ITmedia ガジェット 過去記事一覧
検索
ニュース

まずクリアできる時点ですげぇよ! 伝説の超高難度格ゲー「カイザーナックル」のRTA走者が現れRTA界がざわつく

まさか走る人がいたとは……。

advertisement

 実時間でのゲームの最速クリアを目指す「RTA(リアルタイムアタック)」で、先日、知る人ぞ知る格闘ゲーム「カイザーナックル」のRTA動画が投稿され、RTA界隈(かいわい)がざわついています。先駆者がまだいないこともあって、タイム自体はまだまだ更新の余地がありそうですが、そもそも「カイザーナックル」というゲームを知る人であれば「RTA動画が投稿された」というだけで、それがどんなにとんでもないことであるかが分かるでしょう。本記事では「カイザーナックル」がどんなゲームで、なぜ“走っただけで偉業”といわれるのかを解説しつつ、動画を投稿した“冷椎”assaultrios)氏のコメントも併せてお届けします。





カイザーナックルRTA 最初に投稿したのは難易度「イージー」でのRTA。10:50:53という記録よりも、RTAを行ったこと自体への驚きがコメントにあふれています

カイザーナックルRTA 難易度「ベリーハード」は2度に渡り投稿。一度目は12:17:86、二度目は11:50:63という記録を打ち立てました

並みのプレイではクリアすらおぼつかない

 「カイザーナックル」は1994年にアーケードでリリースされた対戦格闘ゲーム。続編のリリースや家庭用への移植はなく、決してメジャーとはいえないタイトルです。

 その一方で「カイザーナックル」が一定の知名度を獲得しているのは、隠しボス「ジェネラル」の存在が大きく影響しています。一部では“対戦格闘ゲーム史上最強のラスボス”とも評されるジェネラルですが、その性能はとんでもないもの。通常技のスキはほぼなく、スライディングはこちらがガードした場合ジェネラル側の続く攻撃が連続ガードになるという超性能。極端な話ジェネラルにスライティングをひたすら連発されたらタイムアップまで何もできません。さらには出始めから出終わりまで完全無敵のワープ技や、正面・斜め45度・ほぼ真上の3方向をカバーする凶悪な飛び道具も。“1人だけ別のゲームのキャラクター”といわれるのもうなずけます。


カイザーナックルRTA 空中ダッシュも無敵時間のある前転もないゲームで繰り出される、無慈悲な3方向飛び道具

 また「カイザーナックル」はジェネラルを抜きにしても非常に難易度が高いゲームで、それなりに格闘ゲーム経験のある筆者でも、以前遊んだ時は「ステージ3がやっと」といったところでした。とにかくCPUの超反応がえげつなく「飛ぶと大体落とされる」「地上戦でもことごとく技がつぶされる」と、ジェネラルどころかクリアさえもまるで見えない状態。なぜ“RTA動画が投稿されただけで偉業”といわれるのか、少しは伝わったでしょうか。


おれの知ってる「カイザーナックル」と違う

 冷椎氏はイージー、ベリーハードでそれぞれRTA動画を投稿していますが、どちらの難易度でも序盤のパターンが少し変わるだけで、中盤以降のCPUの強さはほとんど変わらないとのこと。キャラクターはスピードに長けた「月光」を選択しています。


カイザーナックルRTA キャラクターは月光を選択

 どちらの難易度でも目を引くのは、相手の特定の行動を誘うパターン化。「CPUの起き上がりにあえて近づいておき、相手が技を出してくる前提でカウンターやコンボを狙う」「プレイヤーのジャンプに反応してジャンプ攻撃を仕掛けてきたCPUを、空中飛び道具の“黒十字”で迎撃する」といった動きが随所に見られました。

 ラストのジェネラル戦では、バックジャンプから前方への二段ジャンプで上記の3方向飛び道具の隙間を鮮やかに通り抜ける立ち回りを披露。さらに着地後はしゃがみ弱攻撃でジェネラルとの間合いをていねいに調整し再度飛び込む――というパターンで攻略しています。多少CPUが予想外の動きをしてもすぐにリカバリーをする姿も含めて、記憶にある「カイザーナックル」よりも簡単に見えてくるほど鮮やかなプレイでした。


カイザーナックルRTA 小足による間合い管理が完璧

RTAはスコアアタックの息抜きだった!?

 そんな「カイザーナックル」のRTAを成し遂げた冷椎氏(※ニコニコ動画での投稿者名は「かわいいライオス」氏)に、なぜ走ろうと思ったかなどを聞きました。

―― 冷椎さんと「カイザーナックル」との出会いを聞かせてください。

冷椎氏:高難易度のゲームが大好きで(マゾではない)クリア者が少ないアーケードゲームを探していたところ、ジェネラルのうわさを聞いたんです。そこでダメ元でよく行くゲーセンのサイトに稼働希望のメールを出してみたところ、快く設置してくれたのが出会いでした。

―― 実際にプレイしてみてどうでしたか?

