【装丁にこだわりまくった同人誌】メフィスト評論賞受賞者が“古き良き文芸誌メフィスト”を二次創作した『幻影復興 -メフィスト・リブート-』
掲載作品ではなく、雑誌そのものを二次創作。
同人誌制作者さんに作品へのこだわり、思い入れなどを伺う読者応募企画「装丁にこだわりまくった同人誌、教えてください」。今回は「講談社の文芸誌『メフィスト』自体の二次創作を行い、作家・清涼院流水さんへのインタビューまで掲載した同人誌」のお話を伺いました。
『幻影復興 -メフィスト・リブート-』
「騙り部」というサークルを主催している坂嶋と言います。2019年、メフィスト誌上で募集、発表されたメフィスト評論賞で法月賞を受賞しました。
その3年前にあたる2016年、同誌が当初の装丁からリニューアルしたり、電子書籍化により店頭から消えてしまったりという流れのなかで、古き良きメフィストをよみがえらせたいとの気持ちから、『幻影復興 -メフィスト・リブート-』という同人誌を作りました。
かつてメフィストや講談社ノベルスなどの装丁をしていた辰巳四郎氏のデザインを継承し、金色のオブジェを中心に、不安げな写真を合成したバック、という表紙にしました。本家同様、本文は雑誌の安っぽい紙を選び、目次などのデザインも本家を意識しています。
―― そのような同人誌をつくることになったきっかけは?
僕は中二のとき(1997)、清涼院流水『ジョーカー』を手にして講談社ノベルスを知り、そこからメフィスト賞作家→メフィストという流れで読み進めていきました。メフィスト賞受賞作はほぼ全て読みましたし、メフィスト賞自体のファンサイトを運営していたこともあります。
たしか2004年くらいから「メフィストのバックナンバーをぜんぶ集められたら、まとめた同人誌を作ってみたい」と思うようになりました(2002年から文フリが始まったおかげで同人誌が身近になった記憶があります)。ただ、古い雑誌を集めるのにはどうしても時間がかかり、最後の1冊(最初の号)が手に入ったのは2014年でした。古本屋をされている第44回メフィスト賞受賞者・丸山天寿さんから購入しました。
コンプ直後は「そのうちメフィストの同人誌を作っても良いな」くらいの気分でした。実現には、清涼院流水さんが関わってきます。
流水さんとの縁はけっこう古く、1999年にアンケートはがきを送ったら年賀状が届いたことから始まり、2000年度は2カ月に一度、手紙のやりとりをしていました。初めてお会いしたのは僕が修学旅行で京都に行った2000年12月。
次にお会いしたのは2006年。筑波大学ミステリー研究会設立10周年記念として「デビュー10周年の作家にインタビューをしよう」という話になり、森博嗣さんや貴志祐介さん、そして清涼院流水さんにインタビューをしました。
それがあったので、2016年には流水さんのデビュー20周年をどうにかして盛り上げたいと思ったのですが、大学は出たのでミス研としてはできない→それなら新しくサークルを立ち上げ、メフィストに関する同人誌を作ろう、と思い立ったわけです。「清涼院流水デビュー20周年特集」としてインタビュー記事のほか、昔の出来事を扱った4コマ漫画などを掲載しました。
ただ、その頃になると僕自身はメフィストの方向性に違和感を覚えていて、90年代後半から2000年代に感じていたわくわく感を同人誌として表現したいと思いました。
―― その時代にあった、わくわく感とは?
幼いときの方が読む小説を新鮮に感じられた、というのもあるかもしれませんが、振り返ってみると、収録内容の傾向が変わってきたのが理由かな、と思います。
まず4コママンガや評論が消えていきました。また、ほぼ毎号巻頭に西尾維新の長編が載るようになり、とんがったミステリ、伝奇や歴史物は消えていきました。その流れの中で“どんな作品が載るか分からない”という感覚はなくなったように思います。
それで、装丁からもあの感覚を思い出してほしいということで、『幻影復興 -メフィスト・リブート-』では当時のデザインを真似ることにした―― というのが装丁を似せた経緯でしょうか。
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