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「『犯罪者予備軍』というイメージに苦しめられる 」 ひきもこり当事者グループが「川崎殺傷事件」の報道姿勢に警鐘

「ひきこもり」と「殺傷事件を起こしたこと」を先入観や憶測で結びつける報道がなされています。

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 神奈川県川崎市で発生した無差別殺傷事件(通称「川崎殺傷事件」)の報道姿勢について5月31日、ひきこもりの当事者・経験者からなるクリエイティブチーム「ひきこもりUX会議」が声明文を発表。「ひきこもり」への偏見が助長が懸念されると、警鐘を鳴らしています。

被害者へのお見舞いから始まったお願い

 冒頭、事件の被害者や家族、関係者に向けて「ご家族や関係者の方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。被害に遭われた方の一日も早いご回復と心の平安を取り戻されますことを心からお祈りします」とお見舞いのメッセージから始まった声明では、「弱い子どもを狙い、尊い命を奪った犯行はいかなる理由があろうと決して許されるものではなく、私たちも強い憤りと共に深く胸を痛めています」と事件についてコメント。

 そのうえで、「『事件を悲しみ犯行を憎むこと』が『ひきこもる人たちをひとくくりに否定すること』に向かいかねない現状に対して、ひきこもりの経験者であり、また日々多くのひきこもり当事者・経験者、ご家族と接している立場からお願いがあります」と次の3つの点について言及しました。


川崎殺傷事件 ひきこもり ひきこもりUX会議による声明(ひきこもりUX会議公式ブログより

「ひきこもり」への偏見の助長の懸念

 まずは川崎市による会見で「長期間仕事に就かず、ひきこもり傾向にあった」「同居の親族からおこづかいをもらっていた」「市の精神保健福祉センターに複数回相談があった」との発表があったことについて。これらがたとえ事実であったとしても「ひきこもっていたこと」と「殺傷事件を起こしたこと」を先入観で関連付ける報道がなされることは、「無関係のひきこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長するもの」だと指摘しました。

「犯罪者予備軍」というイメージに苦しめられる

 また以前からひきこもりがちな状態だった人が刑事事件を起こすたびに、犯罪とひきこもりを結び付けた「犯罪者予備軍」のような“負のイメージ”が繰り返し報じられてきたということについては、「(ひきこもりへの)イメージが歪められ続ければ、当事者や家族は追いつめられ、社会とつながることへの不安や絶望を深めてしまいかねません」としています。

「8050問題」への誤解を引き起こす

 そしてひきこもり当事者とその家族が高齢化する課題「8050問題」についても、「今回のような犯罪行為に結びつく可能性を含む問題という意味ではありません」「今回の事件と関連づけて『まさに8050問題』と表現することも適切ではないと考えます」との見解を示しました。

 こうした3つの点について、ひきこもりUX会議は「報道倫理に則り、偏った不公正な内容や、事件とひきこもりを短絡的に結びつけるような報道はしないことを報道機関各社に求め、『ひきこもり』や『8050問題』に対して誤った認識や差別が助長されないよう、慎重な対応を求めます」とし、報道機関に対しては専門家や有識者だけでなく、ひきこもり当事者や経験者の声を取り上げてほしいと、つづりました。

 また最後には、ひきこもりUX会議が接してきたひきこもり当事者や経験者は、ひきこもりではない人たちと何ら変わりない、と明かしたうえで、「事件の背景が丁寧に検証され、支え合う社会に向かう契機となることが、痛ましい事件の再発防止と考えます。特定の状況に置かれている人々を排除したり、異質のものとして見るのではなく、事実に則り冷静に適切な対応をとっていただくようお願い申し上げます」と締めくくりました。


川崎殺傷事件 ひきこもり ひきこもりUX会議が行っている活動(ひきこもりUX会議公式サイトより)

 今回の声明について、Twitterでは「マスコミ関係者の方々には、この声明をぜひ読んでいただきたい」「冷静に、丁寧に、深く、発信してほしい」などの声が上がっており、報道機関の姿勢が問われています。

(Kikka)

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