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1990年代の東京をひたすら撮影 動画数百本を投稿したYouTubeチャンネルがすごい(1/2 ページ)

当時の生活が伝わってくる。

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 普段何げなく通り過ぎる街角も、数十年後には見たくても見られない特別な風景に変わっているかも……? YouTubeに投稿された、1990年代の東京街並みを撮影した動画がそんなことを思わせてくれます。



今では見ることができない風景

 駅は今ではICカードでピッと入場できますが、自動改札が導入される前は駅員が手作業で切符を切っていました。1990年に撮影されたこの動画では、改札パンチ(正式名称:改札鋏)をカチカチカチカチ……と使い、通勤ラッシュを高速でさばく駅員さんの様子が確認できます。

 動画を撮影したのは写真家・ビデオグラファーとして長年活動しているライル・ヒロシ・サクソンさん。1984年から東京に住んでいるというサクソンさんは、1990年ごろから独学で動画撮影や編集を開始。「Tokyo Video Project」と題し、東京の自然な街並みを撮影していきました。

 サクソンさんのYouTubeチャンネルを開いてまず驚くのが、その物量。3年半で4台のカメラを使いつぶしたというだけあり、東京の街並みを収録した動画数百本がずらりと並びます。


こんな動画が大量に

 まだビデオカメラが高価だった時代。サクソンさんはなぜ地味な「街並み」を撮影しようと思ったのでしょうか? 本人にインタビューしました。


後世に「こうだったよ」と伝えるため

――先日、新宿駅の動画がTwitterで話題になっていました。

サクソン あー、これは知りませんでした。



――他の動画も拝見したのですが、当時の生活や街の雰囲気が伝わってきて、非常に貴重な映像だと感じました。

サクソン ありがとうございます。当時撮影した目的はそれぞれの場所の雰囲気を記録するためだったので、それが伝わったのならとてもうれしいです。見た人が当時の場所を歩いて、見て回って、そこにいるかのように感じてもらえればいいなと思っています。

――当時はなぜ撮影を思い立ったのですか?

サクソン もともと写真を撮るのは好きだったので、サンフランシスコに住んでいたときも写真を撮っていました。それで東京に来てからも写真を撮り続けていました。

――動画は個人の鑑賞用に撮りはじめたのですか?

サクソン いくつかのビデオは友人や家族にも見せました。また、大学生の友人を介して他の学生にビデオを見てもらったところ、「つまらない!」「アクションがなく盛り上がりがない」「歌舞伎町が見たい! 芸者さんが見たい!」と、ばかげた残念な反応をもらいました。アホか! “普通の日本”の良さは、なかなか海外で理解してもらえません。

――(笑)。

サクソン 西洋人が日本に流入しはじめた明治初期(とその少し前)までさかのぼっても、“普通の日本”の海外向けレポートは誰も興味を持ちませんでした。

 私も海外のテレビ局に声をかけてみたことがありますが、見向きされませんでした。観光客用のスポットではなく、普通の日本の風景に興味を持ってくれるかもしれないと思ったのですが、そうではありませんでした。

 異国情緒があったり、変わっていたり、驚きがあったりしてはじめて興味を持ってくれる。残念なことです! 幸い、ここ10年くらいで、日本は単なる観光地の集まりではないと認識されるようになってきたように感じます。


1991年の通勤ラッシュ
2008年に同じ場所で再撮影

――展示会への出展などは?

サクソン 展示会は数回行いました。一番大きなものは、2010年に銀座「奥野ビル」で行ったインスタレーション「20年前の東京展」です。

 撮影していた当時はビデオの使いみちは分かりませんでしたが、東京の普通の風景を記録に残したいという気持ちが強く、将来的になにか方法があると信じていました。特定の目的のためにビデオを録画したというよりは、記録しておくべきだと感じたから録画したという感じです。後世に「こうだったよ」と伝えるために。


2010年に行われた展示会の様子。銀座「奥野ビル」は築88年(2020年現在)、昭和初期に建てられた高級マンション。現在はギャラリーとしても使われている
展示会で上映された映像

――1990年代と2020年代、撮影する上で変化は感じますか?

サクソン 平成2年は技術的に難しくても、社会的には撮りやすかったです。令和2年は技術的には簡単になりましたが、社会的にどんどん難しくなっています。私の撮る量が年々減っているのもこのためです。


 撮影量が減っていると謙遜(?)するサクソンさんですが、YouTubeチャンネルでは2019年に撮影された動画が500本以上投稿されており、2020年の動画も6月1日時点で80本弱確認できます。街並みの記録を、今後もたくさん残していってもらいたいですね。

取材協力:ライル・ヒロシ・サクソンさん(YouTubeTwitter公式サイト


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