自称“0.2発屋芸人”ですよ。の最近は謝罪代行が大人気! 全力の「あ〜いとぅいまて〜ん」にTwitterで依頼殺到
座右の銘は「さんずの川まで、あ〜いとぅいまて〜ん」だというですよ。さんを取材しましたYO!
「あ〜いとぅいまて〜ん」のギャグで知られるお笑い芸人の「ですよ。」さんが自身のネタを生かし、2019年から謝罪代行サービスを展開。Twitterを中心に依頼が殺到してます。お笑い芸人はなぜ「プロ謝罪師」となったのか。ご本人をインタビューしました。
とっさに生まれた「あ〜いとぅいまて〜ん」
「YO!YO!ですYO! YO!YO!ですYO!」と登場し、「ですよ。の最近は、あやまることばっか〜」と自身の失敗談を語るネタでブレイクを果たしたですよ。さん。日本テレビ系「エンタの神様」への出演をきっかけに「あ〜いとぅいまて〜ん」のギャグは全国区に広まりました。
そんなですよ。さんが、お笑い芸人を目指したきっかけは意外にも“挫折”。一緒に芸人を目指していた同級生から高校卒業直前に、「男は家族のために、嫌な仕事でも60年働かなくちゃいけないんだよ」と現実を突きつけるような言葉を投げかけられ、衝撃を受けたと言います。
「嫌なことをやる60年よりも好きなことを続ける30年を選びたかった」ですよ。さんはこの出来事をきっかけに一念発起。高校卒業後は、お笑いと同じくらい大好きだったサッカーを極めるべく、サッカー留学の道を選びました。当初はブラジルへのサッカー留学を目指したものの、「留学費が600万円ほどかかる」と知って断念し、当時サッカー途上国として注目されていたボリビアのチームに自力で所属。海外でサッカーを続けたもののうまくいかず、4年で帰国の途に就きました。
当時の心境についてですよ。さんは「周りから『こいつサッカーダメだったやつだよな』と思われるのが嫌で。何とか周りを見返したくてお笑いをもう一度志しました」と振り返ります。
「吉本総合芸能学院(通称NSC)」卒業後は、ルミネtheよしもと(新宿)で1分ネタを披露する機会に恵まれ、「NSCではかなりウケていた」という1人コントネタを自信満々で披露したものの、会場がシーンと静まり返るという、まさかの大スベリが発生。「とっさに『謝っちゃえ!』と出てきたのが、『あ〜いとぅいまて〜ん』」でした。
その後はリズムネタのオーディションのために「YO!YO!ですYO! YO!YO!ですYO!」というフレーズのネタも完成しましたが、当時は「ですよ。の最近は、テンションさがりっぱ〜」とテンションが下がるようなあるあるをリズムネタとして披露しており、「YO!YO!ですYO!」と「あ〜いとぅいまて〜ん」を組み合わせたのは「エンタの神様」が初だったと言います。
プロ謝罪師としてさまざまな人に代理謝罪
「『あ〜いとぅいまて〜ん』を僕は生涯をかけてやっていこうと思っているんです」と語るですよ。さんに転機が訪れたのは2019年のこと。講演会を頼まれた際に自身の人生を振り返ったところ、「これまですごく人に助けてもらうことの多い人生だったと気付いた」と言い、「『あ〜いとぅいまて〜ん』というギャグが人のためなれば」と謝罪代行サービスを思い付きました。
2019年9月に「あなたの代わりに謝ります」「年間で1万回『あ〜いとぅいまて〜ん』の素振りをしているので謝る事には自信があります。交通費負担。相手に許してもらえなかったら無料、許してもらえたらお気持ちでOK。詳しくはDM下さい」とツイートしたところ、3万8000件以上の“いいね”が寄せられた他、400件近い依頼が寄せられました。
――謝罪代行サービスはどのように依頼を受けているのでしょうか。
ですよ。:基本的には僕のTwitterのDMに内容を送っていただいています。会社(吉本興業)に反社チェックなどをしてもらってから、謝罪を代行しに行くという流れです。お気持ち代をいただいたときは会社に渡して、後から振り込んでもらっています。
――サービスを始めたばかりのころはどんな依頼が来ましたか。
ですよ。:初期で印象深いのは「Phantom Excaliver」というバンドのボーカルの方からの依頼で、「地方に遠征しに行った際に、ノリでベースの人だけを置き去りにして帰ってきたら本当に怒ってしまった。代わりに謝ってもらえないか」というものでした。バンドの練習中にボーカルの人からベースの人へあらためて謝罪したうえで、「これじゃ足りないと思うからこの人を呼びました」と僕が出て行って、「置いてけぼりにしちゃってあ〜いとぅいまて〜ん」と謝ったら笑って許してくれました。
