答えは「日本と欧州のガソリンの規格が違うから」
答えは「日本と欧州のガソリンの規格が違うから」です。
ハイオクとは「高オクタン価ガソリン」の略が和製英語のように一般単語となったもので、オクタン価の高いガソリン、レギュラーガソリンよりも高いオクタン価のガソリンのことです。ハイオクとレギュラーは、ガソリンと軽油のように性質が違う油種ではありません。
オクタン価とは「ガソリンエンジン内での自己発火のしにくさ、ノッキング(異常爆発)のしにくさ」を示す数値です。ごく簡単に言えば、オクタン価が低いレギュラーの方が燃えやすく、オクタン価の高いハイオクは燃えにくい特性があります。
高出力や低燃費性能を狙う高圧縮比ガソリンエンジンでは、適切でない行程(圧縮が高まっていない)のところで異常燃焼してしまう(ノッキングが発生する)と適切にパワーを出せないので実に都合が悪い。だから高性能エンジンにおいてはノッキングが発生しないように、変なところで自己発火してしまわないように、あえて燃えにくいオクタン価の高い燃料を使って、適切な行程で効率よく燃焼できるようにしています。
日本のガソリンはJIS(日本産業規格)で、オクタン価89以上が「レギュラー」、オクタン価96以上が「ハイオク」と2段階で定められています。しかし海外諸国では、それが3段階あったり、そもそも日本のレギュラーに相当する油種のオクタン価が違っていたりと、国によって差があります。
例えばドイツでは、オクタン価(RON)91、95、98の3種類のガソリンが設定されています。最も低いRON91は現代はあまり使われないため、ドイツ車の多くはRON95以上のガソリンを想定して設計されます。イタリアや英国などは日本と同じ2段階です。しかしオクタン価はレギュラーが95、ハイオクが97〜98くらいです。
つまり欧州車は、JISよりもオクタン価が高い各国現地のレギュラー(標準)相当のガソリンを下限に設計したエンジンなので、日本では結果としてハイオクが必要になってしまうことになるのですね。
アメ車は意外と「レギュラーでOK」な車種が多い
では米国車はどうでしょう。大排気量&ハイパワーでマッスルなイメージがあります。
しかし、米国車はレギュラーガソリン指定の車種が多いです。米国は州の独立性が強く、ガソリンのオクタン価の基準も地域によって異なるためか、比較的低いオクタン価のガソリンの使用も想定して設計されているから……のようです。
例えば、かなり大きくワイルドな車格の「ジープ・ラングラー」(関連記事)や、マッスルカーの「ダッジ・チャレンジャー」も、意外ですがレギュラー指定です。
ちなみに日本のレギュラー仕様車は、JISのレギュラーガソリンでノッキングが起こらないよう設計されています。レギュラー車なのにハイオクを入れても壊れることはありません。ただ、「出力向上が期待できる」とか「添加剤によって内部の洗浄効果が期待できる」などの話もよく聞きますが、自己優越感以外はあまり効果はない……とされています。
逆に、ハイオク仕様車なのにレギュラーを入れるのはやめましょう。車種によっても異なるとされますが、ノッキングが発生しやすくなり、出力低下や燃費悪化を招くなど、さまざまな悪い影響が出ます。ガソリン代が「高いから/安いから」、車格が「上級だから/低級だから」ではなく、その車に指定されたガソリンを正しく選択するのが吉ですね。
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