こんにちは。映画だ〜いすき城戸(@sh_s_sh_ma)です。
映画版の「キャッツ」、覚えてますか。つい最近、SNSで話題になりましたね。海外のレビュワーたちによる「5点満点で星をつけるなら、玉ねぎ」「不浄なポルノ」などユーモラスかつ辛辣(しんらつ)な評論が話題となり、日本でも「気持ち悪い」など酷評が相次ぐ事態となりました。
SNSのこの感じ嫌なんですよね。いや、ちゃんと鑑賞したうえで酷評する分にはもちろんいいんですよ。しかし、ユーザーの中にはバズっているレビューだけ読んで「キャッツ?ああ見てないけどクソ映画なんでしょ笑」となっている人も多いと思うんですね。見た人にとっても見てない人にとっても、こういう形で有名になってしまった作品はネット上である種のオモチャになってしまうという、その事実は否定できないところだと思います。
実際、僕もその1人です。色んな人のキャッツ評を読んで、結局それで満足してしまい鑑賞するのを見送ってしまいました。キャッツだけではなく、他人の評論を聞くだけで満足してしまい、見ていない映画がたくさんあります。
それではいけない! 作品に対して真摯(しんし)に向き合うためには、自分の目で確かめなくてはならないのです!
というわけで、今回はちまたで駄作だとされている映画を鑑賞し、あらためてレビューをしてみたいと思います。面白くないと言われているものを何本も観なくちゃいけないのは単純に気が進みませんが、やはり何事にも誠実にいなくてはなりませんからね。
あと、謝っておきたいことが1つ。「キャッツ」はまだDVDになっていないので、鑑賞できておりません。散々前フリに使っておいて、本当に申し訳ないところです。ぜひ第2弾にご期待ください。
「絵文字の国のジーン」
2017年、アメリカ制作の3Dアニメーション映画です。本国では公開当初から酷評の嵐で、映画批評サイト「Rotten tomatoes」での批評家満足度は現時点でたった7%。その年のワースト作品を決める映画祭ゴールデンラズベリー賞では、最低作品賞・最低監督賞・最低脚本賞・最低スクリーンコンボ賞の4部門を受賞しています。ひどいですね。
アレックスという少年の所有するスマホの中にある絵文字たちが暮らす国、テキストポリス。“ふーん”顔を担当する主人公ジーンは、感受性豊かな性格が災いし“ふーん”顔としての役割を全うできず、不具合と認定され逃亡犯になってしまう……。
子ども向けの作品ですね。ハードルが下がっていたせいか、そこまで悪くなかったです。絵文字たちの生活の描写はアイデアにあふれていて、ビジュアルイメージもいい感じ。「まったく魅力がない」と評されるキャラクターも、僕は結構かわいいと思ってしまいました。特にヒロインがかわいいので、色恋沙汰にも少しときめいてしまいましたよ。ストーリーも分かりやすくて、少なくともターゲットである子どもたちは素直に楽しめる作品だと思います。問題は、大人が見た場合……。
脚本の雑さは無視できないところでしょう。ネタバレになってしまうので詳しくは話せませんが、一本道を行って帰ったあと、最初から「こうすればよくない?」とずっと思っていた結末に着地する捻りの無さはちょっと物足りません。
「スマホの中の絵文字たち」というテーマも、ビジュアル面では素晴らしいものの、お話的には違和感だらけ。まあファンタジーですから、その辺はある程度開き直ってる部分なのかもしれません。「そんなこと言ったらそもそも絵文字が生きてるわけないじゃん」と言われればそれまでですし。
そして何より、こんなにも現代的なテーマを扱っている割に、作り手の感覚が相当古いように感じます。作中には“ネット荒らし”という存在が登場するんですが、そのビジュアルが無精ひげにメガネの太ったおじさんという、今どきそれは……というシロモノ。「仕事か恋人でも見つかればおとなしくなる連中さ」と一蹴される様は笑ってしまいましたが。
他にも、「スマホのパスワードは好きな子の名前に違いない!」とか。今どき好きな子の名前をパスワードにする奴っているのか? もしいたらやめたほうがいいよ。
