霞ヶ関に勤める国家公務員になりながらも、20代でその職をやめた人がいます。省庁の職員というと、忙しいながらも安定している職業で、辞めるのは“もったいない”というイメージが先立ちます。「趣味がないから、働くことを趣味にしたかった」と語る彼女は、省庁で何を見て、何を発見し、退職に至ったのでしょうか。
今回インタビューを受けてくださったのは、Aさん(仮名)。お仕事帰りにお話を聞くことができました。
――今日は、広く知られているのに謎に包まれている「省庁でのお仕事」についてうかがいたいと思っています。まず、Aさんはなぜ国家公務員になろうと思ったんですか?
大学で法律を学んでいたので、卒業後の進路が、司法、国家公務員、民間企業の大きく3つに分かれていたんです。最初から省庁職員は目に入る位置にはあったんですね。でも、私はもともと民間企業にいこうと思っていて。当時、何もしたいことがないから、取りあえず有名な企業の説明会にばかり行っていたんですね。何もしたいことがないからこそ、「いい」って言われる会社に行きたい……みたいな。
就活をしていて、ある時、文系でクリエイター系でもない人って、どの会社に入ってもやることってそんなに変わらないんじゃないかな、って思って。その時から、その会社が「何を売るか、作るか」とかじゃなくて、「給与が高い」とか「休みがとりやすい」といった待遇面が気になってきたんですよね。
それを突き詰めて考えていると、今の日本で一生安心して働ける会社って1個もないな、と。そこで、“なんでこんなに将来が不安なんだろう”って考えたとき、“少子高齢化のせいだ!”と思ったんです。それで“少子高齢化対策をやらなきゃ……!”と、国家公務員になることを決めました。
――ちょっと舵の切り方が急じゃないですか!?
でも、将来が不安なの、少子高齢化のせいだと今でも思っています(笑)。どんどん国が貧しくなってしまうから、それをどうにかしないとって。
――確かに、日々ニュース記事を書いていてもそれを感じることはあります。でも、省庁職員ってとにかく忙しいし大変なイメージがありますが、どうしてそこに飛び込もうと思ったんでしょうか。
大学のころから漠然と、趣味がないから仕事を一生懸命やるんだろうなって思っていて。仕事を趣味にしたいと思ってたんです。周りに趣味がある人が多いから、何々が好き、っていうのがある人がめちゃくちゃうらやましいなと思っていて。好きなものがあるって、単純に楽しそうだというのもあるし、人として魅力的に見える。語れるものがあることにも憧れていました。
でも、20年以上生きてきて、そういう好きなものって、中学生のときにハマっていた『家庭教師ヒットマンREBORN!(かてきょーヒットマンリボーン)』くらいしか無くて。自分には趣味に生きるのは無理なんだな、と。
加えて、やらなきゃならないことがある方が落ち着くタイプなので、自分はどうせ趣味はないまま仕事ばっかりするんだろうな、と思っていました。なので、忙しいと言われる仕事に抵抗はなかったですね。省庁職員はそういう人が結構いる気がします。
――リボーン、私も好きだったな……。趣味を仕事に、は割とよく聞きますが、逆はなかなか聞かないイメージがあります。実際に省庁に入ってからはどうでしたか?
公務員試験に受かったときは、とてもうれしかったし、この仕事に一生ささげていくんだと思いましたね。実務的な面でいうと、とにかくめちゃくちゃ忙しかったです。でも、職場の人は良い人ばかりでしたね。ジェンダー問題にも理解のある人が多く、女性としてもとても働きやすくて。嫌いな国会議員はいましたけど……(笑)。
でもやっぱり、女性からやめていきましたね。この仕事は男女関係なく、結構メンタルにくる人が多いんですよ。でも働かないと生きていけないし……。女性は、経済的な面で“結婚したから辞められる”というのははあると思います。結婚して、相手の収入があるから1回仕事を離れようかな、という選択ができるというか。そういうところに性差を見ました。
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