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意味がわかると怖い話:「独り暮らし」(1/2 ページ)

出かけたとき、鍵を閉め忘れた気がする。

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 普通に読んでいればなんてことないお話。だけどひとたび気づくと、全く違う世界が見えてくる……「意味がわかると怖い話」を紹介する連載です。

意味がわかると怖い話
「独り暮らし」

独り暮らし

 仕事を早めに切り上げて帰ることにした。

 今朝、寝坊してしまって慌てて家を出る時に、どうにも玄関の鍵を締め忘れたように思うのだ。電車に飛び乗ってから、ふと不安が頭をもたげて、一日ずっと心配だった。

 独り暮らしはこういう時に困る。取られるような金目のものなどない貧乏住まいとはいえ。

 アパートに帰り、玄関のドアノブを回す。ガチャ。……鍵はちゃんとかかっていた。

 ま、そんなものだ。一安心して鍵を開け、部屋に入って灯りをつける。

 私はすぐ、「それ」に気づいた。座卓の上に、見覚えのない黒い紙袋が載っている。

 なんだこれ。私が買ったものじゃない。

 ぞわっ、とする。

 部屋の掃き出し窓に目をやる。窓にはちゃんと鍵がかかっている。

 え? え? と思っていると、ズボンのポケットの中でLINEの通知音がした。

 半ば無意識にスマホを手に取ると、友人からのメッセージだった。

 「今、借りてた漫画返しに来たんだけど、いなかったから置いてきたよ」「コンビニでも行ってるの?」「鍵は開いてるし電気はつけっぱなしだし、不用心だから気をつけなよ」

 紙袋の中を覗くと、確かにその子に貸していた漫画が入っていた。

 なーんだ、びっくりした。


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