「少子化解決のために、子どもを3人産んでください」。
近年、若い夫婦に対する政治家のこんな発言が物議を醸すことがあります。確かに少子化を何とかするには産むほかなく、解決を焦って口にしてしまうのでしょう。批判の的になり、ネット上では「政治家なら産めと指示するのではなく、産みたくなるような社会を作るべきだ」といった社会学的な指摘も見られます。
しかし、この記事では視点を変えて、数学的な観点から“子ども3人産んで発言”の問題を挙げたいと思います。
結論から言いましょう―― おそらく日本の若い夫婦が子どもを3人ずつ産んだとしても、人口は増えません。
え、そんなバカなと思うかもしれません。もちろんある条件を満たせば増えるのですが、条件によっては増えません。そして現在の日本は“増えない条件”を満たしている可能性が高いのです。簡単な数式を使って、それを証明してみましょう。
証明のために、まず「何人産めば人口が増えるのか?」を計算する公式を作りましょう。
「公式って作れるの?」と驚かれるかもしれませんが、実は数学という学問は公式を使うよりも、公式を作る方がメインなのです。学校の数学の授業とは、少し趣が異なりますね。
といっても、今回の公式は頑張れば中学生でも理解できそうなレベルです。一緒に考えてみてください。
数式で考える“少子化の止め方”
「子世代の人口 > 親世代の人口」になれば少子化は解決するはず
人口が増えるかどうかは「子世代の人口」が「親世代の人口」より多いかどうかにかかっています。子世代の人口の方が多くなれば、少子化問題は解決します。
では、子世代の人口はどうすれば計算できるでしょうか? 単純に考えて、「夫婦の数」に「1組の夫婦が産む平均の子どもの数」を掛け算すれば求められます。
※実際には婚外子の人などもいますが、いったん考慮外として後で考えます。
夫婦の数は「親世代の人口」と「結婚する人の割合」を掛け算すれば求められる
また「夫婦の数」は、「親世代の女性人口」と「女性のうち結婚する人の割合」を掛け算すれば求められます(別に男性人口でも構いませんが、今回は女性人口にしましょう)。
それから、親世代のうち半分が女性だとします。現実には男性の方が若干多いなどの事情もありますが、ここでは話を簡単にするために、男女半々としましょう。
さて、以上で条件がそろいました。これらを使うと、次のような公式が成立します。
- 子世代の人口=親世代の女性人口×女性のうち結婚する割合×1組の夫婦が産む平均の子どもの数
これが親世代の人口より多くなれば、少子化問題は解決です。文章のままだと書くのが面倒なので、全部記号で置き換えてしまいましょう。
子世代の人口を求める公式「c=npm」
- c;子世代の人口
- n:親世代の女性人口
- p:女性のうち結婚する割合
- m:1組の夫婦が産む平均の子どもの数
nは親世代の“女性”人口ですから、男性も含めた総人口はその2倍、つまり2nです。従って、人口が増えるためには、次のようになっていればよいことが分かります。
c=npm>2n
子世代の人口を求める公式を使って、少子化が解決する条件「子世代の人口 > 親世代の人口」を数式で表すとこうなります。
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