初代ファミコン向けに開発中の、とある自作レースゲームがTwitterで「意味わからない」「すげぇ」と注目されています。ファミコンなのに、スーパーファミコンのようにコースがぐりぐりと回転したり、タイトルロゴが縮小しながら現れたり……さらには女の子が滑らかに動くアニメシーンもあり、本来はできないはずの演出がてんこ盛り。一体どうやって実現しているのか、作者の小さな音(@ls_create)さんに聞きました。
以前からアニメやゲームを自主制作していたという小さな音さん。今回話題になっているファミコン用ゲーム「エフシータ」は、音楽を友人に依頼した以外は1人で開発を進めているといいます。アニメーションが入り、実際にレースができる今の段階まで3カ月弱で仕上げ、現在、完成度は70%とのこと。
もともとは自主制作アニメ「うたかたシノプシス;」のアドベンチャーゲームをファミコン向けに作っており、こちらは既に9割方完成。しかしスケジュールの都合上、曲の納品だけ少し先になることが判明し、そこで「少し路線の違うテクニカル路線のゲームを作ろう」と思ったのが「エフシータ」開発のきっかけだったそうです。ゲーム制作の息抜き(?)に別のゲームを作り始める……どこまで好きなんだ。
ところで、ファミコンでは難しい(というかほぼ不可能)なはずの「回転・縮小」をどうやって実現しているのでしょうかか? 小さな音さんに聞いたところ、ポイントは「カンペ」にあるといいます。「画像を回転をさせるには三角関数が必要ですが、ファミコンは足し算と引き算しかできません。そこで画像を256段階に回転させる三角関数の計算結果を『カンペ』として持たせています」。
つまり、その場で計算する力がないので、計算の結果だけを用意しておいて、それを呼び出しているのだそうです。ただ「ファミコンだとその『カンペ』を探す処理すら厳しかったりします」と小さな音さん。そのため、地道にムダな処理を削ぎ落とすなどして、ようやく現在の描画速度を実現しているとのことでした。
また、女の子の滑らかなアニメーションについては「技術的には大したことはしていません」と小さな音さん。説明によると、このドット絵アニメは全てBGパターン(背景用タイル)の組み合わせで描かれているとのこと。
ファミコンはもともと「4色使える8×8ドットのBGパターン」を256個持つことができます。小さな音さんはこのタイルをさらに4分割して「2×2の粗いドット」として利用。256個のBGパターンを全て使い、四隅×4色の組み合わせをあらかじめ用意しておくことで、この「BGパターンを使ったドット絵」を実現しているそうです。
ただ、これは単純にデータ容量を食ってしまうため、「多分昔だと、こんなのに容量を使うなと怒られたと思います」とのこと。
また、回転やアニメーション以外で、特にゲーム関係者の間で注目を集めていたのが、動画50秒ごろから見られる「半透明っぽい処理」。画面が暗くなり、自分の車の前だけライトで道が明るくなっていますが、これも本来はファミコンでは難しい処理の1つです。小さな音さんによると、「これは一般向けにはなかなか説明が難しい」そうです。
小さな音さんから聞いた内容をざっくりまとめると、最終的にやっていることは意外とシンプルで、単にライトが当たっている部分だけパレット(割り当てられた色)の色を変え、半透明っぽく見せているのだそう。ただ、これは「エフシータ」がコース部分を前述した「BGパターン」の書き換えで描画しているからできることで、普通のファミコンのゲームのスクロール方法では「背景の特定の場所だけパレットを変える」というのはまず不可能。主にゲーム関係者が驚いていたのもそのためで、実は同作の仕様を逆手にとった、かなりテクニカルな演出だったのでした。
小さな音さんによると、この「エフシータ」は年内に完成させ、ファミコン実機で本当に動くカセットとして販売する予定だとか。
「見た目が目立つゲームですが、内容も多少は考えていまして、遊びやすいレースゲームを目指しています。ちょっと動いているところを見てやろうか、と思って触ったら、思わずやりこんでしまった……みたいなのになればなぁと思っています」とのこと。遊んでみたい!
※価格は記事掲載時点のものとなっています
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NESにカセットを差し込むこともできます。