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「メシがうまそうな映画」で夏バテを吹っ飛ばせ! 刑務所メシからヤバイ肉まで印象的な食事シーン5選

そうめんに飽きたあなたへ。

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 「パラサイト 半地下の家族」をご覧になり、牛肉入りのジャージャー麺を食べたくなった方は多いのではないでしょうか。物語上、重要な役割を果たす料理ではありますが、登場したのは実質1分程度。それにもかかわらず、つい心を奪われてしまう魅力がありました。

 これはもう簡単な話ですよ。みんなメシが好きなんです。

 映画について印象的な部分というのはそれぞれあります。面白かった、面白くなかった、は別にして、役者の演技だとか、ロケ地の風景だとか、使われる音楽だとか、見る者の印象に残る要素というのは数あるわけですが、その中でもやはり食事、料理というのは印象に残りやすい部分のひとつです。

 というわけで今回は、印象的な料理の登場する映画を紹介したいと思います。ジブリのような有名どころはスルーして、あまり知られていなさそうなタイトルをチョイスしました。夏バテで食欲が失せがちなこれからの時期、そうめんに飽きたら映画を見て胃袋を広げましょう。それではいきます。


「ディナーラッシュ」



 2000年アメリカ製の群像ドラマです。大人気イタリアンレストランを舞台に、経営者、スタッフ、シェフ、客など、珠玉のイタリア料理と共に、彼らの織りなすドラマが味わい深い逸品。

 ニューヨークに店を構える人気イタリアンレストランの経営者のひとり、エンリコがギャングに射殺される事件が発生する。ギャンブル狂で多額の借金があった、レストランの従業員ダンカンが全ての元凶であったが、当のダンカンは今夜も仕事そっちのけでギャンブルに夢中。レストランのオーナーでありエンリコの良きパートナーであったルイスは、料理長を務める息子のウードとの確執もあり、今夜も頭を悩ませていた。そんな夜、エンリコを射殺したギャング2人組が来店し、経営権をこちらに渡すようルイスに持ちかけるが……。

 登場人物が多い! 群像劇ということもあって、あらすじが長くなってしまいました。ニューヨークを舞台に高級レストランでの一夜を描いた群像サスペンスというだけで、映画好きであれば思わず手に取ってしまいたくなる魅力的な作品。大勢の客でごった返すホールと、シェフいわく「戦争状態」な狭い厨房を所狭しと動き回るカメラが、個性豊かな登場人物それぞれのドラマを絶え間なく描写していく様は、スタイリッシュのようでいて、確かな演出の妙を感じさせます。要は非常に優れた映画ということです。

 で、期待される料理の描写ですが……実はそんなに多くありません。いや、常に料理に囲まれたシーンばかりなのですが、料理自体をあまりアップで写してくれないんですよね。作中、見た目だけにこだわった皿に対して「こんなの料理じゃない」と酷評を下す場面があるのですが、そうした精神がカメラワークにも表れているのかもしれません。

 とはいえ、肉を焼いているシーンなんかはやっぱり「うまそ〜」と思ってしまうこと間違いなし。かと思えば、揚げたパスタを3匹のロブスターで囲んだ料理なんかも登場して「これはうまそうなのか?」と感じてしまう側面も。僕は“庶民”という言葉すら当てはまらない爆裂貧乏なので理解できないだけかもしれませんが……。

 膨大な創作料理、高級食材が登場する本作。先の見えない群像劇を楽しみながら、お気に入りの料理を探してみるのも楽しいかもしれません。


「恋人たちの食卓」



 名匠アン・リー監督による、1994年台湾製のヒューマンドラマ。「推手」「ウエディング・バンケット」に続く、“父親三部作”の3作目であり、ユーモラスなロマンスと意外なストーリーが楽しいホームドラマの傑作。

 元一流料理人だが、現在は自分の舌に自信を無くしている初老の父親と、その娘である3姉妹が同居する家庭。自らが亡くなった母親の代わりになると決めた長女、父親とソリが合わずすれ違ってばかりの次女、天真爛漫(らんまん)で心優しく、少し幼さを残す三女。それぞれの悩みや葛藤、コンプレックスが入れ混じり、4人の家庭は徐々にほころびを見せ始め……。

 登場人物たちの仕事、恋愛、友情、さまざまな問題を通して家族という存在を浮き彫りにしていく、非常に見応えのある作品。僕はアジア製のドラマが少し苦手で、あまり楽しめないことが多いのですが、こちらは全編コメディー仕立てで、構成も至ってシンプル。ストーリーテリングに一切の無駄がなく、重厚ながらとても観やすい内容となっています。この辺りは名匠アン・リーの手腕によるところでしょう。

 何よりおいしそうな料理の数々といったら! オープニング、父親が見事な手さばきでさまざまな中華料理をこしらえていくシークエンスは、思わず巻き戻してしまうほど見事なもの。まさに料理とは芸術なのだと感じさせる美しい品の数々なのです。

 オープニングだけでなく、全編あらゆる場面で登場する食事の場面に思わず垂涎してしまうこと間違いなしな作品。映画としてのクオリティーも随一なので、中華料理がお好きな方はぜひご鑑賞をオススメします。


「刑務所の中」



 漫画家・花輪和一による同名エッセイ漫画を映画化した、2003年日本製のコメディー。ひとりの男の視点を通して、刑務所の中での暮らしをユーモラスに描いた異色の作品。

 ミリタリーマニアが高じて実銃を扱ってしまい、逮捕された主人公・ハナワ。彼には懲役刑が科せられ、同房の4人を共にする4年間の刑務所生活が始まるが……。

 基本的に、ストーリーらしいストーリーはありません。刑務所での暮らしや、刑務所内の個性豊かな囚人たちの生態を、気の弱い主人公が自身のモノローグで紹介していくという作りです。そんな感じなので、ほとんどダイジェストに近いような形で話が進んでいく、ちょっと変わった映画になっています。

