今年も気付けば終わっていた4月1日。新年度初日。そして、エイプリルフール。1年の中で唯一、嘘をついてもいいとされる日。
日本のみならず、ヨーロッパ文化圏を中心に世界中でジョークが交わされたり、イタズラが多発したりします。さて、そんなエイプリルフールとは、いつ、どこで始まった風習なのでしょうか。
結論:まさかの「分からない」
この記事の結論として、エイプリルフールの起源は「分かっていません」。こんなに世界中に広まっているのに、と思うかもしれませんが、現時点では説得力のある説は出ていないようです。これも確たる「最初」は分かっていませんが、日本に伝わってきたのは大正時代ごろのようです。
「おそらくこうではないか」とよく語られる説はいくつかありますので、紹介します。
<説1:フランスでの暦の改訂>
まず1つは、16世紀のフランスで、暦が切り替わったことに由来を求める説です。
それまでフランスでは春分の日を新年の初めとしており、例年そこから1週間程度に渡って祝いの祭りを行っていました。ところが、国王は周囲の国々に合わせ、1564年から1月1日を新年の初めとする暦を採用しました。
これに反発した人が例年通り春分から4月1日にかけて馬鹿騒ぎをしたとか、あるいは暦の切り替えについていけなかった人を周囲が馬鹿にした、というのです。
一方で、当時のフランスでは徐々に1月1日を新年の初めとすることがちまたに浸透し始めており、1564年の暦の改正はそうした実情に合わせてのことだったともいわれます。その改正に反対したり、ついていけなかった人が果たしてどのくらいいただろうか、というのは微妙なところです。
<説2:キリスト教由来>
聖書にあるイエス・キリストのエピソードにも由来を求めることができるようです。
イエスは、裏切り者ユダの嘘の密告により逮捕されます。その後、アンナス→カヤバ→ピラト→ヘロデと、4人のユダヤ教の祭司や総督のところへたらい回しにされ、散々愚弄された揚げ句、行われた裁判もでっち上げのものでした。
こうしてイエスが馬鹿にされたことになぞらえて、人を騙して無駄な使いに出したりする風習が生まれた、という説です。
<説3:仏教の「揶揄節」>
仏教のエピソードが由来ではないかともいわれます。
インド仏教では、春分のあたりで修行を行う習慣があったといいます。現在でも、春分の前後1週間程度は「彼岸会」といって、儀式や墓参りをする習慣がありますね。
さて、この修行は春分の後1週間続き、3月末ごろに終わります。修行を終えて悟りの境地に達したかと思いきや、やはり人は人ということでしょうか。4月1日の時点で、多くの人が再び迷いや煩悩に惑わされることになっていたようです。
こうした迷いが生じてしまう修行後すぐの時期を「揶揄節」と呼んだのがエイプリルフールの由来ではないか、というのです。
「嘘ついていいのは午前中」という地域もある
関連する豆知識として、「実は嘘をついていいのは午前中だけ」などというのを聞いたことがある人もいるでしょう。エイプリルフールの内容は国や地域によって異なっており、こうしたルールのようなものはどれも、正しいとも間違いともいえません。
「午前中だけ嘘をついていい」というのは、イギリスやその植民地だった地域にみられるルールのようです。
<ほかの風習と混ざって生まれた>
イギリスでは清教徒革命で王政が倒されたのち、1660年にチャールズ2世を国王とした王政が復活します。この王政復古を記念した「オークアップルデー」という祝日が毎年5月に設けられ、かつてはとても盛んに執り行われていました。「オークアップル」とはコナラの木の枝に虫が作るコブのことで、チャールズ2世がコナラの木に隠れて戦乱を逃げ延びたことに由来するとされます。
オークアップルデーには帽子などにコナラの木の枝を刺しておく風習があったのですが、枝を刺しておく時間が正午まででした。この風習がいつしかエイプリルフールにも混ざり、イギリス圏では「嘘をついていいのは正午まで」となったのではないか、とする説が有力です。
おわりに
エイプリルフールには、個人から大企業に至るまで、あらゆるところで嘘が生成されます。たくさんの秀逸なネタに楽しませてもらった一方で、ネット上では「そろそろちょっと食傷気味」という意見も多いようです。
それにしても、確たる由来もないのにこんなに世界がふざけているのも、あらためて考えるととんでもないことですね。
参考文献
加藤迪男(1998)『366日の話題事典』東京堂出版
PHP研究所 編(2006)『[四訂版]今日は何の日』PHP研究所
学研辞典編集部 編(2004)『年中行事・記念日事典』学習研究社
高橋尚好、栗岩英雄、石川秀弥 編著(1995)『366日話題事典』株式会社ぎょうせい
CBC『Why does April Fool's Day end at noon? The case for 24 hours of pranking』
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