はその姿を一瞥(いちべつ)し「おい若林!」と咆哮。「解散したかったら、春日を倒してからにしなさい!」と相撲対決を提案する。さっきまで披露宴会場だったのに床には土俵が。はっけよいのこった!の声とともに、上半身裸の2人ががっぷり四つに組む。張り手をかまし、まわしを取り、相方を投げ飛ばしたのは……若林だった。
倒れた春日に「そんなお前と、漫才やってらんねぇよ!」と言い放つ若林。ゆっくりと起き上がり、肩で息をしながら「お前それ本気で言ってんのか」と春日。「……本気で言ってたら……披露宴で相撲やんねぇだろ」「……ヘヘヘヘヘヘ」「ヘヘヘヘヘ!」「「ヘヘヘヘヘ!!」」
オードリーの漫才でお馴染みのくだりが、お互いを再び相方と認め合う演出に使われているのだ。このあと、この解散騒動が若林の策略だと明かされる。全ては、春日に芸人の心を取り戻してもらうための「ドッキリ」だったと――。
現実では春日がウソをつき通していた
さて、ドラマのシナリオ内ではドッキリをしかけられたのは春日のほう。現実はどうだったかと言えば、ドッキリさせられたのは若林のほうだった。
春日はずっとクミさんを「狙っている女」と表現していた。その期間は「6年前に会った」とされていたが、「モニタリング」のロケの最中に、実は11年前であったことがわかる。11年前と言えば、オードリーが「M-1グランプリ2008」で敗者復活から最終決戦まで勝ち上がったころ。モニタの前で「M-1のころからつきあってるの!?」と驚く若林。そのころからずっと、春日の「ここ」は空いていなかったのだ。
春日が「狙っている女」と言い続け、相方にも交際を隠し続けたのも理由がある。2009年、春日は一度写真週刊誌に自宅から女性と出てきた姿を撮られたことがあるのだ。その時の相手が他あろうクミさんだった。人気急上昇中だったオードリーを思い、別れを切り出すクミさんに春日は「別れません」と宣言。後日行われた記者会見では「音信不通になった」とウソをつきとおした。それから10年。春日はクミさんを「狙っている女」という傘で守り続けていた。相方の若林に対してさえも。
現実のほうがドラマチックな「春日」という存在
「祝!春日、結婚します!」では、結婚3カ月前から解散劇を仕掛ける若林が描かれていた。一方、「モニタリング」は、11年前から相方に彼女の存在を隠していた春日が主人公だった。春日が体を張って相撲を取った式場は、春日が寝ずに特訓したピアノを発表する場になったし、春日に芸人の心を取り戻そうとした若林は、春日のまっすぐさに号泣してしまった。
現実はドラマよりもドラマチックだったのだ。「春日」はフィクションの枠になど収まらない。この10年、振り返るとさまざまな言動が「このときもクミさんがいたのかよ」と伏線として横たわる。最後に『オードリーの悪いようにはしませんよ』(ぴあ)を引用して終わろう。『TVぴあ』読者に「春日さんを諦めるにはどうしたらいいですか?」と問われたときの回答だ。
「もしかしたら、アタシが結婚すれば諦められるのかもしれませんね」「だから、申し訳ないですけど、春日が誰かのものになるまで、もう少々……、うーん、5年ですかね、5年待っていただければ」
このくだりが「TVぴあ」に掲載されたのは、2014年7月16日のことである。
井上マサキ
ライター/路線図マニア/テレビっ子/『99人の壁』グランドスラム/ケータイ大喜利レジェンド/MENSA会員/著書『たのしい路線図』 Twitter
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