――これまでで一番遠い場所の依頼はどこでしたか。
ですよ。:新型コロナウイルスの影響でまだ行けていないのですが北海道ですね。実際に足を運んだのは兵庫県が一番遠かったです。30代ぐらいの男性からの依頼で、「結婚記念日にいつも子どものお世話や家事などいろいろなことをやってもらっていることについて、ありがとうの意味を込めた謝罪をしてほしい」というほっこりするご依頼でした。
――これはユニークだったなと思う依頼があれば教えてください。
ですよ。:24歳の男性から、「電車でうたた寝していたら手に持っていたコーヒーをこぼしてしまって……」という依頼がありましたね。乗車率が低くて人にかかったりはしなかったそうで、すぐにティッシュで床を拭いてから駅員さんに事情を説明したら「大丈夫ですよ〜」という感じだったらしいのですが、「自分の中ですっきりしないので、ですよ。さんに僕の代わりに千代田線に謝ってほしいんです」と言われて。依頼者の方と一緒に、走っている千代田線の車両に向かって「コーヒーこぼしちゃってあ〜いとぅいまて〜ん」と謝りました。
――いわゆる“ガチ謝罪”もあるのでしょうか。
ですよ。:結構ありますが、「友達の家に泊まりに行って寝てる時に友達の財布から1万円盗んでしまったので代わりに謝ってください」という案件はお断りしましたね。それはさすがに犯罪ですし、僕ができるのはあくまでも“正義の謝罪”のみですということで。
――「相手に許してもらえなかったら無料」というのが、結構すごいなと思ったのですが、実際にそういうケースはありましたか。
ですよ。:あります。22歳の女性からの依頼で「友達と行くはずだった夏フェスに遅刻してしまい、友達がお目当てにしていたバンドのステージが見られなかったことについてものすごく怒っているので謝罪代行してほしい」という依頼がありまして。公園で待ち合わせてから「謝罪代行サービスをやっているのですが」と説明したうえで「夏フェス2時間遅刻しちゃってあ〜いとぅいまて〜ん」と謝ったら、「てめぇ、夏フェスなめんなよ」と公園の砂をかけられちゃいましたね……(苦笑)。
――そ、そんなことがあるんですね。
ですよ。:あとは絶賛夫婦げんか中という状態のご夫婦で、旦那さんからのご依頼だったんですが、僕が「おじゃましまーす」と入っていっても、奥様はテレビを見ていて全く僕の方を見てくれなくて目も合わせてくれない状態だったんですね。そこから僕が謝罪代行サービスの説明をさせてもらって、旦那さんの代わりに「いつも迷惑かけてあ〜いとぅいまて〜ん」という謝罪をしたら、奥様が一言「この状況が一番迷惑です」と仰って。
――そのあとどうなったんですか。
ですよ。:許してもらえなかったので「無料です」とお伝えしたんですが、旦那さんから「せっかく来ていただいたので、交通費とお気持ち代を渡したい」と言ってもらえました。このように謝罪を代行しても関係が悪化してしまうという場合もあります。
――いろいろなパターンがあるんですね。
ですよ。:そうですね、ただ僕自身は案件を全部メモしたりはしていないんです。この謝罪代行サービスはあくまでも「僕のネタが人の役に立てば」という思いでやっているものですから、「謝罪代行サービスをネタにしてやろう」とか「これで有名になって這い上がってやろう」とかは全然思っていないというか。
また実際に謝罪を代行してみると「役に立ったな」と思う瞬間も結構あったりするんですよ。本気でけんかしてしまったので謝罪を代行してほしいという依頼をしてくれた人からその後、「ですよ。さんのおかげで仲直りできました」という連絡がきたり。そういうお話を聞くと、「人のためにやり始めたサービスなのに、自分のためになってるなと。始めてよかったな」と思うんですよね。
――これまでで一番「やってよかったな」と思った案件はどんな内容でしたか。
ですよ。:女性の方からの「母親に親孝行してこられなかったことを代わりに謝ってほしい」というものです。お母さんがもともと「あ〜いとぅいまて〜ん」をやってくれたり、僕のファンだという話を聞いていたので「これは余裕をもってできる現場だな」と思っていました。