冷椎氏:格ゲーを全然やらない身なのでコマンド入力の練習から始めたレベルですが、初めてプレイしたときは2体目の時点で何をしてもまともに通らず一方的にボコボコにされて……思った以上に楽しめそうという印象でした。

―― スコアアタックやRTAなどの「記録」を目指してプレイするようになったきっかけは?

冷椎氏:どのゲームをやるにもクリアが安定してくるとスコアを狙いたくなるんです。「カイザーナックル」もジェネラル撃破が安定してきたころに、毎度目標なしにジェネラルを倒してもしょうがないのでスコア狙いでやってみようと。そうしたら、思いのほかほとんどの敵で即パーフェクト安定させられるパターンを作れたので、全1(全国1位)狙いでスコアアタックをしてみることにしました。

―― スコアアタックからRTAにも足を踏み入れたのですか?

冷椎氏:全国1位を更新するためには全部の敵でパーフェクト取る必要があって、ワンコインの通しプレイだと誰かしらで凡ミスしてパーフェクト逃して更新できない、というのがもう幾度となくあるんですよ。その気分転換にやってみたのがRTAでした。

 どのみちスコアアタックでは相手を早く倒す必要があるので、スコアアタックしつつパーフェクトを逃したらRTAに切り替え、って感じでやっていたんですが、春休み真っ只中なうえ、コロナ騒動で就職活動もほとんど中止になって暇ななか、基板が手に入ったので結果が出やすいRTAに集中してみました。

―― 月光を選んだ理由について聞かせてください。

冷椎氏:もともとマッコイを使っていたんですが、マッコイ以外でも誰かクリアしたいな、と思ったときにノーコンクリア動画をあさったんですよ。「カイザーナックル」のノーコンクリア動画って何個かあがってるんですが、月光とボギーの動画だけなかったんです(そのとき見つけなかっただけでよく探したら月光はありましたが)。じゃあ、このどっちかで1からパターンを構築してクリアを目指そうと。月光を選んだのは、マッコイが機動力のあまりないキャラなので機動力のあるキャラを使いたかったのが理由ですね。

―― 月光の対CPUでの強みはどんなところにありますか?

冷椎氏:移動速度もジャンプ速度も全キャラ中2位で、なおかつ専用の二段ジャンプと無敵バックステップを持っているのでCPU相手に困ることがほとんどないんです。ジャンプの落下速度も速いので敵が攻撃を出すのと同時にジャンプで飛び込み、敵の攻撃モーションが終わる前に攻撃をたたき込んでダウンを取れるので、大ダメージを与えつつ起き攻めをすることが可能なんですよね。

 あとは一部を除いた通常キャラ相手なら、HP満タンから1回のコンボで気絶に持っていけるのも強みですね。気絶させてもう一度同じコンボをたたき込めばそれだけで敵の体力を7割〜8割持っていけるんですよ。中ボス以降はそんなに食らいませんが、それでもこのゲームでここまで一方的にダメージを与えられることはなかなかないです。月光以外でも気絶確定コンボを持っているキャラは何体かいるんですが、コンボ入力が難しいんですよね。


カイザーナックルRTA 動画上では、ジャンプ中の特殊技で相手の対空技を回避。先に着地して地上で反撃するという流れが数多く見られました

―― 他のキャラクターでのノーコンティニュークリア経験はありますか?

冷椎氏:和也、バーツ、梨花、ボギー、マッコイではノーコンティニュークリアができました。ライザとマルコはあと一歩なんですよね、(ジェネラルに)1本取ったことは何度もあるのでもうすぐできるかと。あっ、武龍はそもそも使ったことがないです。

―― 今後「カイザーナックル」の「記録」について目指していきたいものはありますか?

冷椎氏:スコアアタックは変わらず全1の更新を目指したいですね。ただ、現状の全1がどの難易度なのか、どのキャラを使ったのかがわからないので更新したとしても申請はせず自分のアカウントで報告して終わりにします。RTAは恐らく俺しか走る人がいないので、ひたすら自分の出した記録を更新していこうかと思います。イージーもベリーハードも10分30秒切りが目標ですね。

―― 動画や本記事などで「カイザーナックル」に興味を持った方になにかメッセージがあればお願いします。

冷椎氏:そもそも稼働数がもはや片手で数えられるレベルという可能性がありますが、もしも遊んでみる時はJ・マッコイを使って、1体目の相手は梨花を選んで強Pのパンチとしゃがみ強Kのスライディングを連打しましょう。対空はしゃがみ強Pで即できますぞ。


カイザーナックルRTA 右側のキャラクターが初心者にオススメのマッコイ



 RTA動画を見たり、冷椎氏からお話をうかがったりして感じたのは、思った以上に「カイザーナックル」の攻略は洗練されていたということ。ただCPUの超反応が厳しいだけのゲームだと思っていたのですが、それを逆手に取って構築されたパターンはある種パズルゲームの解法を見ているようで「カイザーナックル」を見る目が変わりました。

 もしも「カイザーナックル」をどこかで見かけたら、久しぶりにワンクレジット遊んでみたいですね。今度はCPU4人目を目指して。


オピオン


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る