理化学研究所(理研)と富士通が共同開発しているスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、6月22日(ドイツ時間)に発表された世界のスーパーコンピューターの性能ランキング第58回「TOP500リスト」で第1位を獲得しました。日本発のスパコンが1位となるのは2011年以来の「京」以来約9年ぶりのこと。
TOP500は、世界で最も高速なコンピュータシステムの上位500位までを定期的にランク付けして評価するプロジェクト。「富岳」は、「TOP500リスト」のほかにも「HPCG」「HPL-AI」「Graph500」でも1位を獲得し、世界初となる4冠を達成しました。
「富岳」は、事業仕分けで話題を呼んだスーパーコンピューター「京」の後継機。「富岳」は富士山の異名で、「富士山の高さがスーパーコンピュータ『富岳』の性能の高さを表し、また富士山の裾野の広がりがスーパーコンピュータ『富岳』のユーザーの拡がりを意味する」ことから命名されました。
「京」は世界一を意識して開発されたこともあって、実用性に欠けるとの声も少なくなく、後に主要企業が開発から撤退。結果的に広く利用されることはありませんでした。一方、後継機である「富岳」は、最大で「京」の100倍以上の性能を発揮できると言われていますが、消費電力は抑えられているといい、使いやすさにも注目が集まっています。
理研 計算科学研究センター 松岡聡センター長コメント
「富岳」は最初のコンセプトから10年、プロジェクトの公式な開始から6年の歳月を経て、ようやくほぼ完成に至りました。「富岳」はSociety5.0に代表される、国民の関心事の高い種々のアプリケーションで高い性能が出るように開発しましたが、その結果として、全ての主要なスパコンの諸元で突出して世界最高性能である事を示す事ができました。今後「富岳」は、スパコンとしてのそれ自身の利用と共に、開発された「富岳」のITテクノロジが世界をリードする形で広く普及し、新型コロナに代表される多くの困難な社会問題を解決していくでしょう。
富士通 新庄直樹理事コメント
このたびの多様な指標における世界第1位獲得は、理研様や関係者の方々と取り組んできたCo-design(コデザイン)での開発が、「富岳」の性能を最適化したことが評価されたものと考えています。また、新型コロナウイルスよる影響があった状況下で、機器の搬入完了からわずか1カ月ほどで今回の結果を達成できました。理研様をはじめ関係各位の多大なるご協力とご支援に、心より感謝申し上げます。今後、「富岳」が高いアプリケーション実効性能を実証し、Society5.0の実現を担うスーパーコンピューターとして広く活用されることを期待しています。
Arm IPプロダクトグループ(IPG) プレジデント:レネ・ハース氏コメント
スーパーコンピューター「富岳」は、パワフルなマシンに従来用いられてきたコンピューティング技術からの劇的な飛躍をもたらしました。また、強力なエコシステムがもたらす柔軟なコンピューティングソリューションによって実現したイノベーションの証でもあります。この成果は、スマートフォンから世界最速のスーパーコンピューターに至るまで、Armのコンピューティングプラットフォームによる電力効率、性能、そして拡張性が基盤となっていることを示しています。理研と富士通がこれまでの常識を覆し、Armベースのハイパフォーマンス・コンピューティングの可能性を世界に示したことを、Armは心から祝福します。
(Kikka)
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