そうしたら当日、いよいよお家に入るというタイミングで「実は断られるのではと思って話せなかったんですが……」と依頼主の女性が話し始めて、なんでもお母さんが認知症の影響で攻撃的な性格になってしまっているというんです。僕は「全然大丈夫ですよ〜」ってお宅にお邪魔させていただいたんですが、お母さんはリモコンを投げつけたり、壁をたたいたりという感じで。ファンだと言ってくれていたので僕が自己紹介をしたら思い出してくれるかな? と思ったんですが、「なんだよお前! 誰だ、帰れ!」って怒っちゃいまして。でも「これまで親孝行してこられなくてあ〜いとぅいまて〜ん」と全力でやったらお母さんがちょっと笑ってくださったんですよ。そうしたら娘さんが泣き始めて。
後で聞いたところ、半年前ぐらいから認知症の症状が出ていて、「僕のネタで半年ぶりに笑ったところを見た」って言うんですよ。そのときは本当に人にためになったな。このギャグをやっててよかったなって思えました。
――ギャグのおかげで起きたうれしいことはありますか。
ですよ。:最近で言うと、欅坂46の菅井キャプテン(菅井友香さん)が、テレビで「あ〜いとぅいまて〜ん」をやってくださったのがうれしかったですね。僕は「やりたいことをやろう」という性格なので、強いメッセージの曲が好きなんですが、「サイレントマジョリティー」の歌詞は特に好きなんです。「サイレントマジョリティー」は普段から良く聞いてるし、欅坂46のことも好きだから、菅井キャプテンが僕のギャグを完璧にやってくださったというのは、本当にうれしかったです。
ほかにもジャニーズWESTの皆さんがライブで何度も「あ〜いとぅいまて〜ん」を披露してくださったり、乃木坂46のメンバーの方だったり、FUJIWARAの藤本さん、ハリウッドザコシショウさんなど本当にいろいろな方がこのギャグをやってくださっていて。本当にありがたいですし、うれしいです。
座右の銘は「さんずの川まであ〜いとぅいまて〜ん」、謝罪代行は仲直りのきっかけ
取材中、「謝罪」という行為にハードルを感じることはないかを聞いてみたところ、ですよ。さんからは「謝罪代行サービスと言っていますが、実は僕、謝罪はしていないんじゃないかと気づいたんですよ」と意外な返答が。
「あ〜いとぅいまて〜んは謝罪に対する一つのクッションとしてのパフォーマンスであって、仲直りのきっかけにつながるものなんです。だから本質的に謝罪しているのではなくて、全力で『あ〜いとぅいまて〜ん』をやる。それが僕の謝罪代行サービスなんです」と話してくれました。
また自身の芸人人生を振り返ったですよ。さんは、「1発屋芸人ではなく、0.2発屋芸人だと思っています」「自分の中でも全然一世なんて風靡してないですよ」と謙遜。
座右の銘にしているという「さんずの川まであ〜いとぅいまて〜ん」に恥じぬよう、毎日毎日「あ〜いとぅいまて〜ん」を一生懸命やっていくことが大切だと話し、ひたむきにギャグと向き合うことで、「僕が死んだあとでもこのギャグが残って、『ですよ。のギャグってすごかったんじゃないか?』って言われたら良いなって思っているんです。だから究極的にはゴッホみたいに死んでから売れてもいいと思っているんですよ」と笑顔を見せました。
また、ですよ。さんは、謝罪代行サービスと並行して、「あ〜いとぅいまて〜ん講習会」を不定期で開催中。受講時間2分半という驚異のスピードで「あ〜いとぅいまて〜んの正式なフォームなどをマスターできるとあり、人気を集めています。
現在はオンラインなどを中心に展開していますが、ですよ。さんは謝罪代行サービスと講習会を一生のライフワークとして続けていきたいと話し、「感染症が終息して、早く皆さんと直接お会いできる環境が整えばと祈っています」と語りました。
取材後記
「あ〜いとぅいまて〜ん」に込められた思いや真摯にギャグに向き合うことの大切さを語ってくれたですよ。さん。
取材の最後には全力の「あ〜いとぅいまて〜ん」を披露してくださったのですが、シリアスな場面であっても場が和むような雰囲気になるのは、ですよ。さんの人柄あってのことであり、これまで大切にしてきたギャグを全力で披露することこそが、人の心を動かすのだと感じられました。またぜひ取材させてくださいYO!
(Kikka)
※価格は記事掲載時点のものとなっています
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