電気のありがたみを痛感 千葉の大停電を描く実体験漫画に考えさせられる
多くの備えがあった人の話ですが、それでも長期の停電は大変で……。
台風15号で被災した千葉県民による、停電下の生活をつづった実体験漫画がTwitterで話題となっています。防災やインフラの大切さについて、いろいろと考えさせられる。
作者のスガ(@suga23_5cm)さんは山間部住まい。家の古さや、犬1匹・猫4匹と多くのペットを飼っている事情から、防災には人一倍気を遣っていました。動物が一緒の場合、避難時の動き方も考えなくてはならないわけですね。
そんな対策を家族で話し合っていた矢先に、台風15号が襲来。暴風にさらされた家は倒壊こそしなかったものの、屋根やベランダには穴が空き、道路や通信の断絶、停電や断水も起きて、生活は困難なものとなってしまいました。
空調が使えないうえに、当日はよりによって気温が高く、ペットたちもぐったり。そこで、一家は以前から想定していた通り、日中は自家用車に避難して車載エアコンでしのぐことにしました。しかし、猫だけは乗り慣れていないせいか、急な体調不良に。かかりつけの獣医と相談し、ぬれタオルで冷やすなど別の対策をとりました。何事も試さないことには分からないことがあるものですね……。
初期の混乱をしのぐうちに、一家は夜を迎えました。日ごろから備えていたため食事や明かりには不自由しなかったものの、暑さはがまんするしかありません。そして、仕事の締め切りを間近に控えていたスガさんは、完全にデジタル化していた作業環境の弱点を痛感することになりました。
外から聞こえる消防車や救急車のサイレンを聞きながら、「私たちは今までどれだけ電気を『当たり前』に使い、それに頼って生きてきたのだろう」と物思いにふけるスガさん。その「当たり前」が失われて苦しむ人や、それを元に戻すため奮闘する人などさまざまな事情を想像し、その夜はずっと眠れなかったといいます。
夜が明けても停電は続き、猫の体調不良も治らなくて不安になっていたところ、スガさんに救いの手が。電話が回復に向かったようで、東京住まいの姉がお風呂や充電に来なさいと、自宅に招いてくれたのです。
姉のマンションがペット不可のため、犬はかろうじて見つかったペットホテルに預け、猫はケージから出さないことを条件に許可を得て、一家とともに避難。スガさんは電気のありがたみをかみしめながらも、犬と猫という、性質の異なるペットとともに避難することの難しさに気付かされるのでした。
そして停電3日目、スガさんは仕事で東京へ出ることに。そこは当たり前のように電気が通っていて、いつも通りの活気にあふれています。
通信障害で情報があまり伝わっていなかったこともあってか、千葉の状況はあまり報道されず、お昼のテレビにはいつも通りの情報バラエティが。スガさんは画面をながめながら、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨といった大災害が起きたとき、今と同じように食事しながらお昼の番組を見ていた自分を振り返ります。「私は『災害』というものを気にかけているつもりで、『自分の身にはまさかこんなこと起こりっこない』って、心のどこかで思っていたんだなあ」と。
帰宅しようにも、暗くて危険な実家付近では送迎が必要で、ガソリンを消耗してしまうだけだからと、スガさんはネットカフェに泊まることに。情報をまとめて家族に送ったり、締め切り目前の作業を済ませたり、自分のできること・すべきことをまっとうします。仕事を終えて床につき、脳裏に浮かぶのは家族や地元の友人たち。大切な人たちが暮らす千葉に思いを巡らせながら、その日は眠りにつきました。
スガさんは東京に数日逗留し、停電の6日目に帰宅しました。猫は回復し犬たちも帰ってきてひと安心。少しずつですが日常を取り戻しています。
その翌日は、地元の青年団と一緒に倒木を除去するなど、復旧作業の手伝いへ。そのなかで、周辺の林は手入れのされていない放置林で「陽当たりと風通しの悪い中央の木から弱くなって折れる」という問題を聞かされます。
このように、今回の停電で多くのことを学んだスガさん。これまで備えた防災グッズで役に立った物・立たなかった物、ペットとともに避難する難しさ、家族や友人、地域との助け合い、そしてインフラの大切さなどを、あらためて認識します。
そして数日後、とうとう家に電気が戻り、水道も復旧。「ごはんが白く見えるってありがたいねえ!」――と喜びながら、家族は久々に明るい食卓を囲みます。スガさんは「今回得たたくさんの経験を忘れずに次の災害に生かしていきたい。そう思った9日間でありました」と漫画を締めくくり、「未来の防災への一助になれば」と述べています。
作品提供:スガ(@suga23_5cm)さん
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