嫌いな相手をVRゲームの中で再現して殺したい――そんな物騒な願望をかなえようとする少女が、最後に優しい結末を迎える漫画「顔」が人気を博しています。作者は漫画家の背川昇(@waki_ase)さん。
好きだった男子、倉田をクラスメイトの川口に取られた主人公の北見。川口の勝ち誇ったような表情が憎たらしくてたまらない北見は、VRゲーム内で彼女の顔に弾丸を打ち込もうと決めます。しかし、姿だけ同じに作った川口ではあの表情まで再現できず、撃っても気が晴れません。人格まで再現するべく、北見は彼女の席に盗聴器をつけて情報を集めます。
集めた情報を入手して川口を再現しては撃ち殺す北見。しかし、何度やってもあの表情が作れずいら立ちます。そんなある日、川口が自分と同じバンドが好きで、しかもかなり好みが近いことを知ります。川口を見る北見の表情は、それまでと違っているような……。
そして1カ月。ようやくVR空間で川口を再現することに成功した北見。でも、川口を“殺す”ために、彼女のことを知りすぎてしまった北見は知ってしまったのです。「嫌な奴」だと決めつけていた川口がいい人だったこと、彼女の「勝ち誇ったような表情」は自分の被害妄想だったこと……。北見は泣きながら自分の顔を吹き飛ばすのでした。
その後、北見は川口が倉田に二股をかけられて別れたことを知ります。励ましたいと思うのですが、現実の川口とはあまり話したことがなく、どうしたらいいか分かりません。北見は再びVRのゲームで川口を再現し、好きなバンドのライブに誘います。うまくいったら、明日本当に誘ってみようと思いながら――。
はじめは川口のことをほとんど知らず、嫌なやつだと思い込んでいた北見。でも彼女をVRで再現できるほどに知ったころには、思い込みに気づいて憎めなくなり、最初の目的だった「殺す」ことができなくなる……相手のことを知らないから悪い方へ受け止めてしまうこと、相手を知ることの大切さがあらためて感じるお話です。このあと2人が友達になれるといいですね。
VRの世界で嫌いな相手を殺したいという衝撃的な出だしから、最後は新たな友情の芽生えを感じさせる優しい結末へ。その落差と、現実ではできないことを可能にするVRという要素の巧みな使い方にうならされます。読者からは「最高に「人間」って感じがしました」「人間は相手のことを知れば知るほど尊重したり共感できるようになるんだろうな」「人と人の間の無限の断絶がいくらか縮まる、奇跡の光景を見た気分です」といった感想が寄せられています。
背川さんは百合ラップ・コミック『キャッチャー・イン・ザ・ライム』で知られ、また『月刊ヒーローズ』で女子中学生が謎の生物と出会う漫画『海辺のキュー』を連載しています。
「顔」
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3ページ目で「ハッ!」となる。