こんな感じで、考えればいくらでも欠点が出てきそうな作品ではあるんですが、個人的には普通に楽しめた作品でした。細かいことは考えず、ケラケラ笑いながら見る分には十分な作品ではあると思います。今ならNetflixやAmazonで配信してますよ。
「エアベンダー」
超人気アニメ「アバター 伝説の少年アン」をM・ナイト・シャマラン監督が実写化した2010年のアメリカ製ファンタジー映画。Rotten tomatoesの批評家満足度は現時点で5%、ゴールデンラズベリー賞は5部門を受賞と散々な評価を受けています。後に「ヴィジット」「スプリット」、そして「ミスターガラス」と傑作を連発したことで見事カムバックを果たしたシャマラン監督ですが、こういう題材は向いてなかったんだろうなあ。
民がそれぞれの能力を有する、火の国、水の国、土の国、気の国の4つの王国に分断された世界。世界を支配すべく侵略を開始した火の国は、4つのエレメントを全て操ることのできる唯一の存在「アバター」を探していた。それから100年後、水の国に住む兄妹カタラとサカは湖で偶然出会った少年・アンこそがその「アバター」だと知り、火の国から彼を守るため、そして世界に秩序をもたらすために、アンと共に戦いに身を投じていく……。
これは評判通りめちゃくちゃつまんなかったです。なんだかお話がイマイチ理解できなかったなあ。僕の頭が悪いのもあると思うんですけど、1つ1つの展開というかエピソードというか、個々のシーンがうまくつながっておらず、150分くらいある長尺を無理やり100分に縮めたようなブツ切り感。キャラクター描写がマジでペラペラなこともあって、まったくお話に乗っていけなかったです。色恋沙汰なんかもあるんですけど、なれ初めの描写が薄い(というかほとんど無い)せいでときめくこともできず。原作を知っている方ならすんなり入り込めるのかもしれませんが、僕としてはまったくルールを知らないボードゲームを観戦しているかのような気分でした。
ただ、中国拳法の型は素直にカッコ良かったし、子供心をくすぐられるアクションもありました。細かいところには一切目を瞑って、この世界観を少しだけ楽しんでみるくらいならアリではないでしょうか。
「ハウス・オブ・ザ・デッド」
SEGAによる人気アーケードゲームを実写化した、2003年のアメリカ製ホラーアクションです。まあ〜ビックリするくらい評判が悪くて、Rotten Tomatoesでは現時点で批評家満足度3%、世界最大規模の映画情報サイトIMDbでは、何と驚異の2.0点(10点満点中)を獲得しています。単純なスコアだけで言えば、全ゾンビ映画の中でもっとも評価の低い作品ということになるのです。すさまじいですね。
とある島で開催されるパーティーに向かうため、船着き場へやってきた主人公たち。既に船は出てしまい、地元の漁師に島へ連れて行ってくれと頼みますが、「その島には悪霊がいる」と漁師に断られてしまいます。どうしても島に行きたい主人公たちは、漁師に法外な報酬を握らせ、なんとか出航にこぎつけるものの……。
「いや、そこそこ面白いじゃん!」というのが率直な感想。なぜかところどころゲーム画面が挿入されたり、マトリックスを意識したのであろうバレットタイム(被写体を周り360度から撮影する手法)が死ぬほどダサかったり、登場人物がとにかくバカだったりと、確かに駄作ポイントはいくらでも見つかるものの、そんなのはB級映画ではよくある事。グロもエロもきっちりあるし大爆発も起こる、決して優れた作品とはいえないけれど、夜中にテレビでやってたら最後まで観ちゃうくらいの魅力は維持しているように思えるのですが……。
そもそも原作がゲーセンに置いてあるアーケードゲームということで、わざわざ映画化する必要性がまったく無いのですね。原作ファンからは「B級ホラーを作るために名前を使われた」という声も上がっているようで。そういった側面が、ここまでの低評価につながったのかもしれません。原作について何も知らない、B級ホラー大好きな自分としては、間違いなく駄作だけど割と楽しかったよ、という、それくらいしか言うことのない作品でした。
