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トイレで手を乾かす「ハンドドライヤー」はウイルスを拡散させて不衛生? 2010年前後から囁かれるウワサ、メーカーの見解は

便利だから使いたいけど……。

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 インフルエンザや新型肺炎の脅威から感染症対策に関心が高まる昨今、「公衆トイレのハンドドライヤーが菌やウイルスを拡散させる」と呼びかけるツイートがTwitterで注目を集めました。

 根拠となったのは、厚生労働省の研究機関「国立感染症研究所」が2009年に発表し、2013年に一部改訂された「インフルエンザ対策行動計画」の一節です。資料内では、同研究所の関係者に向けて「温風ジェット乾燥機は利用禁止」と定めています。




 2010年前後からたびたび話題に上る「ハンドドライヤー不衛生説」。はたして本当なのでしょうか?

 2009年に「日本環境感染学会誌」に掲載された論文では、「トイレのドアノブ」と「ハンドドライヤーの底部」を比較。前者には数10〜数100個、後者には1000個以上の菌が検出されたことから、ハンドドライヤーの底はトイレの中でも特に汚染されている可能性があり、触れぬよう注意が必要と結論付けています。

 一方で、ハンドドライヤーから送られる「風」が菌やウイルスを拡散させるか否かには明確な知見が得られていません。

 2008年に「空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集」に掲載された論文では、ハンドドライヤー使用後に周辺のエアロゾル数(霧状に浮遊する粒子)が増加することが確認されましたが、手指や空気中の菌数には有意な変化がありませんでした。一般的な生活を送るうえでハンドドライヤーの使用を控えるべきかどうかには慎重な判断が求められそうです。



 ハンドドライヤーを販売するA社に取材したところ、以下のような回答が得られました。


 ハンドドライヤーを使用した際の細菌繁殖・拡散について、社内評価を行い、以下の結果を得ております。

  • ハンドドライヤーから出る空気内の菌数は、設置されている空間の菌数と有意差がない。
  • ハンドドライヤー使用前後で手の表面に存在する菌数は増加しない。

 以上の結果より、ハンドドライヤーを使用することにより、手の表面や空気中の細菌が増殖する可能性は低いと考えられますが、衛生的にお使いいただくためには、定期的な清掃の実施をお願いしております。


 A社による評価実験では、正しくハンドドライヤーを使用した前後の「空気内の菌数」「手の表面に存在する菌数」に有意な変化は見られなかったとのこと。あくまでA社の実験に基づくかぎり、少なくとも「ハンドドライヤーの風」に衛生上問題がある可能性は低いといえそうです。

 もちろん、これらはハンドドライヤーを清潔に保っている前提です。A社も「衛生的にお使いいただくためには、定期的な清掃の実施をお願いしております」としており、定期的な清掃と、正しい使い方を心掛ける必要があるでしょう。

 なお国立感染症研究所は、Twitterで話題を呼んだ資料について「拡散されているのは古い資料であり、研究者がコロナウイルスへの対応に追われていることからも個別の回答は難しい」としています。

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