「全財産が138円」「ライフラインがどんどん止まってる」 人気エステサロン「白鳥エステ」の賃金未払い問題で何が起きていたのか
白鳥エステことHSbodydesignの賃金未払い問題の状況を整理しました。
アキュートリリーが運営するエステサロン「HSbodydesign」(通称白鳥エステ)が、7月30日に「給与遅配に関するお知らせ」と題した声明を発表しました。
HSbodydesignとは、「60分3000円 国内最安値高級エステサロン」をうたったエステサロンチェーンです。その安さと技術力で人気を集めていた一方で、給与の支払いに遅れが発生しているとSNS上などでうわさになっていました。
このような状況の中で発表された声明「給与遅配に関するお知らせ」は、アキュートリリー代表取締役社長である白鳥紘子氏の名前で発表されたものです。
声明によると、給与の遅配は事実であり、2019年6月14日に初めて労働基準監督署から是正勧告が入ったといいます。以前は「支払いの希望を自己申告した従業員に対して優先的に給与を支払う方針」を取っていたそうです。
しかし是正勧告以降、社内には「給与支払い希望に関する自己申告を行う事が出来ずに悩んでいた従業員の方々」が多く存在したことに気づき、状況に関係なく公平に支払いを行う「大幅な方針転換」を行ったそうです。白鳥社長は、今後は2019年いっぱいをめどに一律で給与遅配の解消を目指す、と述べています。
給与未払い問題の表面化
6月22日の坂倉昇平さんのツイートによれば、「給与遅配が発生しています」と記載された採用情報が公開されていたことがわかります(現在採用情報は削除済み)。22日の時点では「給与遅配解消については2019年7月見込みです」と書かれていたようですが、25日には解消見込み時期の記述が削除され、「遅配日数・解消時期については面談時にお尋ねください」に書き換えられました。
元従業員のTwitterアカウントでは、生活の窮乏を表明するツイートが相次いでいます。クレジットカードが払えない、携帯が止まった、財産がほとんどなくなってしまった、家を出るしかなくなったなど、多くの元従業員が切迫した状況に置かれていることを明かしました。
元従業員の西山さんは「給料未払いによりライフラインどんどん止まって一刻も早く失業保険が欲しく、離職票が必要。労務から返信が来ない。本当に刻一刻と追い詰められてます。進捗が知りたい。サポセンは労務じゃないから問合せても確認しますしか言えないだろうし、労務からの連絡が欲しい」とツイートしています。
店舗が資金繰りに苦慮していた可能性を示すものとして、HSbodydesign相模大野店が2019年5月26日にAmazonほしい物リストを公開した点も指摘されています。Amazonほしい物リストはユーザーがネットにリストを公開し、Amazonを通じて別のユーザーに物品を購入してもらえるようにするサービスです。HSbodydesign相模大野店のリストには掃除用品やトイレットペーパー、エステ用ホットストーン、ガウンなど、店舗で使用する商品が登録されています。
白鳥社長「問題は解決の方向に向かっている」
あくまで白鳥氏が声明の中で謝罪しているのは「遅配」であり、「未払い」ではありません。白鳥社長も2019年7月2日に「実態は『給与は支払われているが支払い予定日よりも支払い実施日が後ろ倒しとなってしまっている』状態であり、担当者へ賃金が支払われていないという事実はございません」とツイートしており、あくまで給与を払う意思はあると強調しています。
また、「遅配」の原因については「給与水準を高く設定しすぎて資金が足りなくなっただけです」と述べています。「問題は解決の方向に進んでおります」とも発言していますが、「労務から連絡がこない」「今日も1円も振り込みがない」という元従業員の話とは状況の認識が噛み合っていません。
なお、労働基準法第24条は「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定めています。違反した雇用者には30万円以下の罰金が科されます。
集団訴訟
現在、元従業員の長村伊万里さんが集団訴訟の準備を進めており、訴訟資金のクラウドファンディングを行っています。また元従業員に向けて、給与の入金記録、給与明細、タイムカードなど、給与遅配の常習性を証明するための資料を募っているとのことです。
ねとらぼでは事実関係の確認のためアキュートリリーに電話取材を試みましたが、電話は繋がりませんでした。
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