英国の大学などからなる国際研究チームが、スピーカーを使って生きたサンゴ礁の音を流すことで、魚が再び集まり、死にかけたサンゴ礁が回復したという研究結果を発表しました。劣化したサンゴ礁に集まった魚は、総数が増えただけでなく、種類まで豊富になったことが確認されています。
研究は英ブリストル大学、英エクセター大学、豪ジェームズクック大学、オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)が共同で行ったもの。研究結果の詳細は「Nature Communications」に掲載されています。
オーストラリアに位置する世界最大のサンゴ礁地帯「グレート・バリア・リーフ」で行われたこの研究は、スピーカーで再生する"サンゴ礁の音"を利用して、荒廃したサンゴ礁の周りに魚を呼び戻そうというもの。魚の存在はサンゴ礁が健康に育つために欠かせません。ですが、荒廃したサンゴ礁の周りからは魚が去っていきます。
この研究では、死んだサンゴ礁のそばにスピーカーを設置して、健康なサンゴ礁の音を再生した場合と何も音を再生しなかった場合を比較。その結果、音を再生したサンゴ礁の周りには2倍の量の魚が集まるだけでなく、魚の種類が50%増加したといいます。
研究メンバーのスティーブ・シンプソン教授も「健康的なサンゴ礁はとてもさわがしい場所なのです」と語っており、「エビがパチパチと音を立てていたり、魚が泳ぎ回る音を立てていたり、華々しい生物学的環境音が鳴っている」とのこと。サンゴ礁が劣化すると、エビや魚が姿を消してとても静かになってしまいますが、スピーカーで健康なサンゴ礁の"環境音"を流すことで、若い魚が再び集まりだしたとされています。
サンゴ礁の再成長を助ける効果が確認される一方で、生物学者としてこの研究に関わったマーク・ミーカン博士は「魚を呼び戻せたとしても、死んだサンゴ礁が自動的に生き返るわけではありません」と語るように、サンゴ礁を無条件に蘇生する魔法とはならないようです。
筆頭著者のティム・ゴードン氏もまた「世界中のサンゴ礁のより良い未来には、地元地域の管理革新に始まり国際的な政治の取り組みまで、あらゆる段階での進展が必要です」と呼びかけています。
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