ねとらぼ真夏の怖い話特集、第5夜はねとらぼ編集部員の怪談「不自然なホテル」です。
出張から帰ってくるなり「これ、特集のネタになりませんか」と声をかけてくれた編集部員Tさんに、心霊体験の一部始終をインタビューしました。
出張先にて
7月に●●へ出張したんですけど、夏休み期間に入っていることもあって、新しいホテルとか旅館が軒並み埋まってたんですよ。
テーマパークに近いホテルはみんな埋まってて、でもテーマパークの近くにしかホテルがなくて。で、ちょっと離れたところにある有名な温泉がいいね、ということで行ったんです。ぎりぎりで取ったので、新館じゃなくて旧館に泊まる割安プランだったんだけど、もう寝るだけだからさ、いいじゃんって言って、2人で泊まったんですよ。同行者と私で。
――はい。
このあたりでは一番の老舗って言われてるところだったの。で、素泊まりなんでね、着いた瞬間に貸切風呂借りて。露天風呂入って。寝るぞって(部屋に)帰ったんですよ。
――それは何時ぐらい?
着いたのが7時で、9時とかかな。けっこう遊んでたのね、お風呂で(笑)。お風呂貸し切ってたから。お風呂入って、遊んで、布団も自分たちで敷いて、クーラーもテレビも消して、「よし寝るぞ」って2人で寝てたんですよ。
――どういう部屋ですか? 普通のよくある感じの?
よくあるというかね……(図を描く)左側が玄関で、右側が窓ですね。窓の前が板の間。ここに机とか椅子があって座れると。で、板の間の奥になぜかお風呂があるんですよ。シャワーね。
――ん……? シャワーのところ、ふつうは冷蔵庫ですよね?
そうなんだよ。ところがね、冷蔵庫は玄関にあるんだよね。
――なぜ……?
何かよくわからないけどこういう変な造りだったんですよね。玄関側に押し入れとトイレ。で、居間のテレビを見たいから、こういう風に(ふとんを)並べて寝たんですよ。
――Tさんはどっちに寝ていたんですか。
こっちが……ここ私。窓側だった。テレビを見ながら、こっち(頭側)に荷物とか置きながら。寝ていたんですよ。で、寝たのが、そうね、11時には寝たんですよ。
――何泊されたんでしたっけ。
1泊です。で、地方だから見たことない番組ばっかりで、すぐ寝ちゃったんですよ。そしたら、12時ぐらいに、1回めの異音。
――異音。どういう音……?
それが、1回目の音っていうのは、足音。
――上から?
上の階から。でもけっこう部屋が隣接してたんで、子どもさんの声とかも聞こえてたんですよ。まあちょっと騒がしかったけどね、11時ぐらいまでわーーっとなっていたけど。「まあまあいいじゃない」と思って。で、最初は足音だったんですよ。
――これ何階なんですか?
これがね、12階です。
――ほう。それで上にも部屋があると。
……と思ってたんですよ。
――はあ……?
……で、足音が鳴り始めたんですね。これがパタパタ音なんですけど。
――子どもの軽い音ですね。
このパタパタ音がね、こちら(窓側)からこちら(玄関側)に向かって走る音なんですよ。1回ジャンプして、パタパタって。これ最初は1人だったんです。この段階では。ところがこの後、30分おきぐらいにパタパタ音が止まらなくなるんです。
――30分おきっていうのは、すぐに止まるんですか。
止まる止まる。行き切ったら帰ってはこないし、そのあと鳴らない。で、このパタパタが2人になりはじめました。ドン、パタパタ、ドン、パタパタ、みたいな、追いかけっこしてる感じだったの。
――へえ……。
で、やっぱり上がはしゃいでるんだなと思ってたんだけど。もうこの間隔が狭くなっていって、(0時)40、(0時)50分みたいな感じで、パタパタが続くんですよ。すごい走るの。
でもまあ夏休みだし、まあまあまあまあ、気にしなきゃいいや、と思ってふとんかぶって寝てたの。そしたら今度バイーン、バイーンって音が始まったの。
――バイーン……?
1時15分ぐらい。「バイーン」音。今度異音が「バイーン」に変わりました。
――どういう音ですか。楽器みたいな感じ?
あのね、なんて言ったらいいかな……金属製のものさしをこう(曲げて手を離すジェスチャーをする)やったらバイーンって鳴るじゃん。
――バネみたいな、しなる音?
そう。しなる音がするんですよ。で、バイーンは明らかにシャワールームから聞こえるんですよ。
それで、ここで私もいいかげん起きて、古いホテルだから設備的な、水回りの何かかと思ったんですよ。見に行ったんですよ、シャワーのほうに。そしたら全く何の異常もないんですね。
なんだけど、こっからもう引き続きまして、バイーンとパタパタが。続きまくって、AM3時50分とかかな。いや3時半か。時間見てたんですよ、私。どれぐらいの間隔で来るのか。
バイーンは大きくなっていくし、パタパタは3人まで増えたの。これはおかしいねって思ったんだけど、一緒に行った人は寝てたので、まあ言わなきゃいいかと。場所も場所だし古いし、何かあるのかもしれない、ぐらいで信じていませんでした。まだ。
――はい。
そしたらAM3時50分。今までは個別だったんです。バイーンとかパタパタは。だったんですけど、3時50分になった瞬間にまず「バイーン!」って鳴りました。で、その後「バタバタバタバタバタバタ!」って、今までにない走り方で早かった。で「え!」と思った。これ電気をつけたりすると音が止まるんですよ。
で、待ってたんですよ、こっちも録画してやろうと思って。でも携帯構えて待ってても、全然何も起きないのね。
――足音の人数は変わってないですか。
3人です。そしたらここにあった窓が、まず「カタ」っていいました。窓が。カタって。カタっていったなあとは思った。見た。そしたら、カタ……ガタガタガタガタガタガタガタ! って、外から思いっきり開けようとしてる。しかもそれが子どもとかじゃなくて、マジで蹴破って入ってくるぐらいの音。
――危機じゃないですか。
そう。これがね、風で鳴ってる音じゃないの。鍵がぶつかって鳴ってるカタカタなんですよ。私は普通に泥棒だと思いました。で、さすがにこのタイミングで(同行者を)起こします。「起きて!」と。3時50分、同行者も起床。「やばいやばいやばい! 入ってくる!」って言ったから、同行者は意味がわからなくて「何? どうしたの? 寝ぼけてるの?」って。でも同行者は強いから、窓を開けに行ったんだよね。
――はあ……。
で、ばっと開けて、開けたらバルコニーがあるだけで何もなかったみたいで。隣を見ても「隣、泊まってないよね」って言って。
ああ、そうなんだ、隣いると思ってたよね、って言って。すごいんだよ、って音の話をしました。そしたらちょっと笑ってました、同行者は。で、まあおかしいよねと言ってたんですけど、まあまあまあまあ寝よ、って言って、AM4時に消灯しました。
そしたら、消した瞬間に「バイーン」っていうんですよ。で、鳴った瞬間に「ほら」って言ったら、すごく怖くなった同行者がフロントに電話したんですよ。出ません。めちゃくちゃかけました。出ました。
番頭さんみたいな人が出てきて、「どうされましたか」と。「音がすごくて、上の方がすごい暴れてるみたいで。お酒とか飲んでるのかわかんないんですけど、ちょっと言ってもらえないですか」と言いました。そしたらその人はこう言いました。「お客さま、(お客さまが)お泊まりの部屋は最上階ですよ」って。
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