 この作品に登場する刑務所では、私たちの想像する過酷な環境とは程遠い、至って平和な日常が送られます。「ここなら入ってみてもいいかも」とは思わないまでも、作中のセリフでもあるように「罪を犯したのに、こんなぜいたくな暮らしをしていいのだろうか」と感じてしまうほど、ほのぼのとした時間がゆっくりと流れるんですね。登場する囚人たちも、とても犯罪者とは思えない気のいい奴ら。そんな様子をのほほんと楽しむ、言ってしまえば“丁寧な暮らし”の系譜に連なる作品かもしれません。

 そんな囚人たちの一番の楽しみは、日々の食事。とても“くさいメシ”とは思えないおいしそう料理の数々が登場し、胃袋をくすぐってきます。何より、登場人物が「おいしそう〜〜〜」とか「うまい……」とか必ず絶賛コメントを残していくんですね。どんなに彩られた写真より、やっぱり人がうまそうに食ってるメシが一番いいんですよ

 鑑賞しながら、思わず「一口ちょうだい!」と頼みたくなってしまうような普遍的な魅力にあふれた一作。アルフォートとコーラを楽しみながら「キッズリターン」を鑑賞する名シーンの素晴らしさといったらもう。豪華キャストに彩られた、まさに食欲増進映画。犯罪は絶対にダメですが、彼らの暮らしから学べることは多いかもしれません。

「エイプリルの七面鳥」



 2003年、アメリカ製のヒューマンドラマです。非常にミニマルな作りの、優れた小品。個人的にも大好きな映画のひとつです。

 母親とけんか別れし、ニューヨークのスラム街で恋人と同棲しているエイプリル。感謝祭を控えたある日、実家の母親がガンであることを知ったエイプリルは、家族を自宅に招き、一緒に感謝祭を祝おうと企画する。そのために七面鳥を焼こうとするエイプリルだったが、料理などしたこともない彼女にはさまざまなトラブルが降りかかり……。

 アメリカ映画を見ていると、よく「感謝祭」というイベントが登場しますよね。アメリカとカナダで祝われる日だそうで、アメリカでは11月の第4木曜日、カナダでは10月の第2月曜日だそうです。そして、感謝祭と言えば七面鳥の丸焼き。僕としてはチキンライスの歌詞くらいでしかなじみがありませんが、アメリカ映画ではよく目にする料理です。日本だとクリスマスのイメージが強いかもしれませんね。

 本作は、そんな七面鳥を頑張って焼こうとする少女・エイプリルを主人公に、さまざまな悲喜劇が展開していくコメディードラマ。他の映画ではあんなにうまそうな七面鳥の丸焼きですが、おいしく焼くにはいろいろな工程や工夫を経なければいけないという事を、不器用なエイプリルの視点から学ぶことができます。これまで紹介してきた3作品とは違い、決して上手とはいえないエイプリルの料理ですが、“作り手の愛情”が丁寧に描写されるおかげでおいしそうに見えるんですよね。そんな当たり前のことがよく分かる作品です。

 家族を出迎えるために一生懸命なエイプリルの姿や、彼女をないがしろにしてしまった母親の苦悩、そしてその母親を支える個性豊かな家族たちと、とても小さなお話でありながら濃密なドラマの詰まった傑作。これで泣かない奴いるのかよと思うほど素晴らしいラストシーンも相まって、個人的にはオールタイムベスト級の作品です。不器用なエイプリルが焼いた七面鳥は一体どんなものなのか。ぜひご鑑賞ください。


「フリーキッチン」



 漫画家・福満しげゆきの原作『娘味』を長編映画化した、2013年の日本映画。低予算ながら、独特の空気感を醸し出しているインディーズの佳作。

 子煩悩な母親と2人で暮らす主人公・ミツオ。母親が毎晩作ってくれる肉料理には、ある秘密があった……。

 料理と言えば人肉料理について触れないわけにはいかないでしょう。カニバリズム映画というものは世界各国で作られていますが、今回はとっつきやすい日本の作品を紹介したいと思います。

 “最初の肉は、父さんと、その愛人でした…。”という語りから始まる本作は、毎晩ディナーで人肉料理をふるまう母親と、それの狂気に当てられながら日々を鬱屈と過ごす息子の関係性を、奇妙なユーモアと共に描いています。それに加え、母親が獲物を調達していくホラー描写が差し込まれていくという作り。そんな感じなので、正直お話面での面白さは薄め。どちらかというとダイジェストに近いような内容です。

 注目はもちろん料理。母親は毎晩、人肉料理を作って息子にふるうわけですが、これがめちゃくちゃうまそうなんですね。ステーキや唐揚げなど、作中には3〜4種ほどの料理しか登場しないのですが、そのどれもが思わず食べてみたくなるような普遍的な魅力を放っているのです。

 ていうか、よくよく考えたら、実際の撮影では当然人肉なんか使っていないんだから、見た目がうまそうなのは当然なんだよな。普通に牛や鶏を使っているわけですからね。しまった。書きながら当たり前のことに気が付いてしまいましたが、要はそんな錯覚を起こしてしまうくらいの狂気をはらんだ映画ということです。食卓に人肉料理が並ぶという面白さで紹介させていただきました。




 いかがでしたでしょうか。うまそうなメシを紹介するだけの、実に簡単な話でしたね。これから夏本番。早起きして、部屋の窓を開けて、涼しい風を浴びながら、今回紹介した映画を鑑賞すれば、きっと夏バテも吹っ飛ぶはずです。

城戸

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