ちなみに本作の監督ウーヴェ・ボルという人物は、数々のゲームを実写化してはファンたちを激怒させてきた悪名高き存在。2008年にはゴールデンラズベリー賞の『最悪功績賞』を受賞し、彼にゲームを実写化させないための署名活動まで行われていたといいます。僕も彼の作品をすべて見ているわけではないんですが、『ザ・テロリスト』という傑作なんかもあったりするので、興味のある方はぜひ。興味なんかないか。
「デビルマン」
言わずと知れた、邦画屈指の駄作ですね。まさに「クソ映画」の代名詞として何年も君臨し続けているこの作品を無視することはできません。既に散々語りつくされている愛すべき名作ですが、あらためてレビューしてみようと思います。
親友・飛鳥了の家に訪れた主人公・不動明。先住民族である“デーモン”の研究を父から引き継いだ了により、明の肉体は“デビルマン”へと変えられてしまう。人間の意思を持ったままデーモンに身体を奪われてしまった明は、大切な人を守るため戦うことを決意する……。
はい、ちまたで言われている通りヒドい映画でした。このあらすじを書くのも一苦労なほど、ストーリー展開はメチャクチャ。原作を読んだことが無い方でも、かなり展開を端折っていることは容易に想像できると思います。とにかく事の詳細が分からないまま進んでいくので、こちらとしては誰に感情移入することもできず、ただただ傍観することしかできないのですね。登場人物の行動もセリフもおかしなものばかり。「神様って信じる?」という問いに「神様はいるのか?」と答える主人公に何ができるっていうんだ?
他にも、笑わせるために撮っているかのようなシーンの連続。切られるために突っ込んで切られる人たちや、撃たれるために突っ込んで撃たれる人たち。いくらひどい脚本だとしても、このへんはさすがにどうにかなったんじゃないか。個人的に一番笑ったのは、人間を虐殺している親友を見つけたときの「おー!生きてたのか」という主人公の第一声。何だそりゃ? 殴れよ!
さらに輪をかけてひどいのが俳優陣の演技です。難しい役柄とはいえ、ここまでひどい演技はなかなかありません。途中一瞬だけ出てくる小林幸子が一番演技うまかったです。この学芸会レベルの芝居がこの映画最大の欠点……と言いたいところなんですが、正直、演技がまともだったらこの映画、ただのかわいげのない駄作になっていたと思うのです。
このデビルマンという映画は、「ここさえ良ければ……」という要素がありません。全て平等にダメなのです。たった1つで作品全体を食いつくしてしまうレベルの欠点だけで構成されたような映画。にもかかわらず不思議な魅力を維持しているのは、俳優たちの演技があってこそではないでしょうか。あの空っぽな演技が、このダメダメな映画にはふさわしい。仮に演技だけ優れていたら、きっと台無しになっていた。あらゆる面においてまったくダメな事こそが、この作品の最大の魅力であり、奇跡だといえるでしょう。
良いものはもちろん、悪いものにも悪いものなりの存在意義があるということを学ばせてくれる一作。自分に自信のないあなただって、きっと誰かにとっては宝物のような存在なのです。
「プラン9・フロム・アウタースペース」
最後にこちらを紹介させていただきます。ご存じの方も多いであろう伝説の作品。史上最低の映画監督として世界中の映画人から愛されるエドワード・D・ウッド・Jr、通称エド・ウッド監督による1959年の代表作です。あらゆる方面から語りつくされてきた本作ですが、やはり無視はできないということで、改めてレビューさせていただきたい。ちなみに、なだぎ武やヤナギブソンらによるお笑いユニット「ザ・プラン9」は、この映画のタイトルが由来となっているんですよ。
【あらすじ】ある日UFOが到来し、墓から死体をよみがえらせ始めてしまった! なんで?
