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100日後に振り返る「100日後に死ぬワニ」 作者・きくちゆうきインタビュー(1/5 ページ)

大ヒットと大炎上を振り返る。

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  漫画『100日後に死ぬワニ』の連載終了から、ちょうど100日が経過しました。ネット中がワニの運命の行方を見守ったあの一体感と、最終回直後に起こった急転直下の大炎上

 大手広告代理店により“仕組まれた”ヒットだったのではないか? との疑念はものすごい勢いで拡散。作者・きくちゆうきさんの「打ち合わせしてきた」という簡素なツイートさえも、「打ち合わせの最寄り駅付近にその広告代理店と似た社名の企業があった」といった強引な理由により、ステルスマーケティングの“証拠”としてバッシングの標的となりました。



 もはや説明不要かもしれませんが、同作はそのタイトルの通り、100日後に死ぬワニを描いた4コマ作品。ワニの穏やかでときにドラマチックな日常と、「死まであと○○日」という不穏なカウントダウンのギャップが話題を呼び、SNSを中心にまたたく間に人気に火がつきました。

 ねとらぼでは『100日後に死ぬワニ』本編の出張連載を2019年12月29日(作中「18日目」)からスタート。作品を読者と共に追いかけてきたことからも、連載終了の折に、一度じっくり作者インタビューがしたいという打診は連載中から行っていました(連載中、結末はねとらぼ側にも知らされていませんでした)。

 当初は「最終回の更新日か、ワニの四十九日にでもインタビューを掲載できれば」といった相談をしていましたが、作者が炎上していたことやCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響で取材は難航。緊急事態宣言の解除を受けて、念願のインタビューが実現しました。

 ネットと日常の在り方がこれまでになく問われている現在、連載を終えたきくちさんは自作をどのように捉えているのでしょうか。インタビューではきくちさんに加えて、『100日後に死ぬワニ』連載初期からきくちさんのマネジメント業務を担当し、書籍化や商品化などの窓口を一手に引き受けたベイシカの代表・中尾恭太さんにもお話を聞きました。

(聞き手:池谷勇人、沓澤真二、福田瑠千代/構成:福田瑠千代)


最終回を振り返って

――あらためて、最終回本当に良かったです。

きくち ありがとうございます。

――『100日後に死ぬワニ』はリアルタイム性が強い作品だったと思います。感想がたくさん寄せられていましたが、連載中に影響は受けましたか?

きくち それは特になかったですね。最終回予想もいっぱいありましたが、どうにかしてこれを超えないといけないなというプレッシャーはありました。最終回は読者をネズミやモグラたちと同じ目線にしたくて。だから最終回だけ、花見に遅れてくるワニと同じように、作品更新を20分遅らせました。

――やはり意味が込められていたんですね。Twitterではあのわずか20分の間に、いろんなデマも流れました。「ワイドショーできくち先生が『最終回はもっと遅い時間や次の日に上げると言っていた』」みたいなものが。

きくち 出演した番組では「今日の19時に更新?」と聞かれても、「今日の夜に……」とか言葉をにごしていました。100日目の内容については僕と中尾さんと担当編集にしか言ってなくて。カウントダウン番組をやっていただいたニコニコ側とかにも一切明かしてませんでした。その日は事務所から更新したんですが、事務所の人たちにも伝えてなかったから、「なんで上がらないんですか!?」って(笑)。当たり前に来ると思っていたもんが当たり前にやって来ない。あそこでキャラとみんなの気持ちをリンクさせるという、予想とは違うところで期待の上を行けたのかなと。

――最終回でワニはほとんど登場しませんよね。ワニが坂の死角にいるのではないか、といった考察も話題になりました。


『100日後に死ぬワニ』100日目より

きくち 交差点のあたりにネズミが居て、みたいなところまで考えて描きました。普通、友達と待ち合わせしていたらみんな相手は来ると思っているじゃないですか。でも僕はそこに来ないパターンもあると思っていて、そういうのを表現できたらいいなと。

 あの場面で来ないワニを待つのか、それとも迎えにいくのか。モグラはずっと待っているけど、ネズミは迎えにいく。ワニは絶対に助からないんだけど、でも「迎えにいく」という選択をすれば、もしかしたら助かるかもしれない。

――キャラクターには身近な人が反映されていたりするのでしょうか。

きくち 特定のモデルがいるわけではなくて、あくまで今まで会ってきた人や経験したことをミックスしている感じですね。

――ねとらぼで出張掲載を始める際、きくち先生のプロフィール欄にご友人が亡くなったエピソードも盛り込んだのですが、その件については入れたくないときくち先生から要望をいただいたのが印象に残っています。


出張掲載で実際に使用したプロフィール

作者:きくちゆうき

100日後に死ぬワニ

1986年生まれ。なんだかんだいろいろあって27歳でイラストレーターとして独立。連載:「SUPERどうぶつーズ」(LEED Cafe)、「どうぶつーズの漫画」(幻冬舎plus)、「100日後に死ぬワニ」

Twitter:@yuukikikuchi/Instagram:@yuukikikuchi



きくち 連載が終わったあとに一部から「友達の死を利用して金もうけしている」と言われたんです。いや、そんなことじゃないんだけど……と。自分の経験の中で伝えたいことをワニを通してやったのに、そう思われるのが本当にいやで。終了後は精神的にかなり消耗しました。

――そうした反応を見越して、当初ご友人の件はあまり前面に出していなかったわけですね。10年以上前のショッキングな出来事に対して、100日間毎日向き合い続けるのは創作行為としてすさまじいものだと感じました。

きくち 僕は、死ぬために生きていると思っているんです。死ぬときに良かったなって思えるように。死ぬために、今を充実させている。

――そう考えるようになったのはいつからですか。

きくち いろんな人を見たり、経験を経てです。「この人やりたいことがありそうなのに何もしてないな」とか思ったり。死ぬときに「自分の人生はなんだったんだろう」って思う瞬間があるんじゃないかと思うんです。満足して、なるべく後悔なく死ぬために、「やりたいことをやっちゃえば?」と。もちろん常識の範囲内で、ですが。

――逆に「この人みたいに生きたい」という人はいますか?

きくち タレントの所ジョージさんは好きなことをされてる感じが伝わってきて、憧れますね。

――ワニくんも「なかなか告れない」みたいなこともありましたけど、基本はやりたいことをやっているキャラクターでした。

きくち 読者が「早く告れよ!」とか思うじゃないですか。その言葉はいつか死んじゃう自分に返ってくる。迷ってるんだったらやっちゃいなよって。そういうことを感じてもらいたかったからワニをああいう性格にしたところはあります。 僕らもだいたい100年後に死ぬし。結局死ぬから、終わりがあるから、やりたいことをやったほうがいいじゃん、という。


きくちゆうきさん

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