神社や寺院でお参りする前には、境内にある手水舎で手や口を清めます。ところが最近は、新型コロナウイルスの感染を防ぐため、柄杓の共用だけでなく、手水そのものの使用を控える寺社が多くなってきました。そこで、全国の寺社では参拝者に少しでも和んでもらおうと、手水舎や手水鉢を色とりどりの花で飾る「花手水」が広がっています。
参拝の前に手と口をすすぐことを「手水(ちょうず)を使う」という
みなさんは神社や寺院にお参りに行くとき、参拝をする前に、入り口付近にある手水舎で手を洗ったり、口をすすいだりしますか?
手水舎には、常に水が流れている水盤(鉢)があって、柄杓が伏せて置いてあります。この柄杓を使って、水で手や口を清めること、または、この水そのものを手水(ちょうず または てみず)といい、手水を使って清めることは「手水を使う」ともいいます。
手水には作法があります。作法は手水舎の中に書いてある場合もありますが、ここでご紹介しましょう。
- 柄杓を右手に持ち、水をくんで左手を洗います。
- 柄杓を左手に持ちかえ、右手を洗います。
- 柄杓を右手に持ちかえ、左手に水を受けて口をすすぎます。このとき、柄杓に直接口をつけたり、水を飲んではいけません。
- もう一度左手を洗います。
- 柄杓を縦にして残った水で柄を洗います。
(北野天満宮:お参りの前に「手水の作法」より引用)
もともとは京都の楊谷寺が手水鉢などに花を添えたのがはじまり
きちんとした作法がある手水ですが、伏せてある柄杓を多くの人が共用するため、最近は使用が禁止されているところが多くなっています。そのかわりに、花で手水舎を飾る「花手水」が全国で広がっています。
現在、全国的に広がっている花手水は、コロナ禍によって新しく始まった取り組みではなく、もともと京都の柳谷観音 立願山楊谷寺で行われていました。柳谷観音は眼の観音様として平安時代から眼病に悩む人たちに信仰されています。また、楊谷寺はあじさいや紅葉の名所でもあり、数年前から手水鉢などに定期的に、花やもみじを添えるようになりました。
花手水という用語はもともとは、野外の神事で水がないときに、手水のかわりに葉や花で手をこすって手を清めることを指していましたが、楊谷寺で自然に花を浮かべた手水鉢を指すようになって、その美しさがSNSなどで話題になり、全国に広まりました。
今では花手水というと、花を浮かべた手水鉢を指すことがすっかり定着し、SNS映えする写真が撮れるとあって、全国的に話題になっています。
参考:柳谷観音 立願山楊谷寺:ギャラリー「四季の花手水」
全国に広がる花手水。コロナ禍で廃棄された花の利用も
新型コロナウイルスの感染を防ぐために、手水という作法が禁止されている寺社が多い中、そのかわりに楊谷寺のように手水鉢を花で飾ろうという動きが、大宰府天満宮、東福寺、北野天満宮などをはじめ、全国の寺社で広がっています。
今年の3〜4月は人が集まる式典や会合、パーティーなどを開くことができなかったため、たくさんの花が廃棄されましたが、大分の霊山寺ではこれらの花を花手水で色鮮やかに再生させ、話題になりました。コロナ禍で気持ちが沈みがちな生活が続いていましたが、廃棄された花を再生して花手水にするという取り組みは、人々の心を和ませてくれました。
参考:北海道新聞電子版:札幌、近郊の神社9社 23日から花手水で参拝者お出迎え/飛来山 霊山寺:ロスフラワーって知っていますか?
全国的に広がりを見せている花手水。あなたの住む街の寺社でも手水鉢が花で色とりどりに飾られているかもしれませんね。
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