はい、あらためて鑑賞してみましたが、言うまでもなく最低映画でした。
この映画の最低たる所以(ゆえん)その1、それは圧倒的なチープさです。パッと見の予算は1800円くらいに見えるほど。作中には飛行機のコックピットやUFOの内部なんかが登場しますが、椅子と板を並べて撮っただけのシロモノ。さらにはガンマイクの影がくっきりと写り込んでいたり、何度も同じシーンが使いまわされたりと、設定が壮大な分、あまりの安っぽさに脱力してしまいます。
最低たる所以その2。まったくもって理解しがたい難解なストーリー。UFOで地球にやってきた宇宙人(3人)は、地球人に争いをやめさせ友好的な関係を築くことが目的であると語り、その手段として“プラン9”を実行します。そのプランとは、墓から死体をよみがえらせ人間を襲わせるというもの。意味が分かりません。結局、宇宙人と地球人は戦争状態になってしまいます。当たり前です。(※このストーリーはあくまで私個人の解釈です。あまりの難解さに、見る人によって解釈は変わってくるかと思います)
最低たる所以その3。メインキャストの死去により破綻してしまった制作過程。クランクインして数日後、墓からよみがえる老人を演じる俳優ベラ・ルゴシが亡くなってしまいます。それにもかかわらず、撮り直しや脚本の書き直し等が行われないまま撮影は続行。辛うじて撮影の済んでいたほんの数分の登場シーンを使いまわし、急きょ用意された代役はマントで顔を隠し続けながら演技しています。そのあまりにも不自然な演出に、観客は興覚めしてしまうこと必至でしょう。
本作のすごさが多少は理解いただけたでしょうか。このように羅列していけばキリが無いほど、本作には最低ポイントがあふれています。実際、鑑賞している間は非常に苦痛でした。とにかく退屈極まりなく、素直な視点でこの作品を語ろうとしても、「つまらない」の一言で済んでしまうのです。
ただ、もちろん良い部分もあります。本作を鑑賞しながらひしひしと伝わってくる、作り手の強いメッセージ性です。
終盤、宇宙人による長い演説シーンがあります。内容はほとんど意味不明なのですが、その中にこんな一節があるのです。「われわれは友人として忠告に来た。君たち地球人は、火器から手りゅう弾に始まり、原子爆弾、あろうことか水素爆弾まで作ろうとしている。そして近い未来、太陽光線を利用したソーラー爆弾で太陽系を破壊してしまうだろう」。それに対し、地球人は「ソーラー爆弾があれば、我が国は最強の存在になれるな」と口走ります。宇宙人はその発言に、「だから貴様らは愚かなのだ。バカ! バーカ!」と激怒するのです。本当にバカバーカと言います。
バカは誰だよという感じですが、ここから伝わってくるのは海兵隊で実際に戦争を経験したエド・ウッドの強い反戦意識です。いくら手先が不器用だからって、作品にかける思いや情熱はしっかりと伝わってくる。この作品と共に、エド・ウッドが世界中で愛される理由はここにあるのかもしれません。
なんとか良い感じに締めてみました。このエド・ウッドという人物に関しては、1994年にティム・バートン監督・ジョニー・デップ主演で映画化されています。タイトルはズバリ「エド・ウッド」。そちらもあわせて鑑賞してみてはいかがでしょうか。
というわけで、駄作とされている映画を鑑賞してみました。ハードルが下がりきっていたせいもあるかもしれませんが、割と楽しかったです。どんな作品であれ作り手の情熱が詰まっているということを忘れずに、作品と誠実に向き合っていきたいものですね。他人の評価が全てではないのです。
<城戸>
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